デリカシー、とは
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「暑苦しいんだが...」
「絶対にここから降りないわ!」
「...メローネ、何事だ」
「名前すら聞きたくないのよ...勘弁して」
なんとも不思議な光景である。
メローネはしれっといつもと変わらない表情で佇んでいるが、向かいのソファには腰掛けたリゾットの上に飛び乗ったユリカが、メローネってなんであんなにああなのよ!っとプリプリしてリゾットに八つ当たりをしている。
困り顔のリゾットだが、ユリカにとって彼はパードレのような存在なのである。(大きくていつも我儘を聞いてくれる、とのこと)
今のユリカには、リゾットの深い深いため息など聞こえてはいないだろう。
こうなった原因は、遡ること1時間ほど前だ。
「ユリカ、そう言えば」
「ん?」
「プロシュートとは順調なのか」
「えッ...と、言いますと...?」
「どこまでイッたのかと言う話をしてるんだけど」
「ちょ、ちょっと待ってよ!私たち付き合ってないわ!」
「あれ?俺の思い違いだったかな」
「なんか勘違いさせるようなことしちゃった!?」
ベイビィの育成中らしいメローネから飛んできた唐突な質問に、思わずコーヒーを吹き出しそうになった。今の今までギアッチョの氷をどうやってこの夏に活用していくか話し合っていたのに。
付き合ってない!とアワアワしながら両手を前に突き出して否定した。
何がそんな思い違いを生んだのかと聞くと、どうやら私とプロシュートが二人でアジトの浴室に入っていくところを見たらしい。
そんなことがあったか...と記憶を呼び起こしてみれば...あった。怪しまれそうな出来事が一件。
「ユリカ、ちょっと来い」
「はーい!どうしたの?」
脱衣所から上半身裸のプロシュートに声をかけられた。シャツのボタンが閉めづらい、髪も上手く結べねぇ、などとボヤいている。
なぜこんなことになったかというと理由は簡単で、この前ペッシと任務に出た際、些細なことだがペッシがヘマをしたらしく、それをカバーしたプロシュートが流れ弾で右手を負傷してしまったのだ。暗殺にとって些細なミスは大きな怪我に繋がりかねない、と言ったところだ。ペッシにとっては良い教訓になっただろう。
その一件があった当日は、このマンモーニが!と怒鳴り散らしていたが、なんだかんだ言って敵の流れ弾からペッシを守ったのだ。兄貴分としては素晴らしい働きぶりである。
「服と髪なんだが、手を貸してもらえねぇか」
「もう、ペッシに言えないくらいマンモーニだわ」
「俺のせいじゃあねえ...にしてもいつもいいタイミングにいるもんだ」
「まぁ、住んでるから基本的には、ね...ッて、きゃっ!」
「突っ立ってねーでさっさと来い」
脱衣所の扉の側に立っていたら思い切り中に引き摺り込まれた。人の扱いが本当に雑だ。
転ぶところだったじゃない!というと馬鹿にしたように笑ってくるプロシュートだが、そんな顔も美しいものだ。路地裏で手を差し伸べてくれた時からずっと変わらない。彼を見るたび安心感を貰えるわと心の底でホッと息をついて、早く閉めろと言われた脱衣所の扉を閉めたのだった。
「......あの時は全っ然違うわ!彼、右手を負傷していたから身支度を整えるのを手伝ったの」
「珍しく扉を閉め切ってたし、怪しい声が聞こえたと思ったんだけど気のせいだったのか?」
「それは完全にでっちあげ!」
「なーんだ、二人とも中々お似合いだと思ってたのにつまらないな...ああ、そうだ!」
誤解が解けて良かったわ...と思っていた矢先に「これを機に聞いておくんだけど、ユリカはこの中の体位だったらどれが好みだい?」と、パソコンの画面に映るセックスをしていると見られる様々な体位を見せてきた。
あんぐりと口を開けて固まっているユリカを他所に、メローネは一つ一つ丁寧に説明を始める。
「これは男の上に女が座るようにしているんだ、それとこれは...ベットに寝転んで男が女の足を肩にかけて動く体位。ユリカは背が小さいから立ちバックは少し辛そうだな...」
「....仲間にまでなんて事聞いてくるの!!デリカシーのかけらもないんだから!もうっ!あっ、リゾット!ねぇ、本当に最悪だわ!」
顔を赤らめて階段から降りてきたリゾットに駆け寄り飛びついた。背の低いユリカであるからして、リゾットは立ったまま抱き枕にされたような状態である。
どういう状況だ?とユリカの事を子供をあやすように体から引き剥がしてソファに向かう。そこにユリカが飛び乗って.....今の状況に至るという事だ。
「メローネ、ユリカをあまり虐めるな」
「虐めたつもりはないんだが、質問をしただけなんだけどな」
「...ユリカはこう見えて、純粋だからな」
「こう見えてって何?リゾット」
プクッと風船のように頬を膨らませているユリカに、そういうところだ、とリゾットが言い、子供扱いしないで!と騒ぐユリカ。
怒った顔もディ・モールト良いッ!とユリカを覗き込んでいるメローネ。
なぜこんなにも騒がしくなってしまうのか。と、飲みたかったコーヒーを飲めずに言葉なく呆れるリゾットであった。