儚き者達
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「あ、そろそろ帰らなきゃ。お茶とお菓子ありがとうございました。」
津奈は豪に頭を下げて勇斗と武司に「またね。」と言い山野屋を出た。
「津奈さん御屋敷までお送りしますって・・・武司邪魔すんじゃねぇ!」
「勇斗ばかり狡いのな~。俺だって津奈と一緒にいたいのな!」
勇斗の腕を思いっきり掴む武司にそれに腹を立てる勇斗。
お互い津奈を想う恋敵。いつも津奈がいない所で火花をバチバチとならしていた。
帰り道、『あんな小さな子に』『あの子もわざとじゃないのにね』『助けてあげたいけど』と人々は遠巻きにあるものを見ていた。
男達は軍服を着ているから軍人か何かなのだろう。その二人の内1人のズボンが汚れている。その近くに食べかけのあんパンが転がっている。
「ごめんなさい、ごめんなさい、わざとじゃないです。ごめんなさい。」
「謝ってこの汚れが取れるのか!」
「躾のなっていないガキだ!」
津奈は咄嗟に飛び込み幼い少女を抱きしめる。
「この子はわざとじゃないと言っています。小さい子のしたことです。許してあげて下さい。」
真っ直ぐ目線を向ける津奈に「何だお前は!」と 男達は怒鳴り、遠巻きに見ていた人達は津奈に暴力を振るうんじゃないかと真っ青になる。
「何をしている!噛み殺す!」
男達の後方から怒鳴り声がした。
「雲瀬 恭矢(くもせ きょうや)だ!」
「に、逃げろっ!」
怒鳴り声を出した人物に顔色を真っ白にし転がるように逃げ出す男達を見て安堵する津奈と少女は恭矢に礼を言う。
「あの、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
津奈は少女に「気を付けて帰るのよ。」と頭を撫で、少女は「お姉さんもありがとう。」と家に向かって行った。
『この子、見た目は弱そうだけど芯は強そうだね。』
恭矢は津奈を面白そうに見詰める。
「ねえ。君の名前は?」
「え・・・安倍川 (あべかわ)津奈です。」
「ふぅん。津奈またね。」
恭矢はそう言い残し立ち去り、津奈は『またねって言っていたけど会う機会あるのかな?』と恭矢の後ろ姿を見詰めていた。頬を朱に染めて。