たまには任務もこなしましょう①
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ギアッチョ〜、ギアッチョぉ」
「あーあァ!うるせェ!何なんだよさっきから!」
「やだもう、声が大きいわ?」
「用があるから呼んだんだよなァ?ちげぇのか」
舌打ちをしてソファからこちらを振り返り嫌そうな顔をするギアッチョ。何でそんな顔をするの?と聞けば、そうやって呼ぶ時はどうせ碌なこと考えてない時だとまた嫌な顔をされた。なんだ、バレてるなら好都合じゃない。
そんなに見透かさないでよ〜と足取り軽くギアッチョに近寄りコーヒーを渡した。
「今日の夜の任務一緒に行ってよ」
「はぁ?なんでだ?」
「暑いから」
「...マジでキレそうだ」
「あはは、嘘!ウソだってば!次の任務が厄介なの。一人で乗り込もうと思ったんだけどリーダーに止められたわ」
「それで俺に着いてこいってことか」
「今回は色仕掛けだから、見張り役ってところね。ターゲットは一人だけど邪魔が多いの。何があれば組織ごと一網打尽よ」
「へぇ、面白そうじゃあねぇか。面積が広くて人数が多いならホワイト・アルバムの能力は発揮しやすいからな」
場所とターゲットの写真をギアッチョと共有する。いけ好かない野郎だなァとぼやく彼が手に取った写真に写るのは、麻薬の横流しが発覚したニーコ・バンディーニという表向きはナショナリズムに勤しむ男だ。裏では組織と繋がりそれなりに評判は良かったが、禁止されている麻薬の横流しとは随分大胆なことをするものだ。
ギアッチョには一足先に現場となるニーコの自宅付近に待機してもらうことになる。私は政治活動家の集まるパーティーに潜入し、ターゲットに色仕掛けをする。自宅に上がり込んだところで、様子を見て排除。と言った流れだ。
パーティーの開始時刻は午後6時。主催者は今回のターゲットではないから、後は誘い込む事ができれば早々に会場を抜ける事ができるだろう。
「パーティーでは美味しいスプマンテが飲めるのよ」
「あ?俺には関係ねぇだろーが」
「何言ってるのよ、私の持ち帰る戦利品はいつも美味しいワインだわ」
「パーティー会場からも持ってくるのかァ?それ戦利品なのかよ」
「うるさいな〜、いいの!」
それじゃあまた夜に、とギアッチョにタッチをして自室へ戻る。
任務ではあるが、プロシュートからのプレゼントをやっと着る事ができる。一番最初にパーティでお披露目するのがターゲットの為というのは良い気はしないが、殺して仕舞えば無かったことになる。
ユリカは今晩人を殺すとは思えない足取りで、アジトの階段を登るのであった。
「Piacere.」
「...おお、これはこれは。綺麗なお嬢さん」
「ヴァスコ・カーチア代理のカミラと申します」
「カーチア?あぁ、確か最近身体を壊したと聞いた」
「今回は体調が安定せず参加は断念したのですが...とても楽しみにしておられたので、次回のパーティーを心待ちにしています」
「そうか。にしても、カミラは彼とどう言ったご関係で?」
「秘書をさせて頂いております」
カミラ・ルヴェーラはユリカの偽名である。政治家の一人であるカーチアは実在する人物であるが、秘書とは丸っ切りのでっちあげ。主催者側の持つ参加リストに名前が載っているが本人が姿を表すことはない。
委任状と彼のサインを偽造し、今回のパーティに参加したということだ。
接触したターゲット、ニーコはこの場に珍しい若い女であるユリカを上から下まで舐めるように視線を浴びせた。カーチアは良い代理を参加させたなと、近くのボーイに声をかけスプマンテを受け取った。
「まだ飲んでいないだろう?」
「Grazie.素敵な夜を過ごしましょう」
ユリカの言葉に気を良くしたニーコは、とても素敵なドレスだといい、さりげなく腰に手を回す。
正直良い気はしないが、これから殺すターゲットだ。どれだけ嫌なことをされても結果的に自分で手を下す訳で、哀れみの気持ちすら湧いてくる。
うふふっと可愛らしく笑うユリカは1時間ほどニーコと共にパーティを過ごし、気を良くして酒が回った彼の自宅へ向かった。車の中でも太ももや腰を撫で回すこのいやらしい男に、そろそろ表情筋も疲れてきた。
車窓を見ると月が登り始めており、完全な日没まであと30分と言ったところか。
ちらりと時計を見て、計画通りと心の中でつぶやき、悟られることのないよう、静かに笑みをこぼした。
1/1ページ