FOG&MIST
一頻り泣いてたセーラがクロームを見て微笑んだ。綺麗な笑顔だが、見下すような目をしていた。
セーラはクロームの前に来て、手を差し出す。
「驚かせちゃってゴメンね~。セーラ・バードンて言いま~す。よろしくね~♪」
クロームはセーラの目に怯えながら、
「クローム髑髏・・・。よろしく・・・。」と握手をした時。
ギリッ
セーラはクロームの手を強く握り締めた。
『痛いっ』
クロームはセーラを見た。セーラはクロームを見下していた。
ガラッ
教室のドアが開き、獄寺と山本が入って来た。
クロームは二人を見て安心した。
『嵐の人と雨の人はボスに酷いことなんて言わないはず。ボスを信じてるもの。』
クロームはそう思って声を掛けようとした時、信じられない言葉を聞いた。
「おはようなのな、セーラ。今日は大丈夫だぜ!」
「セーラさん、おはようございます!沢田のヤローは制裁しておきましたから!」
あの二人は今なんて言った?制裁?ボスを?
クロームは信じられないと獄寺と山本を見た。
「あっ、隼人~、武~おはよー♪」
セーラは二人の方に振り向いた。セーラの右頬を見た途端、険しい顔になる。
「その顔の湿布どうしたのな!?」
「セーラさん、まさかまた沢田のヤローが!」
セーラは涙ぐみながら、
「昨日、帰宅してる途中にぃ、沢田君が、お前のせいで・・・ヒック・・・殴られたってぇ、ヒック・・・私がまた酷い・・・ヒック、こと、言っちゃったんだよぉ~。ヒック・・・」
泣きながら話すセーラに獄寺と山本はもう、何も話すなとセーラを慰める。
京子達や生徒達も沢田はダメツナの癖にと罵り始める。
この異様過ぎる光景に恐怖を覚えたクロームはセーラ達から離れようとした時。
「おいっクローム!テメェもセーラさんをお慰めしろっ!」
獄寺がクロームに怒鳴り付けた。クロームは首を横に振った。
「ボスは苛めなんかしないわ!それより嵐の人、ボスを制裁したってどういうこと!?」
大人しいクロームが強い口調で獄寺に言った。そんなクロームに獄寺は多少驚いたものの、クロームに怒鳴り始めた。
「あの野郎はセーラさんを苛めてるだけじゃねえんだぞ!それなのにテメェは!」
怒りで興奮している獄寺を見て山本は、もしかしてクロームはまだ知らないのかもなと獄寺を落ち着かせる。
「笹川、黒川、二人はクロームにあの日のことは教えてないのか? 」
「山本君、私からは言えないよ。」
「クラス全員が知ってるとしても、言えないわよ。セーラが辛い思いをするだけじゃない。」
京子達の言葉に山本は確かにと思う。
チャイムが鳴り、担任が入って来た。
生徒達が席に着いていく中、制裁されたツナを探しに行くためにクロームは教室を出ようとしたその時、クロームの腕を掴んだ獄寺が睨みながら言う。
「勝手な行動するなっ!お前も守護者ならセーラさんを御守りしろっ」
「クロームも病み上がりで辛いだろうけどさ、セーラを守んないとなっ」
山本は睨みはしないが、勝手な行動はするなと目で訴えている。
いくら闘えるとはいえ、獄寺と山本相手に勝つのは難しい。
クロームは諦めて自分の席に着いた。