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ある雪の日

「ガルルルッ…!」「ガチャン!ガシャン!」「バサッバサッ!」

モブ帝国の城の裏手にある、レンガ造りの立派な建物では飼育されているナイトメア達が落ち着かない様子で動いていた。
「今日みんな落ち着いてないなぁ。どうしたん?」
モブ帝国にて点呼係、副業としてナイトメアの飼育係をしている堀田くろともは困ったようにナイトメア達に声をかけていた。
ちなみに、ほかのみんなは職業らしき名前で呼ばれているというのに自分はなぜ堀田なのかという疑問、これは堀田自身が1番不服に感じていたが慣れとは恐ろしいもので、違和感がなくなってきた今日この頃である。

そんなことより目の前の檻の中で暴れるナイトメア達、騒ぐナイトメアの所為で気が付かなかったが堀田は外から悲鳴や怒鳴り声が聞こえることに気がついた。
「なんや!事件か!?」
この国のサブリーダーとして事件や事故はほうっては置けない、後でめんどくさい事になる、と慌てて飛び出した堀田の目に飛び込んできた光景は、大量の雪だるまとその中で遊んでいるらしき庭師、司祭、外交官、そして少し離れたところに拷問官の姿だった。
慌てて飛び出した事が恥ずかしくなるほど平和な光景に拍子抜けすると同時に堀田の頭には「仕事しろよあいつら」という苛立ちがふつふつと湧き上がってきた。

「…そうだぁ!」
堀田は目をきょろっと開き、口角を上げいつもよりさらにワントーン高い声で独り言のように呟き始めた。
「ナイトメア達も雪で遊びたいかもしれへんなぁ!今日落ち着かへん子達が多いのも外に出たかったんかなぁ??よぉーし!じゃあ今日は外に出してあげよう!」

ひとりで動かすのはやや大変な大きなレバーを、全身を使い堀田が倒すとギギギと音を立ててナイトメア達が入っている檻の扉が少しずつ開いていく。その扉を押し上げるようにしていの一番に走っていったのはきっと司祭のウガルルムだろう。それに続いたのはきっと外交官のフリーズゴーレムだろう。さらに次々とナイトメア達は庭へと飛び出していく。庭で遊んでいる人たちを襲わないかどうか?それは飼い主の躾の度合いによるのだろう。そんなことを考えながら、庭へ飛び出すナイトメアを横目に堀田は檻の掃除を進めるのだった。

「あぁ…!フリーズゴーレム!まさか私を助けに来てくれたのか…!」
ほとんど雪だるまになっていた外交官の感極まった声が聞こえ、堀田はひょいとそちらへ目をやる。ナイトメアが飼い主を助ける。ドラマチックなこともあるもんかねと眺めていると、
「さぁ!早くこの雪の塊をっ…うわぁぁぁぁぁ!!」

あ、外交官が雪だるま姿のままフリーズゴーレムに突き飛ばされて飛んでった。やっぱり躾は大事なようだ。
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