運命の歯車

〝闇〟が美琴にバリアーを張り、その姿を消したのと、ほぼ同時刻。

――とある空間に、無数の影が集っていた。

闇とも霧ともつかぬ存在が、重なり合い、蠢いている。

「……様。
ようやく〝希望の光〟を見つけました」

低く、慎重な声が空間に響く。

「ほう……ついに見つけたか。

それで、どのような〝もの〟だ?」

「はい。天守 美琴――〝人間〟です」

「……〝人間〟、だと?」

一瞬、空気が揺れた。

「その情報、確かなのだろうな?」

「勿論でございます。

すでに〝接触〟にも成功しております」

「ふむ……〝人間〟とは、実に珍しい」

「さらに、興味深い情報がございます」

「申してみよ」

「おそらく〝翔〟様と思われますが……

すでに〝交流〟が確認されております」

「……ほほう」

その声には、明らかな愉悦が滲んでいた。

「それは面白い。

余も、俄然興味が湧いてきたぞ」

「いかがなさいますか?」

「〝召還〟の前に……

少しばかり〝余興〟を楽しんでも良かろう」

「なるほど。それは、実に良い案でございますな」

「ただし――」

声が低く、冷たくなる。

「〝人間〟とはいえ、〝希望の光〟だ。

無闇に弄び、〝召還〟に支障を出すな」

「左様でございます。

その点は、十分に心得ております」

「ふふふ……」

含み笑いが、空間を満たす。

「〝あいつ〟が、どう出るか……
実に、見ものではないか」

「まったくでございますな」

そうして――
影たちは、音もなく、痕跡すら残さずに散っていった。
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