計画か無計画か
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「もしもーし」
「あ!ユリカさんおはーっす!」
「仗助おはよう。朝早くから珍しいね?」
「いや〜、実はですねぇ」
土曜日の朝9時。やっとの休みだ〜と、一週間分の仕事の記憶を引き出しにしまって、ベットで漫画(ピンクダークの少年)を読んでいた時だった。
珍しい時間に仗助から電話がかかってきて、何かと思えば康一くんの誕生日に何か買ってあげようと考えているところらしい。何が良いっすかね〜と時折小さな唸り声が聞こえる。
探しに行くにも一人ではちょっとなぁ、なんてボソボソ言っていた。
「カメユーとか、何かいいものありそうだけどね!」
「ありそうですけど、あんまりそう言うの買ったことないからなぁ」
「うーん、そうだねぇ....仗助、今日は一日暇なの?」
「まぁ、特にこれと言った予定は無いっスね」
「探しに行っちゃおうよ!私もなんか人のプレゼント選びとか最近してないから、ちょっとしたいかも」
「ホントっすか!ユリカさんナイス!!」
電話越しにワントーン明るくなった声に、尻尾を振る犬みたいで可愛いなぁと思っていると、11時頃に迎えに行きますね〜と言い、それじゃあ楽しみにしてるっす!と電話を切られてしまった。
勢いの塊にも程があるが、ツーツーなる電話の音を聞きながら笑って、さーて準備するか!と寝室を後にした。
----- ----- ---- --- ーー ー
ピンポーン。
家のチャイムの軽い音が響いた。
「ユリカさんお待たせ〜!」
「仗助ありがとう!今出るね」
インターホンのカメラに顔を向ける仗助に返事をして、バックを持って家を出た。
扉を開けて、お迎えありがとうと笑うと、そこにはいつもの学ランではなくシンプルな普段着を着た仗助が立っていた。身長が高くてすらっとしているから、何を着ても似合うものだなぁと感心する。
「...ユリカさん、今日の服似合ってる」
「!...ありがとう。仗助も、学ランじゃないのも素敵だよ」
「そっすか...?なんか、デートみたいで緊張しますねぇ...」
「ふふ、本当だね」
ちょっとだけ顔を赤くして私のことを褒めてくれる仗助がとっても可愛くて撫で回したい気持ちになってしまう。ヤンキーの癖に可愛いところあるんだよなぁと。
それじゃあ行こっか!と仗助の肩をポンっと叩いてカメユーに向かった。
「ん〜....どっちにするかな〜」
「康一くんなら....んー、こっちの色とかはどうかな?」
「あ、確かに康一っぽいぜ」
「うん、緑が入っているのが可愛い!」
無事カメユーに辿り着き、いろいろなお店を回りながらプレゼント探しをしていた。
何店舗か見て、結局学生生活でも使うことができそうなトートバッグにすることにした。シンプルなデザインだが緑色の小さなロゴが入っているのが康一くんに似合いそうで、これにしようと仗助はバックを手に取ってレジに向かっていった。
仲の良い友達から貰えるプレゼント、素敵だなぁととってもほっこりした気持ちになった。康一くんとは何度か会ったことがあるくらいだけど、仗助と一緒にプレゼントを選ぶ時間はとても楽しかった。
「ユリカさんお待たせ!すげぇ良い感じじゃないっすか?」
「お〜!プレゼント感...!素敵!良いものが見つかって良かったね」
「ユリカさんのお陰だよ!康一にも言っとくぜ」
「えー!いいよいいよ!一緒に探しただけだもん!」
康一も喜ぶと思うぜ!と嬉しそうに笑う仗助に、それならいっかと笑い返した。
「ところでさ、俺すげぇ腹減ったんすけど、ユリカさんお腹減ってる?」
「もうそんな時間?...確かにお腹すいたよね!」
時計を見ると既に13時半を回っていて、確かにお腹が空く時間だ。私は朝ごはんを食べていないし、言われてみるとものすごくお腹が空いてきた。
何か食べていこうかと仗助に言うと、デパートの近くに新しくカフェが出来たらしく、そこに行かないかと提案された。
どちらかと言うと優柔不断な方なのでありがたい。そこに行こう!と言って、二人でデパートを後にした。
----- ----- ---- --- ーー ー
「うわぁ...美味しそうっ!」
「こりゃ絶対ウマイっすよ...」
