とある魔女の物語

よく来たわね

私は森野 楓。

前は『市原 胡桃』って言う名前だったみたい

「だったみたい」って言うのは

私には、その時の記憶がないから

『森野 楓』って言う名前をくれたのは私の師匠

その師匠との出会いは凄く突然

道を歩いてた私に声をかけて来たのが師匠だった

「貴女……才能有るわよぉ」

師匠がそう言った後

見知らぬ建物の中にいきなり移動してた

多分その時の記憶もないんだと思う

とにかくその建物の中で

師匠に教えて貰った事

それは〝魔法〟だった

頭が可笑しいとか思われそうだけど本当の事

炎や、宝石を手から出したり

見てて飽きないものばかりだった

教えて貰って、自分が出来るようになって

夢中で吸収していった

時間が経過するのを忘れる程に

「そういえば、貴女の名前を聞いて無かったわね

なんていうのかしら?」

師匠がいきなりしてきた質問

普通の人間なら直ぐに答えられる

もっとも簡単な質問に

私は答えられなかった

「あらあら、名前を忘れちゃったのね?」

師匠はクスクスと妖艶に笑いながら

「じゃあ、これから『森野 楓』って名乗りなさい」

そう言って貰って

それ以降、この名前を名乗ってる。

どうしてこの名前なのかは分からないけど

私は気に入っている

師匠が付けてくれた大切な名前だから……

あの時迄はただ単にそう思ってた

今は心の底から感謝してる

だって、この名前は……

師匠が〝人間〟だった頃の名前だから

魔法を一通り教えて貰った時の事

他にも教えて貰った中の1つ

〝魔女の秘密〟

魔女って不老不死って言うイメージがあるけど

実際には歳を取らないだけらしくて

魔女にも〝寿命〟があるって

どうやら魔女達にも個人差があって

一概に何年とかって言えないみたいなんだけど

〝寿命〟は自分達で感じ取る事が出来るんだって

〝寿命〟を感じ取った魔女達は

〝後継者となるべき人間〟を探す

私が師匠に選ばれた様に

そして、〝魔法〟を教えていく

その時、〝選ばれた人間〟は〝記憶〟を無くしていく

私が人間の時の記憶を無くして

自分の名前を言えなかったように

記憶を無くさせた後

師匠魔女の好きな名前を与える

師匠魔女の人間の頃の名前を与えるのは

ごく稀な事なんだって聞いた

人間だった頃の名前を教える事も余りないって

後は……師匠魔女達は〝寿命〟を迎えた時の話ね

貴女にも、関係有るし

これを聞けばどうして記憶が無くなるのか

どうして人間だった頃の名前を付けないのか

これから何を体験するのか

その全てが分かるわ

貴女にその覚悟があるかしら……?

では、話すわね
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