可愛くないなんて
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「ねぇ、承太郎」
「なんだ」
「私たちってさ、どんな関係なの?」
「俺はお前に告白したつもりだったけどな」
「あの時はそりゃあもう死ぬほどキュンキュンしたよ?でもさ」
それ以来何もないじゃない?
あまり面倒臭い事を言う女にはならないつもりだったが、こちらも相手を好きでこうやって今も隣をフラフラと歩いているわけで、別にお友達だってこうやって歩く事くらいは出来るのだ。誰だってね。
例えば、ほらアレ、あそこ見て。今あそこで日誌書いてる花京院だってラブラブな振りをして歩く事くらいできるんだよ?妬くぅ〜!
「別に今が気にくわないわけじゃあないの、でもなんと言うか、少し物足りないって思う」
「俺じゃあ物足りねぇと?」
「承太郎じゃ足りない訳じゃなくてね…その、なんていえばいいのか…」
言葉がうまく出てこない。こんなに好きなのになあ、どうしたらうまく承太郎に触れられるのか未だに分からない。
抱きつきたいし、キスもしたいし、でも甘えるなんて恥ずかしくって、自分のお堅い理性が引き止めてしまう。甘えてばっかりな女なんて、きっと承太郎が嫌がる、そんな可愛くない事ばっかりだ。小悪魔系女子なんてものに一度はなってみたい人生だった。
小さく溜息をこぼすと、大きな手のひらが髪を撫でて、少しだけ自分の体が彼に引き寄せられた。
「その満足がなんなのか知らねぇが、寂しい思いさせてるなら、悪いことしたな」
そんな大きい体のくせに、優しいこともできるじゃん。
なんだか、優しくされたら優しくされたで、面白いのと恥ずかしいのとで小さく笑いが込み上げてくる。うふふと吹き出したように笑うと、なんだよと頭に乗っていたはずの手を離された。
「なんだか可愛いんだもん、承太郎。私なんてなんにも可愛げないのに」
「ああ?何言ってんだてめぇは」
「ん?」
さっきの私とは比べ物にならないくらい大きな溜息を吐いて、眉をひそめる彼。なんか文句でもあるのか。
そんな気持ちを込めて、なんだよう!と、オラオラとスタープラチナの真似っこをして軽くどつけば、出していた右手をぐっと引っ張られ、不覚にも彼の方に体が倒れる。
「ユリカがそんな事してるせいでこっちは理性保つのが精一杯だ、わかるか?可愛いだの可愛くないだの、決めるのは俺だぜ」
俺の気持ちにもなれ、と抱きしめられたまま言われた私は今すぐ魂が飛んでいきそうなんですが、という状況に陥っている。承太郎の香りが鼻いっぱいに広がるのが心地よくて、このままでも眠れちゃうな、なんて。
いや、違う違う。そういう事ではない。ここどこだっけ、私たちまだ学校の廊下にいた、よ、うな?
「え、待って!?承太郎!!!本気!?」
「何の話だ」
「いや、あのこの状況は…うわ、A組の可愛い子と目合ったよぉ…すいませんすいません…すいません伝われ!」
「はぁ?何がすいませんだ、堂々としてろ」
より一層強く抱きしめられ、もう顔の熱が止まらない。あっついのなんのって、蒸発している自信しかない。
こっちに気づいて気まずそうに知らない振りをして通り過ぎて行く人もいれば、まあコソコソと隠れてこっちを見る子もいるわけで…主に承太郎の取り巻きだけれど。
「私、明日から女の子たちに物とか隠されてそうで違うドキドキが凄いよ。もちろん承太郎へのドキドキなんてもう…ゲージ壊れたかも…どうしよう…」
嬉しさとテンパりと、色々な意味でいっぱいいっぱいで、なんだかもう泣きそうだ。まさかこんな展開になるなんて思いもしなかった。承太郎は確かにストレートな男だけどここまで!?という感じで、いや、堪らなく好きなんだけど堪らなく恥ずかしくて顔が見れない。
「キスくらいしておくか」
「いやぁっ、それは」
「物足りないって言ったのはユリカのほうだった気がしたけどな」
「うそ、うそうそうそ!物足りないなんてうそ!!もう恥ずかしくって顔見れないぃ…」
変なこと言ってごめんなさい…と承太郎に謝ると、またまた溜息。こっち見ろと、所謂顎クイされた訳なんだけど、なんだか不敵な笑みを浮かべている。
これはまさか、キスされる?と思ったら、耳元でこっそりと一言。
「今日は俺の家に来い」
たまには甘えてみろ、と言われた。
今の一言で、完全にハートを撃ち抜かれてしまった。
「…うん、行く」
「十分すぎるくらい可愛い女じゃあねえか」
いくぞと手を繋がれて、周りからの視線が少し恥ずかしかったけど承太郎と手を繋げることの嬉しさに比べたらアリさんが食べるご飯くらいちっぽけで、どうでもいいことだ。
家って、お家デートってこと?お家デートって何すんだろう…って考えて、1人で恥ずかしくなっていたのは誰にも秘密だ。
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