儚き者達
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この地に住む人間なら津奈と両親、親戚が陰陽師だと誰もが知っているから津奈は隠すことなく頷く。
「でも津奈は陰陽師に見えないよ。ドジだし。」
少し意地悪そうな顔をして言う恭矢に津奈は頬を膨らませて怒る。
「酷いです!ちゃんと修行もしたし式神も使えます!」
そう言って津奈は鞄から人の形をした和紙を出しその和紙に文字を書く。書き終わると和紙は津奈の屋敷に向かって飛んでいった。
「あれが式神?」
「そうです!」
初めて見る式神に驚く恭矢にどうだと言わんばかりに胸を張る津奈。
「あの紙に書いてたのは?」
「帰りが遅くなりますって母に伝える為に。」
今日は弥生が煎じた薬を届けたら修行をする予定だったと言う津奈に恭矢は良い口実が出来たと津奈に話す。
「津奈のご母堂は薬師なの?」
「はい。母の祖父が薬師だったので祖父に薬の知識を教わり薬師になったそうです。」
「陰陽師で薬師か。凄いじゃない。君のご母堂に頓服薬を頼みたい。母は体が弱くてよく発熱を出すから。」
「頓服薬ですね。いつ渡せば良いですか?」
「出来たら明日。」
「分かりました。では明日の午後一時にここで良いですか?」
「構わないよ。」
二人はそう言って別れたが津奈も恭矢も明日を待ち焦がれた。
翌日ーー
「それでは行ってきます。」
屋敷を出る津奈を見て弥生は目を張る。
津奈はいつも通り着物と袴にブーツを着用しているが着物はいつもより上質な生地でリボンは白地だが金糸で刺繍が施されている。
『安倍川も時代の流れと共に潰えるでしょう。他の陰陽師は力が衰え次々と廃業し、陰陽師が減っているのに力に拘る陰陽師は陰陽師同士の結婚をし結果、血が濃くなって奇形の子供が増えている。ならば津奈は陰陽師とは関係の無い家に嫁がせた方が幸せかも知れないわ。それに好いた相手がいるようだし。』
普段あまり着ない色の着物やリボンが語っているのを弥生は理解していた。
「問題は家三(いえみつ)さんね。あの人は安倍川の長男として動いて有力な陰陽師の家に津奈を嫁がせようとしてるみたいだし。」
家三は娘の津奈の嫁ぎ先を探すのに奔走していた。安倍川が栄える為に。