儚き者達
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雲瀬家に着いた時、着せ替え人形状態だった津奈はグッタリしていた。
客間の中でも取り分け大きい部屋に通されると恭矢と恭一、静香が出迎えた。
恭矢は津奈の振袖姿に見惚れていたが津奈の体調が悪いのかと慌てて席に座らせ、グッタリしている津奈を見て恭一と静香は『静香も津奈さんのような状態で来たな。』『私もこんな感じでこの家に来たわ。きっと津奈さんも色々着せられたりしたのね。』と微笑ましく見ていた。
全員が席に着き自己紹介等をしていたが家三は内心苦虫を噛んだような気分だった。それに気付いた恭矢は『どうやら津奈の父親に嫌われたみたいだね。』と誰にも分からないように笑う。
食事をした後、恭一と静香、弥生と家三は退室した。
「具合が悪いの?」
心配そうに聞く恭矢に津奈は首を横に振り苦笑いしながら話す。
「お母様と渚ちゃん達に何着も着せられたりしてちょっと疲れただけです。」
「そう。大変だったね。」
恭矢は女は大変だなと感じた。実際今日の静香もあれこれと着物や小物を選んでいた。それは恭矢と恭一が呆れるくらいに。
恭矢は最初どこかに行こうかと考えていたが振袖姿の津奈を独占したい気持ちが芽生えて止めた。ドジ属性の奈が慣れない振袖で転ぶかもしれないとも思ったが。
津奈は助けて貰ってから何度か会って最初は強引だと思っていたが手を引く恭矢は然り気無く気遣っていることに気付き優しい人だと感じていた。庭を案内する時も足下を気を付けてと言ったりとエスコートをしてくれていた。
恭矢は津奈の芯の強さに興味を持ったが会うたびに色んな表情を見せた。そして心地好い空間を自然に作れる所に惚れていた。
津奈と恭矢は楽しそうに話していて穏やかな時間が過ぎていく。
こっそり覗いていた恭一と静香、弥生は『これなら大丈夫。早く婚約させないと。』と考えていた。
これを逃したら恭矢は一人身で跡取りも作ることが出来ないし、津奈は家三によって勝栄闌丸と結婚させられてしまう。
双方はもうこれで婚約したも同然と思い結納の日取りの話し合いを始める。家三にしたら溜まったものではない。話し合いに参加するふりをして過ごしていた。
話に花を咲かせていた津奈と恭矢だが話が途切れると恭矢が真剣な顔をした。
「君が好きなんだ。津奈、僕と婚約して欲しい。」
「はい。私も雲瀬さんが好きです。」
津奈は頬を染めた。
「知り合いには婚約したって言ってね。」
恭矢の言葉に津奈は不思議そうに首をコテンと傾ける。
「婚約しているのを知らないで津奈に縁談を申込む家があるかもしれないからね。」
最もらしいことを言っているが他の家に牽制をしたい恭矢。
「分かりました。友人や知り合いに伝えますね。」
津奈は恭矢の思惑に気付かないで応え、恭矢はこれでこの子は僕の伴侶と満足した。