儚き者達
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安倍川家の居間に荒々しく入る家三が弥生に問い詰める。
「弥生!一体どういうことだ!」
「何のことですか?」
怒鳴る家三に立ち上がり冷静に見据え答える弥生。
「津奈の縁談のことだ!何故俺に相談もなく勝手に決めたんだ!」
「相手の雲瀬恭矢は津奈の好いた人です。その雲瀬家からの縁談ですよ。娘が幸せになれるなら親としてこの話は受けるものだと思いませんか?」
「しかし雲瀬家は陰陽道に関して全く関係ない!そんな所に嫁がせたら子供は陰陽師の資質を持って産まれる可能性が低くなるだろう!」
陰陽道の資質が無ければ安倍川家は継ぐことは出来ない。最悪安倍川は絶える。
家三は娘が惚れた相手とはいえ納得出来ない話だ。
それに家三は津奈の縁談を取り付けていた。
「俺の方で取り付けた縁談がある!雲瀬家には謝罪して白紙にする!」
「どこの家と取り付けたのです?」
「勝栄 利庵(かつえ りあん)殿の息子の闌丸(らんまる)殿だ!」
勝栄利庵と息子の闌丸の名を聞いて弥生はあからさまに嫌な顔をする。
勝栄利庵、闌丸は陰陽師の資質は高いが利益の為ならどんな汚い手を使っても構わないと陰陽師の力を悪用する一族。そんな所に津奈が嫁げば何をされるか分からない。
「家三さん。勝栄家がどんな汚い手を使っても利益を得ようとする一族です!そんな所に娘を嫁がせようなんて父親としてどうなんですか!」
家三は言葉を詰まらせる。弥生の言っていることは正しいからだ。しかし家三も黙ってはいない。
「だが安倍川が生き残るのに他に手は無い!」
弥生と家三が言い争いをしていると「静かにしなさい!」と日野江が割って入る。
「母上・・・。」
「お義母様・・・。」
「二人共落ち着きなさい。」
日野江は使用人にお茶を用意させ、弥生と家三を座らせた。
日野江は使用人が用意したお茶を一口飲んで口を開く。
「家三、雲瀬家からの縁談を了承したのは私だ。」
「母上!?何故雲瀬家に津奈を嫁がせるのです!?」
有り得ないと家三は日野江に問う。日野江は長いため息を吐く。
「簡単なことだ。安倍川の為に違う血筋を入れなければ潰えてしまうからだ。現に安倍川にも血の弊害が出始めておる。」
「勝栄家の血筋は問題ないはずです!」
「・・・。家三、本気で言っているのか?」
日野江は目を細め家三を見る。その目の奥に静かな怒りが見え家三は何故そんな目を向けられるのか分からず、狼狽えた。
「この愚か者がっ!!」
日野江は何も理解していない家三に一喝した。