奪い愛
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「ユリカ、おはようございます」
「ジョルノおはよう、奇遇ね」
ネアポリスの美しい街並みと海岸を背に、結ばれた美しい金色の髪を靡かせる彼。ブチャラティの部下であるジョルノに、まだ太陽が頂点に登るには早い時間にカッフェを嗜んでいたところ声をかけられた。
「ブチャラティとデートですか?」
「ええ、そうなの。予定まではまだ30分くらい時間があるんだけど、今日は快晴だし久しぶりにここのカッフェが飲みたくって」
「そうでしたか、実は僕も」
さっきまでカウンターにいたんですが、とカップを片手に店の奥を指差してみせた。本当に奇遇ね、と少し目を大きく開いたユリカに、ジョルノは座っても?と問うと戸惑う事もなく小さく笑って頷いたユリカ。
「ジョルノも良くここに?」
「ええ、以前ユリカはここは景色も良くて海風が気持ち良いと言っていたので仕事前に立ち寄ってみたんです」
「そういえば...少し前にそんな話をしたわ」
サラッと言ったくらいだったものですっかり忘れていたが、ジョルノがそれを覚えていることに少し驚いた。コーヒーを口に運びながら目の前で海岸を眺める彼は、入団当初の印象と変わらずまだ幼げな顔立ちながらも彫刻のような美しさを持っている。
少しばかり見惚れてしまった自分にハッとしてカッフェを二口ばかり流し込んだ。
「ブチャラティは羨ましいですね」
「何よ、突然ね」
「ユリカは30分後ブチャラティと2人でこんな良い日にデートをするんでしょう?」
「ん、まぁ...それは恋人だから普通のことよ」
「貴方のような魅力的な女性と"普通"にデートできることが羨ましいんですよ」
節目がちに言って小さく笑みを浮かべた彼は、何だか少しばかり悲しそうな顔に見える。
「ジョルノだって、とても魅力的よ?街を歩いたら女性に良く声をかけられていること知ってるわ」
「ええ...そうかも知れませんね」
笑って言う彼が、結局何を言いたいのか分からず首を傾げて見せた。
ジョルノはユリカの左手に自らの右手を重ねて、いたずらっぽく笑うと、例えばですよ、と続けた。
「僕とブチャラティだったら、どちらがユリカには魅力的に見えますか?」
「...え?えぇ、二人ともとても魅力的だけれど...」
「ブチャラティは貴方にとって特別魅力的で、僕はそうじゃあないでしょう?」
ブチャラティは恋人であり、間違いなく彼だって魅力的だ。彼といる時の安心感と芯の通った心強さ、いつだって美しい、愛していると抱きしめてくれる彼はユリカにとって心から大切な人である。
困ったように眉毛を下げて「それはそうだけど」と言おうとした瞬間に、ジョルノが重ねた手を優しく握り締め、少しばかり息が詰まってしまった。
「ユリカともっと早くに出会えていたらと考えると、嫉妬してしまいます」
何も言わないでくださいと笑い、握っていた掌から一輪の花を生み出した。
「アネモネ?」
「僕からのプレゼントです」
「...ありがとう、綺麗」
「ブチャラティを尊敬しています。が、僕はブチャラティから貴方を奪いたいと思ってしまう」
目を細めて落ち着いたトーンで話す彼の言葉に、心拍が早まる感覚を覚えた。同時に彼は立ち上がり、頬にかかったブラウンの髪をさらりと耳にかける。
ピクリと肩を揺らしたユリカの頬に唇を落として、
たった数秒の出来事と彼の言葉が頭を反芻して、気を逸らすようにアネモネに視線を落とす。
触れた頬が熱い。知らないふりをするように残ったカッフェを飲み干し、ふぅっと小さく呼吸を整える。
「アネモネは意図的ね...ブチャラティには言えないわ」
ジョルノの顔を思い出して、アネモネをそっとテーブルに置いた。彼の予想外の一面が可愛く思えてしまって、こっそりメールをしたのは『二人だけの』秘密にしておくことにする。
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