噂のカフェに来て、私はジェノベーゼパスタ、仗助はドリアとハンバーグのセットを頼んだ。運ばれて来た食事に二人で目を輝かせる。仗助、昼からメチャクチャボリューミーだなぁと少し笑ってしまった。
いただきますと二人で食べてみると、見た目通り完璧な味だった。この土地に引っ越してきてから思うが、本当にどこでご飯を食べても美味しい。心なしか最近少し太った気がする。ここだけの話怖いから体重計は買っていない。
「本当に美味しい!幸せ〜」
「ユリカさんってなんかリスみたいっスね」
「え、なんで!?」
「ほっぺがなんか、小動物みたいと言うか...一生懸命食べてるって感じです」
「えぇっ、なんか恥ずかしいって言うか食べ辛いんだけど!?」
「いや!違うっスよ、その...馬鹿にしてるんじゃあなくて、なんか可愛いっていうか...」
ほっぺを掻きながら気恥ずかしそうに笑った仗助に、ドキドキが止まらなくなってしまった。逆に食べ辛いよ〜なんて可愛すぎることは言えなかったが、嬉しいし恥ずかしいし、いつの間にか一口が小さくなってしまった。
照れ隠しで、やめてよと言いながら笑って見せて、早く食べちゃおうと食事をすすめる。
仗助と初めて会ったのは、私がS市に越してきたばかりの時だった。元カレと最悪な別れ方をして、闇雲に地元を飛び出してきたばかりの時。
その時はかなりメンタルがボロボロでよく近くの公園のブランコで泣いていた。飛び出してきたものの、知り合いもいないし、仕事も中々に忙しい。そんな時たまたま声をかけてくれたのが仗助だったのだ。
お姉さん大丈夫?とリーゼントの長身の男に声をかけられた時は2秒くらい息が止まったものだ。
いわゆるご近所さんというものだったらしく、そこから少しずつ仲良くなって、仗助の友達ともたまに遭遇するとみんなとても優しく接してくれて、彼と会ってから私の生活にはかなり色がついたと思う。
特に女の子だと由花子ちゃんからカフェで康一くんの惚気話を聞いたりもする。みんな少し年下だけど個性豊かで一緒にいてとても楽しい。
あれもこれも仗助があの時声をかけてくれたお陰だなぁ、と心が温かくなる。
「ねえ、仗助?」
「ん?」
「この後、まだ時間大丈夫だったりする?」
「俺は一日空いてるっスよ」
「...じゃあさ、デートしようよ」
「ゲホッ!え......え!?良いんスか!?あ、いや、あ...」
食べ物が変なところに入ったのか、思い切り咽せた仗助にこちらが驚いたが、良いんすかってどういう事?と聞き返しながら、お水を渡してあげた。
「あ、あざっす...いや、その〜....デートっていうと彼氏彼女がすると言うか...ユリカさんみたいな可愛い人と俺がデートして良いのか?って言う...」
「...私がしたいのっ!......嫌、かな?」
「嫌な訳ねぇっすよ。でも、格好つかねぇ...女の人から誘われるとか」
仗助が少し顔を赤らめながらそう言うものだから、ちょっとだけ意地悪したくなってしまった。
「じゃあ....仗助から誘ってほしいな」
なんか、ものすごく恥ずかしい事を言っている気がして、さっきから熱かった顔の温度がまた上がった気がする。仗助と目を合わせると、恥ずかしそうに唇を尖らせていたが、ゆっくりと口を開いた。
「ユリカさん、この後時間ありますか?」
「...うんっ、いくらでもっ!」
「俺と...デートしてもらえませんか?」
「...ふふっ、喜んで」
恥ずかしながらも真っ直ぐこちらをみて言ってくれた仗助に笑顔で答えた。
自然に出てしまったのか、よっしゃぁと小さな声で呟いた仗助があまりにも愛おしくって、胸がいっぱいだ。
「...じゃ、行きますか?」
「うん、そうだね」
お会計をして、お店を出る。公園でおしゃべりしたいなと言うと、それ最高っスねとにっこり笑って見せた仗助。
朝の電話がここまで進展するとは、計画的なのか、はたまた偶然か。考えるのは野暮だからやめておく。
仲良く並んで街を歩く二人。先ほどと違うのは、今は二人が手を繋いでいる、という事だ。
後日、街の中で露伴先生と由花子ちゃんに目撃されていた事を知り、多方面から尋問を受けたのは言うまでも無い。
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