ブルネットプリンセス
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「プロシュート、お願いがあるの!」
「あぁ?なんだ」
「服が欲しいの。お買い物付き合ってくれない?」
ある日の昼下がり。ソファに腰掛けてタバコを咥えたプロシュートに声をかけた。理由は簡単。服を買いに行きたいので、センス抜群の彼についてきて欲しいのだ。私服についてはもちろんだが、次回の任務で着るパーティ用のドレスに関しては、私が選ぶなんかより彼に選んでもらえば絶対に間違いないと思う。
常に綺麗な女性を連れている訳で、その辺りも目利きはできるだろう。
「ユリカの頼みなら断る理由もねぇが、もう出るのか?」
「うん、私はいつでも。タバコが吸い終わったらもう出られる?」
「ああ。任務は夜からだから付き合ってやる」
紫煙を数回吐くと、半分ほどになったタバコを灰皿に押し付ける。いつもならもう少しゆっくり吸うだろうが、気を利かせてくれたのか。
こういう所はいつも優しいのがプロシュートだ。行くぞと声をかけるプロシュートにふふっと笑って、カツカツと小さなヒールの音を鳴らして駆け寄った。
トレドの方で普段着を数着買った。こちらでは任務の時や普段着がほとんどである。最近は少し暑い日が多いので、ショート丈のトップスや何にでも合わせられるデニム生地のスキニー。気持ばかりの日焼け対策で帽子も買ってみた。他にも、似合うと言われた背中の空いたブラックのワンピースと、自分好みの少しヒールの高いパンプスも。身長があまり高くない為、子供っぽく見せない個人的なこだわりだ。
「荷物持ってくれてありがとう」
「女に持たせてたんじゃあ、格好がつかねぇ」
「ふふっ、素敵ね」
「ほら、まだ買うものあんだろ」
「一着いいドレスが欲しいの。ミッレ通りの方に行きたいわ」
「車ですぐだな」
「うん、お願い!」
仕事で着るドレスと言う名目であるが、パッショーネの集まりやパーティで着ることの出来る物がどうしても一着欲しかったのだ。プロシュートは毎回ショッピングに誘うとなんでも似合うなと褒めてくれるから、あまり調子に乗らないように気をつけなければ。
わがままに付き合わせてしまうが、嫌な顔ひとつしない彼には正直頭が上がらない。
車を10分ほど走らせたところにミッレ通りがある。他愛無い話をしつつも、プロシュートの横顔を盗み見るたびに彼が整っていることに改めて羨ましさでため息が出そうになった。
到着してブランドショップの並ぶ通りを歩くと、良さげなショーウィンドウに惹かれて、ここ見てもいい?とプロシュートに声をかけた。
「これとても素敵だわ....」
「あ?あぁ、白のドレスか」
ブルネットが映えるなと言って、店員に声をかけたプロシュート。試着してみろと言うことだろう。
プロシュートに声をかけられた店員に、試着室に案内された。
ワンショルダーのスリットが入ったホワイトのドレスは人目を引く美しさを放っていて、ドレスに負けてしまわないか心配だったが、案外似合っているかもしれない。着せてくれた女性も、鏡越しにとってもお似合いですと目を輝かせている。お連れ様をお呼びしましょうかと気にかけてくださった彼女に、お願いしますと頷いた。
「どうかな?」
「....今まで見た女の中で一番綺麗だ」
「もう....恥ずかしいからそんなこと言わないでよ」
「嘘はついてねぇ、似合ってる」
歯の浮くようなセリフをつらつらと言うものだから、少しばかり顔が熱い。微笑んでこちらを見る店員に、これを買いたいわと伝えると、嬉しそうに畏まりましたとドレスを準備しにバックヤードに入っていった。
「どうしよう...一目惚れだわ。ちょっと贅沢しすぎちゃった」
「似合っちまうから仕方ねぇ。ユリカ、外に出て待ってな」
「え?でもまだお会計終わってないけど...」
「プレゼントしてやるって言ってるんだよ」
「そんなのだめ!ちょっと高すぎるもの。申し訳ないわ?ただでさえ一日付き合わせちゃったのに」
「...そうだな、それなら次のパーティは俺のエスコートだ」
「プロシュートの?」
「俺がプレゼントしたドレスを着た女をエスコートできるんだ。お互い悪くねぇだろう」
「...プロシュートずるいわ」
ふっと笑って、楽しみにしてるぞと言うと、店の外に視線を逸らした。外に出で待っていろと言うことだろう。Grazie!と伝えて、彼の頬に軽くキスを落とすと、満足そうな顔をしていた。
慣れていると言うかなんと言うか、少しばかり悔しい気もするが、こんな顔をする彼のことも好きだなとしみじみ思った。