儚き者達
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「会わないから帰らせて。」
使用人は恭矢の不機嫌な顔に真っ青になって杏子が待っている応接室に足早に向かう。
使用人の後ろ姿を見て恭矢は溜め息を吐く。
『親同士が勝手に決めただけの婚約者に興味は無い。』
恭矢の杏子に対する認識は幼い頃から知っている佐々川 良平(りょうへい)の妹。いかにも弱い生き物。それだけだ。それに杏子には時々嫌悪感を感じ、一緒にいるのが苦痛だった。
応接室に通された杏子は窓から庭が見える。
「恭矢さん。」
今日は会えると杏子は心を弾ませていると使用人が入ってきた。
「杏子様、申し訳ございません。恭矢様は只今外出中です。」
使用人の言葉に杏子は先程とは真逆の悲しそうな顔をする。杏子は庭にいる恭矢を見ているのだから。
『やっぱり、私は気に入られてないのね。でも御側に居られるだけで良い。』
杏子は使用人にまた来ますと告げ応接室を後にした。
屋敷を出ると庭の方から会話をする声がする。一人は恭矢の声、もう一人は少女の声。
杏子は胸騒ぎがして庭の方に足を向ける。
杏子の目に写ったのは楽しそうに話す恭矢と津奈の後ろ姿。
『あの子は一体誰!?それに親しげなのは?』
恭矢が津奈の方を向いた時の表情を見て杏子は目を見開く。
『恭矢さんが笑顔で接してる・・・。』
杏子が知っている恭矢の表情に優しげな笑顔は記憶に無い。
津奈が恭矢の方を見た時に杏子は少女が誰なのかを知った。
『安倍川 津奈さん?!』
去年、女子学校で同じ組だったが杏子は津奈とはさほど親しくはなかった。
杏子自身、陰陽師に畏れのような物を感じて関わらないようにしていたし、津奈も杏子の様な人間もいることを分かっていたので杏子には関わらないでいた。
『何故、安倍川さんが?』
まさかと思ったがその考えを杏子は否定した。
『雲瀬家は代々軍の家系だし安倍川家は陰陽師の家系だもの。交際していたとしてもいずれは家の為に別れるはず。もしかしたら安倍川さんのお母様が薬師だから薬を頼まれて渡しに来ただけかも。』
杏子はそう思うも恭矢と津奈が楽しげにしているのを見るのは辛いとその場を去った。
安倍川家の使用人が買い物していると見知った少女を見つけたがその様子と持っている物に首を傾げた。
今にも泣きそうな顔で持っている物は大きな鞄。旅行にでも行くのだろうか?しかし明日からは新学期だと言うのに旅行などするのだろうか?気になった使用人は少女の元へ駆け寄った。