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コロシアム

モブ帝国の人間は基本的に自由気ままだ。

拷問官という肩書きを持ってはいるものの、拷問にかける相手がおらず酒場でバイトをする者。コックを名乗りつつ、実際には料理に毒を盛って遊んでいる者。司祭と言いつつ宗教家でも何でもなく、お布施と称して人の金を奪っている者。番犬を名乗っているがそもそも犬でない者。仮にこんな国が本当にあったのならとっくに滅んでいる…いや、建国すら出来ていないだろう。
それでもモブ帝国が存在するわけは、彼らが置かれている状況にあった。

彼らはある日突然、喋る球体関節人形2体に半ば騙された形でここへ連れてこられた者達だった。
本で埋め尽くされたただただ広い空間。そこに浮かぶ数隻の船。重力もないのか1人ふわふわと本と共に漂う、それがこの世界に来た者が最初に放り出される世界だった。
浮かぶ船はギルドシップと呼ばれるもので、この世界へ来た者が最大15人までのギルドを作る拠点となる船だ。モブ帝国というのは本来このギルドの名前なのだ。
そして集められた15人は1日1回ほかのギルドと戦うことが使命とされていた。コロシアムと呼ばれるその戦いでは、勝てば報酬が貰え、暮らしを充実させることが出来る。負ければ暮らしは貧しくなっていく。そのため日々、勝つための訓練をしながら生活しているのがこのモブ帝国の人々なのだ。
本来なら職業を考え、国のような形式をとる必要は全くない。しかしこれは彼らなりの、兵士の様に扱われる事への抵抗、生活に娯楽を求めた結果だったのだ。

コロシアムでは死人が出ることはない。
強さによって順位が決められていたり、定期的にグランコロシアムと呼ばれるトップを決める少し特別なコロシアムが行われていたりと、管理された中での戦いである事はかなり早い段階で皆が気づいていた。「自分たちはなにかの代理戦争でもさせられているのではないか」そんな憶測が飛び交うこともあったが真相を知るものは誰1人としていなかった。
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