FOG&MIST

大空を慕う霧の少女




クロームは久しぶりに登校した。

「クロームちゃん、おはよう!風邪治ったの?」

京子が心配そうにクロームに話し掛ける。

「おはよう、京子ちゃん。風邪は治ったよ。」


クロームは体調を少し崩したところに運が悪く
酷い風邪を引いてしまい、十日間学校を欠席していた。

因みに骸が付きっきりでクロームを看病していた。



クロームは自分の席に着こうとしてある物を見た。そしてそれを見て驚く。

「え・・・何あれ・・・?!」

クロームの目に映ったのはツナの机。

ツナの机は『死ね』『消えろ!』『学校に来るな!』『最低』などの罵倒する言葉がマジックで書いてあったり、彫刻刀で彫られたりしていてボロボロだった。

クロームはツナの机に近付き「誰がこんな酷いことを・・・」と言った時、クラス全体の雰囲気が変わった。激しい悪意がツナの机に集中した。


「何言っているの?髑髏さん?」と一人の女子が言った。

「一体何があったの???」クロームはただ戸惑う。

あっ!そうかと京子がクロームに説明した。

「クロームちゃんは休んでたから知らないと思うけど、沢田君はね、セーラちゃんに酷いことをしたのよ。」

「えっ?」

「沢田の奴、毎日セーラを苛めてんのよ!」

黒川も会話に入りクロームに説明する。

「う、嘘よ・・・ボスはそんなことしないわ!」

「でも本当の事なんだよ、クロームちゃん。」


京子は困ったように言い、黒川はまぁ、いきなり言われて戸惑うのもわかるけどねと洩らした。
クローム、京子、黒川の間に微妙な空気が流れ出した時。

「京子ちゃん、花ちゃんおはよ~。」

一人の綺麗な少女が三人の元へ来た。
京子と黒川が少女の顔を見て辛そうな顔をした。

「セーラちゃん!その顔どうしたの?!」

セーラと呼ばれた少女の右頬には湿布が貼ってあった。

「あっ・・・これは何でもないよ~。」

何でもないように言ったセーラに黒川が、

「何でもない訳無いじゃない!沢田にやられたんでしょ!!」


「花ちゃん、違うの~。」

「セーラちゃん!セーラちゃんは酷いことをされて、更に毎日苛められてるのに、何で沢田君を庇うの?」

「京子ちゃん、私庇ってないよ~。きっと私が沢田君に酷い事を言っちゃったのよ~。」

その騒ぎにクラスの生徒達がセーラの側に来て、「セーラちゃんは優しいんだね。」「沢田の奴、こんなに優しいセーラちゃんを苛めやがって!」とセーラを慰めたりツナを罵った。

「みんなぁ~、セーラに優しくしてくれてありがと~♪」

セーラは泣きながら言う。
そんなセーラに生徒達は本当に綺麗で優しい子だと心から思った。そしてツナを罵倒する。最低な人間だと。


クロームはそんな空気とツナを罵る言葉に吐き気がした。


クロームは見た。セーラが泣く時、酷い歪んだ笑みをしたのを。
セーラの目は自分を捨てた両親とよく似た目をしていた。

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