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ちかてつおりたら

 どうして今、この相手とふたり並んで季節限定フラペチーノを啜っているのか。大江戸線はそう思いながら隣の席をちらりと見やる。
「美味いなこれ!」
 隣にいるのは丸ノ内線。ちらりと見ただけで目が合って、上機嫌で大江戸線と同じフラペチーノを口にし、はしゃいだ声を掛けてくる。
「そうですね」
 大江戸線の口から出たのは若干棒読み気味の声だったが、丸ノ内線は一切気にした様子はない。
 中野坂上のスタバで偶々列の前後に並んだだけの筈だった。テイクアウトにすればよかったかとも考えるが、そういえば持ち帰っておじさん達にねだられるのも面倒でイートインを選んだことを思い出した。
 丸ノ内線は都営のおじさん達より付き合いが浅いためでもあるが、底が見えない感がある。
 丸ノ内線がうまいうまいと話しかけてくるのに相槌を打つ時間は、フラペチーノがなくなるまで続き、
「またな!」
 機嫌が良さそうな様子で自分の改札へ向かう背を見送りつつ、
「『また』……?」
と大江戸線は首を傾げる。
(……おみやげでも買おう)
 その日、珍しく大江戸線がスタバをお土産に買って帰ると、都営のおじさん達はお祭り状態になり、大江戸線は後悔しつつも少しだけホッとしたのだった。
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