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コロシアム

「なんとか持ち直せそうですねっ…!」

スコアを見ながら女帝が安堵の声をこぼす。バーバリアンの効果でスコアはもうすぐひっくり返せるというところまで来ていた。

「安心するのはまだはやいよー」

ほっとしかけたところに帝王の活が飛ぶ、しかし皆理由は分かっているようですぐに表情が引き締められる。なぜなら相手もスコアをひっくり返された時のためにバーバリアンを召喚していたからである。
「時間ギリギリまでは前衛攻撃加減していこう。向こうのバーバの効果が出ないように!GOサインで一気に行くよ。後衛回復本気で行くぞ」

帝王の指示に皆が頷く。女帝も出来るだけ手元に回復ができる杖武器を多く蓄えた状態でぐっと指示を待った。

残り時間が徐々に減ってゆく。シップも落とさなくてはいけないことを考えるとあまりのんびりもしていられなかった。
「…後衛キツいかもしれないけど…行くか…!前衛相手を落とせ!」
帝王の指示が飛ぶ。

「りょーかいでぇーす!!」
外交官が声を張り上げ、いの一番に向かっていくのに続き

「はいよー」
「おっけー」
「ん」
「わかりました!」
とその他前衛もそれぞれの武器を手に相手を落としに行った。
調整しているのではない、本気で相手を落としに行く前衛の気迫は後ろにいても伝わってくるほどだった。

「落ちろぉ!!」
外交官が必死に叫びながら槍を奮っていく。その後ろでも
「おら、後衛もさぼってらんねぇぞー」と庭師も後衛勢に活を入れていく。そこにはSP回復に…とサボっているメンバーは一人もいなかった。

「よっしゃ落ちたぁ!」
上皇の嬉々とした声あがる。
目の前の相手の前衛は全員膝をつき、後衛も同様にノイズを撒き散らしながら戦場から姿を消す。前衛が全員倒れたため、シップの中へと戻っていったのだ。
それを確認するとモブ王国のメンバーは全員相手のシップまで駆け寄った。
相手の前衛を落とすと一定時間相手のギルドシップを攻撃できる。そしてギルドシップを落とした時大量の得点が手に入るというルールがあった。

「ここは確実に落とすぞ、後衛も手を緩めるなよ!」
帝王からの指示にメンバー全員が必死に武器を振る。

「後衛は前衛に比べて攻撃の火力は落ちるんですよね?」
後方から魔法による攻撃を飛ばしながら女帝は近くにいた拷問官へ声をかけた。
同じく後方からシップを攻撃していた拷問官は視線は向けずに声だけで答える。

「そうねぇ。でも後衛は人数が多いから、一人ひとりが火力出せなくてもみんなが攻撃すれば前衛1人分は出るんじゃないですかね」

「うんうん…!やっぱり休んでられないね!」
女帝はよし!と気合いたっぷりに前方のシップを見つめ、攻撃を飛ばす。

その様子を見て、拷問官はもうすぐ相手のシップが落ちそうであることを確認すると
「まぁこのあと我々は回復も頑張らねばいけないのでね!SPはキープしながら行きますよ!」
と、表情を少し綻ばせてから、この後の耐久戦に向けて気合を入れ直していた。

「みんなは死なせないよ…!」
女帝の熱の篭った発言に周りは、
「なんか、女帝がそういう台詞いうと似合うよね」
と、納得の表情を浮かべていた。
しかし1人だけ

「おうおうおうおう、うちの1番の回復頭だれだとおもってんだぁ?」
と少しドヤ顔気味でコックが会話に割って入ってくる。
そんな彼の発言に、皆は苦笑を浮かべたがそのドヤ顔に恥じぬほどモブ帝国の回復はコックに支えられていた。
コックがSPを回復に引いた瞬間前衛が落ちかける…なんてこともある程には。

「助かってる、めっちゃ助かってる。てかコック、シップも叩いて今回復飛ばしてって、SP大丈夫?」
拷問官が雑に労いながらシンプルに疑問をぶつける。

「は?もうSP無くなるから一瞬引くけど?じゃ、すぐ戻るから耐えてね」
コックはそういうや否や下がってしまう。その瞬間前衛から
「HPちょっと怖いかもー」「あ、ちょ、めっちゃ落とされる。痛い痛い!」「待って!まじで落ちる!!!」
と悲鳴が聞こえ始め、後衛は顔を青くする。ここでシップに行かれては逆転してしまうだろう。
「いやぁぁ!!回復ぅ!!届けえっ!!」
女帝の必死の嘆きがコロシアム会場内にこだまする。その直後コロシアムの終わりを告げる鐘が鳴り、強制的に会場から追い出されてしまう。

モブ帝国のメンバーが最後見た文字は勝利を表すVictoryの文字だった。
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