フォリーシスカルライナー

ここは、ヒュマンド族の暮らす小さな村――オトピチュ。

オトピチュは、キスンド島と呼ばれる小さな島に存在する、唯一の集落だった。

エルナは、この村で生まれ育った。

肩まで伸びたランジュ石色の髪に、青い瞳。

ランジュ石とは宝石の名で、

黄緑よりも薄く、明るい色をしている。

幼い頃から、祖父母は子守唄のように

戦争の話を語って聞かせてくれた。

――なぜ争いは起きたのか。

――なぜ、理由も分からぬまま終わったのか。

繰り返し聞かされたその話は、

いつしかエルナの胸に、消えない疑問を残した。

原因を知りたい。

その思いは、成長とともに強くなっていった。

だが、戦争の終結直後から、

世界にはデクサルザが現れるようになった。

それ以来、村の外へ出ることは禁忌とされている。

デクサルザ――

その名は、「邪悪なもの」を意味する言葉だった。

そんなエルナの傍には、

いつもトリークがいた。

短く切り揃えられた灰色の髪。

落ち着いた黒い瞳を持つ青年。

二人は幼なじみであり、

互いに将来を約束した――婚約者でもある。

ある日、そのトリークに知らせが届いた。

ヒュマンド族の首都、

アリスカロンド地方への召集。

理由は単純だった。

トリークが成人を迎えたからだ。

ヒュマンド族には、

成人すると必ず首都へ赴き、

軍に配属されるという掟がある。

アリスカロンドは、

キスンド島の南に広がるコルステット大陸――

そのほぼ中央に位置する地域だ。

かつてフォリーシスの中心となり、

今では再び繁栄を取り戻している。

――首都に行けば、何か分かるかもしれない。

エルナはそう考え、

トリークと共に行く決意をした。

幸い、婚約者や配偶者の同行を禁じる戒律はない。

村人たちも反対することなく、

二人の旅立ちを受け入れてくれた。

出立は、一週間後。

それまでの間、

二人は長老たちから、様々な教えを受けることになった。


---

長老の家を訪れると、

老いた者たちは静かに語り始めた。

「お前たちに、コリースについて詳しく説明して進ぜよう」

「まず意味じゃ。コリースとは『聖なる力』を指す言葉じゃ」

「そして種類。コリースには七つの系統がある」

長老は指を折りながら続ける。

「ファグ(炎)、
ウロド(水)、
デーム(風)、
ノトン(土)、
クェル(雷)、
リール(光)、
ヤウン(闇)じゃ」

「コリースは、デクサルザに対して、

あらゆる危害を与えることができる」

トリークが、首をかしげて尋ねた。

「武器による攻撃じゃ、効かないんですか?」

「そうじゃのう……」

長老は少し考え込み、

「トリーク、お前ほどの力があれば、

通用する場合もあるじゃろう」

「じゃあ俺は、武器で攻撃するぜ」

即座に言ったトリークに、

長老は嗜めるように言った

「まあ、両方を応用するのも一つの手じゃ。

だが今は、静かに聞きなさい」

「……はい」

トリークは素直に黙った。

「それにウロド(水)、デーム(風)、リール(光)は

ジャルム(回復)としても使える」

エルナが一歩前に出る。

「それは、アイテムが無くなった時のためですね」

「ふむ、そうじゃ」

長老は満足そうに頷いた。

「明日は、さらに詳しく教えるとしよう」

「「ご指導ありがとうございました!
明日もよろしくお願いします!」」

二人は深く頭を下げ、

長老の家を後にした。

その胸に、旅立ちへの期待と不安を抱えながら。
4/31ページ
スキ