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酒場にて

そろそろ夕食時だろうかという時間、酒場には夕方よりも人が増え賑わい始めていた。
1人で飲んでいたコックの横にも帝王であるニコルとが座って食事を楽しんでいた。
コックは視界の端でどんどん消えていく料理にドン引きしていた。
「帝王相変わらず食うの早いっすねー」
「ん?…ふほんはほほふぁふぃほ」
「飲み込んでから喋ってください」
食べながら返事をする帝王を嗜めながらコックは改めて食べた量を思い出していく。チキンソテーとピラフ、3人前のサラダボウルを注文し、食べながら思いついたかのように唐突にラーメンを先程追加で注文していた気がする。きっとデザートも忘れずに食べるのだろう。
カランカランというドアベルの音がまた店内に響く。
「こんちゃーす!あ!コックと帝王だー!」
同時に元気な声が響き、城の番犬であるルフが二人の方へまっしぐら。
「帝王すごい食べてるね!!あ!コックお酒飲んでるー!ねぇ!拷問官ぼくにもお酒ちょーだい!」
一気にまくし立てる様子に思わずコックは目と口を一文字にするが、拷問官と帝王は手馴れた様子だった。
「あー、ごめんね番犬。うち未成年には酒とか出せねぇからさぁ」
拷問官は勢いに負けず至って普通に嗜め、帝王は全く気にせず食事を続けていた。
「3歳児にははえーよ」
「ぐ、コックがひどい!コックだってお酒弱いくせに!」
「なにー!?弱いのと飲んでいいのは違ぇんだよー!」
ぼそっとちょっかいをかけると地味に気にしていたことを言われコックはついカッとなる。確かに酒は弱いが3%とはいえ飲めるようになったことは立派な進歩だ。たまにペースを見誤って拷問官に介抱してもらったこともあるが…
「こらこら喧嘩しなさんなって」
カウンター越しの拷問官から宥められるが、拷問官も客が増えてきて忙しいのか適当な宥め方である。
ろくに止める人間もおらず、さらに口論がヒートアップしそうな時だった。
「横で人が食事してるのに騒がしいわ!コックもう酔ってるんじゃないのー?番犬はほら、ミルクあげるから」
「わーい!ミルクー!」
流石に落ち着いて食事出来ないことが気に触ったのか、帝王が瓶のミルクを番犬に渡す。番犬はそれで満足したのか飛び跳ねながら酒場から出ていった。
「あれでいいのか…」
コックは嵐のように過ぎていった番犬に驚きながらそう呟いた。
「あれでいいんだって、あ、拷問官注文ー。イチゴチョコデラックスパフェの大盛りくださーい」
「まだ食うんすか。たまには城の食堂も使ってくださいよー」
帝王の胃袋にドン引きしながら、常日頃思っていた疑問が口から漏れる。城で務めている人間誰一人として食堂を使う奴が滅多にいないのだ。

「えぇー?だって…」
「だって?」
帝王がピラフをさらえながら言いよどむ。

「コックの料理高確率で毒盛ってあるんだもん」
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