後輩の前世、犬説
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「ギアッチョぉ....」
現在時刻は13時半。太陽がかなり高い位置に登る時間だ。こんな暑い日に一体ギアッチョはどこに行ってしまったのか。
日本にいた頃、このくらいの季節だと暑い日と涼しい日の差があって、雨模様が多い事がほとんど。しかし、イタリアの気候というのは日本と少し違い、この季節はほぼ毎日日差しが強く、日没も20時を過ぎるため1日がとても長く感じられる。
アジトにはあまり陽が入らないが、それでも解放できるようなまともな窓がなく換気もイマイチのためかなり暑い。
「ギアッチョ〜、ギアッチョはどこ〜...」
ソファにだらんと項垂れ唸るように呟いていると、丁度ペッシがアジトに戻ってきた。
「....あ、ペッシおかえり!」
「ユリカさん、いたんだ!」
「さっき戻ったところなんだけど...今日はあまりにも暑いわ...」
「流石にばてちまうよぉ...あっ、良かったらこれいるかい?」
「ん...?ん、冷たいミネラルウォーター!」
「自分が飲むように買ったんだけど、2本あるし飲んでよ!」
「なんていい子なの...」
ペッシの優しさをありがたく受け取り、二人でソファに座ってミネラルウォーターをごくりと飲んだ。まだ買ったばかりで結露が目立つボトルがなんだか輝いて見える。本当にありがとうとペッシに言うと、えへへと照れたように笑う。やはり彼はマスコットキャラクターだ。
「最近どう?上手くいってる?」
「んんと、そうだなぁ....相変わらずプロシュートの兄貴に特訓してもらってるよ」
「あはは、そっか。プロシュート厳しいと思うけど、彼とてもあなたのことを気に入ってるわ」
「ホントかい?」
「うん!よくペッシの話をしているもの」
「なんか...照れ臭いなぁ」
「ミルクばかり飲むとかマンモーニだとか...」
「全然褒めてないじゃん....」
「ふふっ、嘘よ。俺に着いてこようと努力していると聞いたわ」
ガーーンという音が聞こえそうなほど一瞬肩を落としたが、本当の事を教えると子犬のようにもっとやれるぜ!と目を輝かせていた。プロシュート兄貴みたいになりたいなんて、二人は本当に良いペアだ。ペッシは皆にマンモーニなんて言われているが、彼なりにいつも頑張っているのだろう。
なんだか入団したばかりの自分を思い出して少しだけ懐かしい気持ちになり思わず笑みが溢れた。
「そう言えば、プロシュートとは一緒じゃないのね」
「なんだか野暮用があるとかで...それで先に戻ったんだ」
「あら、彼の野暮用なんて女の子とのデートね」
「プロシュート兄貴はモテてるからな〜」
「あの美貌がたまに憎たらしくなるわ」
「兄貴は何もかもが俺の憧れだけど...ユリカさんも周りから同じように思われてるよ」
ほっぺをぽりぽりと掻いて照れ臭そうに言うペッシに、こっちまでちょっと照れてしまった。
にしても、プロシュートの野暮用とは一体なんなのか。彼はよく身なりを整えた綺麗な女性を連れて歩いているが、同じ女性をほとんど見たことがない。自分が出くわすタイミングのせいか、毎回どこからそんな綺麗な女性を見つけてくるのかと関心すら覚える。それと同時に少しばかりモヤッとした気持ちになるが、それ関してはあまり触れてこなかったし、あまり触れたく無かった。
「ねーえペッシ」
「お?」
「プロシュートがいつも連れて歩いているのは、彼のamoreかな」
「俺も何度か聞いたことあるけど...んなわけあるかって詳しくは教えてくれないよ」
「うふふ、だからなんだって話だもんね」
「うーん、俺はてっきり兄ィはユリカさんが好きなのかと思ってたんだ」
「どうして?」
「いつもユリカさんの話をしてるからだよ!」
「どうせ碌でもない事を聞かされてるんでしょう?」
そんなことねぇ!と首を振るペッシ。にしても、プロシュートが私のことをいつもペッシに話しているとは驚きだった。ペッシは単純だから深読みはあまりしないし(しても読みが当たらない)、その印象が付いてしまってそう言っているのかもしれないが、彼の感じたことをいざ聞くとちょっと嬉しい。
一喜一憂で人のことは言えないくらい実は自分も単純なのかもと思ったが、後輩のペッシにはあえて言わないでおこう。
「きっと私とペッシはプロシュートから見て、似ているのかも」
「俺とユリカさんが!?...それはないと思うけど....」
「もう、何を想像してるの?見た目とか性格の問題じゃあないわ」
「ああ、そっか」
「私がここに来た時も、一人で任務をこなせるように面倒を見てくれたのは彼だから」
「なるほど!確かに、プロシュートの兄貴もそんなこと言ってたなぁ」
「でしょ?だから、妹とか弟みたいな感じかも」
「うーん、なるほど...」
俺はあんまり感じたことないけどなぁ、と、何か考えるように視線を斜め上に向けて考えていた。妹とはあまり思われたくはないが、ペッシと同じように面倒を見てもらっていた時期はある訳で、100%ないとも言えない。
そうとなると私ももっと大人になりたいなぁとつくづく思う
「大人の魅力って何かしら」
「充分ユリカさんは大人だよ」
「ペッシから見たらそうなのかなぁ」
「もちろん!」
「ふふっ、そっかあ....でもそうね、私も皆に負けないように頑張ろっと」
「皆って誰だ?」
「んふふ、内緒!」
キョトンとするペッシに、夜ご飯の買い物手伝って!と言えば、いいよッ!と元気よく立ち上がるものだから、そんな彼を見てプロシュートがペッシを気にいる理由がなんとなくわかった気がする。
ペッシに犬みたいと言ったらちょっと拗ねられたので、アイスでも買ってあげようっと。