主任の名前が変更できます。
1話目 紫陽花と渡り鳥
主任の名前を設定する
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
病室のベッドで待っていたお父さんは、私たちを見るなり、顔色を変えた。
「どうした、二人とも。なにかあったのか」
「俺たちのお友達になれるかもしれなかった子が、緊急手術になっちゃった……」
「きっと、大丈夫だって信じたいんだけど。可不可、死んじゃうかもしれないって思うと怖くて」
お父さんは黙って私たちの話を聞いた後に、腕を組んだ。珍しく渋い顔をしていた。いつもは気楽で、苦しみとか不安とは無縁そうな顔をしているのに。
「可不可くんの可能性を信じてあげるんだ」
「可不可の、可能性……?」
頷いたお父さんの顔には、人生の経験が刻まれた小じわがあった。普段は気づかないくらい目立たなかったのに、この時はなぜか目についた。
「人はね、簡単には死なないんだよ。人間の生命力は驚くほどに強い。彼も例外ではないさ」
「そうなの?」
「そうだよ。今は可不可くんの生還を信じてあげるんだ」
私の問いかけに、お父さんは力強く返す。その言葉が、どれだけ心強かったか。
「椛、楓。あの子と、友達になりたいんだろう。待ってあげなさい。そして、目覚めた時にこう言うんだ。『友達になろう』って」
「うん!」
私とお兄ちゃんの声が自然と重なった。たまに、私とお兄ちゃんは言動が同一人物かと思えるくらい一致する。まるで、別世界では双子だったみたい。この時も例外ではなかった。
「私は、いつまでも幸せな毎日が続くと思ってた。可不可といつものように会って、釣りを眺めて、交換日記できるんだって、ずっと信じてた」
拳を握る。力のあまり、指の皮と皮が擦れる音がした。
「でも、それが当たり前じゃないんだって分かった。嫌だよ、このまま友達になれないなんて」
「俺も。友達になれないなんて、嫌だ」
お兄ちゃんは眼のふちに涙を溜めていた。震えを我慢した声は、変に力んでいる。お兄ちゃんだからって、我慢しなくていいのに。
「じゃあ可不可くんの手術が終わったら、お見舞いをしよう。ひょっとしたら、俺の方が先に退院してしまうかもしれないけど。もうけがは治りかけているから」
お父さんの足を指さす。私たちにはわかんないけど、もう骨はくっついたのかな。
「可不可くんのお父さんとは連絡を交換しているから、なにかあったらすぐ連絡するように伝えるよ」
「ありがとう!」
私とお兄ちゃんは、お父さんの手をぎゅっと握った。
それから、私たちは毎日祈り続けた。可不可が生きて帰ってきますように。生きて帰ったら、めいいっぱい遊ぶんだ。もう後悔なんてしないくらいに。未来は不確定だって分かってる。だけど、希望を捨てずにずっと一緒に居続けることを願ったっていいじゃないか。
祈り続けた数日間はまるで真夜中のように暗く、先が見えなかった。それでも私たちは朝の訪れを信じながら、ずっと可不可を待ち続けることを辞めなかった。
続く
「どうした、二人とも。なにかあったのか」
「俺たちのお友達になれるかもしれなかった子が、緊急手術になっちゃった……」
「きっと、大丈夫だって信じたいんだけど。可不可、死んじゃうかもしれないって思うと怖くて」
お父さんは黙って私たちの話を聞いた後に、腕を組んだ。珍しく渋い顔をしていた。いつもは気楽で、苦しみとか不安とは無縁そうな顔をしているのに。
「可不可くんの可能性を信じてあげるんだ」
「可不可の、可能性……?」
頷いたお父さんの顔には、人生の経験が刻まれた小じわがあった。普段は気づかないくらい目立たなかったのに、この時はなぜか目についた。
「人はね、簡単には死なないんだよ。人間の生命力は驚くほどに強い。彼も例外ではないさ」
「そうなの?」
「そうだよ。今は可不可くんの生還を信じてあげるんだ」
私の問いかけに、お父さんは力強く返す。その言葉が、どれだけ心強かったか。
「椛、楓。あの子と、友達になりたいんだろう。待ってあげなさい。そして、目覚めた時にこう言うんだ。『友達になろう』って」
「うん!」
私とお兄ちゃんの声が自然と重なった。たまに、私とお兄ちゃんは言動が同一人物かと思えるくらい一致する。まるで、別世界では双子だったみたい。この時も例外ではなかった。
「私は、いつまでも幸せな毎日が続くと思ってた。可不可といつものように会って、釣りを眺めて、交換日記できるんだって、ずっと信じてた」
拳を握る。力のあまり、指の皮と皮が擦れる音がした。
「でも、それが当たり前じゃないんだって分かった。嫌だよ、このまま友達になれないなんて」
「俺も。友達になれないなんて、嫌だ」
お兄ちゃんは眼のふちに涙を溜めていた。震えを我慢した声は、変に力んでいる。お兄ちゃんだからって、我慢しなくていいのに。
「じゃあ可不可くんの手術が終わったら、お見舞いをしよう。ひょっとしたら、俺の方が先に退院してしまうかもしれないけど。もうけがは治りかけているから」
お父さんの足を指さす。私たちにはわかんないけど、もう骨はくっついたのかな。
「可不可くんのお父さんとは連絡を交換しているから、なにかあったらすぐ連絡するように伝えるよ」
「ありがとう!」
私とお兄ちゃんは、お父さんの手をぎゅっと握った。
それから、私たちは毎日祈り続けた。可不可が生きて帰ってきますように。生きて帰ったら、めいいっぱい遊ぶんだ。もう後悔なんてしないくらいに。未来は不確定だって分かってる。だけど、希望を捨てずにずっと一緒に居続けることを願ったっていいじゃないか。
祈り続けた数日間はまるで真夜中のように暗く、先が見えなかった。それでも私たちは朝の訪れを信じながら、ずっと可不可を待ち続けることを辞めなかった。
続く