氷菓
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いつもの喫茶店に入る。パイナップルサンド。
小さい頃に、幼馴染のお姉ちゃんに連れてきてもらって知ったケーキの味に惚れ込んで、今では1人で足を運ぶほどのお気に入りだ。
今日だって宿題をトートバックに入れて、1人でパイナップルサンドを訪れる。
「プリンと……アイスココアで」
いつもの店員さんが、一瞬手を止める。そのまま「アイスココアですね」と復唱した。
私がいつも頼んでいるのはアイスコーヒー。
多分、店員さんもそれを覚えてくれているから。
メニュー表の文字をなぞる。
やっぱアイスコーヒーをブラックで飲む女子より、ココアを飲む女子の方がかわいいのかな、なんて。
運ばれてきたプリンとココア。
かわいいの権化だ。
黒髪、ロング、さらさらストーレート。上品な所作に、言葉遣い。おっとりとした、大和なでしこ。リアルお嬢様。垣間見える無邪気さと天然。空気が読めないと思う程の人との距離の詰め方。でも、嫌われない。
かわいいの権化。
方程式のシャーペンを持つ右手が止まる。
ココアって甘ったるいなぁ。なんて。
この思考が甘ったるい。
……私らしくない。
こんな私になってしまったのは、この前。
ここで、幼馴染と同じ部の女子──千反田えるちゃんを見てしまったから。
私は2つ離れたテーブルで、2人のテーブルの背を向けるように座っていて、
話し声もあまり聞こえなかったけれど、お店を出るには彼らの前を通らないといけないし、2人のテーブルに気楽に相席することももちろんできず。
多分、2人に私の存在はバレていないだろうけれど、2人の”逢引”に居合わせしまった居心地の悪さ。
2人は付き合ってはいないけれど(これは福君にこっそり確認した。だから間違いない。)
でも、2人でパイナップルで、休みの日にお茶する仲までに発展してるってのは事実。
あの省エネ奉太郎がそんな行動に出るほどの、関係なんだ。
気づいたら、私の右手は止まっていて、方程式は少しも進んでいない。
壁時計が目に入る。
あ、こんな時間!
もうしばらくは飲まないだろうココアを一気に飲み干す。
急いで荷物をまとめて伝票をつかんだ。
頑張って自転車を漕ぎに漕いだ家の側で……こういうときに限って外出してるんだよんぁ。
「奉太郎」
「おう」
「珍しいね。休日の奉太郎が外出してるなんて」
「姉貴にパシられてな」
「帰ってきてるんだ」
「あぁ。上がってくか?」
「……いや、今日はもう帰らないと。夜電話するって伝えといてくれる?」
ほんと、そういうとこだぞ、奉太郎。
口の中は一気に飲み込んだココアの甘ったるさがこびりついていて、1秒でも早くうがいをしてしまいたかった。
やっぱり私にはアイスコーヒーが性に合うらしい。
小さい頃に、幼馴染のお姉ちゃんに連れてきてもらって知ったケーキの味に惚れ込んで、今では1人で足を運ぶほどのお気に入りだ。
今日だって宿題をトートバックに入れて、1人でパイナップルサンドを訪れる。
「プリンと……アイスココアで」
いつもの店員さんが、一瞬手を止める。そのまま「アイスココアですね」と復唱した。
私がいつも頼んでいるのはアイスコーヒー。
多分、店員さんもそれを覚えてくれているから。
メニュー表の文字をなぞる。
やっぱアイスコーヒーをブラックで飲む女子より、ココアを飲む女子の方がかわいいのかな、なんて。
運ばれてきたプリンとココア。
かわいいの権化だ。
黒髪、ロング、さらさらストーレート。上品な所作に、言葉遣い。おっとりとした、大和なでしこ。リアルお嬢様。垣間見える無邪気さと天然。空気が読めないと思う程の人との距離の詰め方。でも、嫌われない。
かわいいの権化。
方程式のシャーペンを持つ右手が止まる。
ココアって甘ったるいなぁ。なんて。
この思考が甘ったるい。
……私らしくない。
こんな私になってしまったのは、この前。
ここで、幼馴染と同じ部の女子──千反田えるちゃんを見てしまったから。
私は2つ離れたテーブルで、2人のテーブルの背を向けるように座っていて、
話し声もあまり聞こえなかったけれど、お店を出るには彼らの前を通らないといけないし、2人のテーブルに気楽に相席することももちろんできず。
多分、2人に私の存在はバレていないだろうけれど、2人の”逢引”に居合わせしまった居心地の悪さ。
2人は付き合ってはいないけれど(これは福君にこっそり確認した。だから間違いない。)
でも、2人でパイナップルで、休みの日にお茶する仲までに発展してるってのは事実。
あの省エネ奉太郎がそんな行動に出るほどの、関係なんだ。
気づいたら、私の右手は止まっていて、方程式は少しも進んでいない。
壁時計が目に入る。
あ、こんな時間!
もうしばらくは飲まないだろうココアを一気に飲み干す。
急いで荷物をまとめて伝票をつかんだ。
頑張って自転車を漕ぎに漕いだ家の側で……こういうときに限って外出してるんだよんぁ。
「奉太郎」
「おう」
「珍しいね。休日の奉太郎が外出してるなんて」
「姉貴にパシられてな」
「帰ってきてるんだ」
「あぁ。上がってくか?」
「……いや、今日はもう帰らないと。夜電話するって伝えといてくれる?」
ほんと、そういうとこだぞ、奉太郎。
口の中は一気に飲み込んだココアの甘ったるさがこびりついていて、1秒でも早くうがいをしてしまいたかった。
やっぱり私にはアイスコーヒーが性に合うらしい。
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