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1話目 紫陽花と渡り鳥
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名前も呼ばれない、友人未満の関係。もう少し、あと少しだと思うのに、可不可は一向に私の名前を呼んでくれなかった。
カセットテープは交換し続けてくれるから、仲良くはしようとしてくれているんだよね。お父さん、けがを治すのはゆっくりでいいからね。心の中でそっと呟いた。
せめてずっとこのままの関係が続けば良いのにと思っていた矢先、幸福がもたらされた。
「明日来てくれたら、釣り、教えてあげるよ」
小さなようで大きな一歩。可不可から渡されたカセットテープに収録された声が、まるで宝物のようにきらめいた。収録したカセットテープを、お兄ちゃんにも聴かせてあげた。
「やった。きっとこれって、俺たちに心を開いてくれてるって思ってもいいんだよな」
「うん。ねえ、楽しみだね。明日、可不可に会えるって思ったらわくわくしてきちゃった」
「そうだね。明日は絶対休まないように、今日は早めに寝よう」
あんなにわくわくした日は初めてだったかもしれない。ただし、天国は地獄に隣り合っていた。そんなことも知らず、私たちは脳天気に明日を待ちわびていたのだ。
「可不可・・・・・・手術しているの?」
病院の受付のお姉さんが気まずそうに頷いて、私はうなだれた。
「大丈夫。きっとなんとかなるよ。だよね? お姉さん」
お兄ちゃんが尋ねると、
「今、お医者さんが頑張って治療しているからね。可不可くんは一生懸命頑張っているから、2人は応援してくれると嬉しいな。今日は会えないから、無事を祈っていてね」
とお姉さんは努めて笑顔で答えてくれた。「うん」ではないんだ。子供ながらに、それが何を意味していたか分かった。私が立ち尽くしていると、お兄ちゃんが私の手を握った。
「椛、大丈夫。きっとなんとかなるさ。お父さんが言ってたよ。この病院は優秀なお医者さんが多いって」
「そうだよね。きっと、なんとかなる」
「うん、じゃあ、お父さんの病室に行こう。お父さん、椛のことを首を長くして待ってるかもよ」
お兄ちゃんは、いつでもお兄ちゃんだった。こんな時でも気を遣わせるなんて、いけないな。
「うん。お父さん、寂しがり屋だからね」
今日の病院はひどく灰色に見える。影の色も濃く見えて、私の心に暗い悲しみが迫りくる。それを昇華できないまま、私は暗い病棟を兄と一緒に歩いた。
続く
カセットテープは交換し続けてくれるから、仲良くはしようとしてくれているんだよね。お父さん、けがを治すのはゆっくりでいいからね。心の中でそっと呟いた。
せめてずっとこのままの関係が続けば良いのにと思っていた矢先、幸福がもたらされた。
「明日来てくれたら、釣り、教えてあげるよ」
小さなようで大きな一歩。可不可から渡されたカセットテープに収録された声が、まるで宝物のようにきらめいた。収録したカセットテープを、お兄ちゃんにも聴かせてあげた。
「やった。きっとこれって、俺たちに心を開いてくれてるって思ってもいいんだよな」
「うん。ねえ、楽しみだね。明日、可不可に会えるって思ったらわくわくしてきちゃった」
「そうだね。明日は絶対休まないように、今日は早めに寝よう」
あんなにわくわくした日は初めてだったかもしれない。ただし、天国は地獄に隣り合っていた。そんなことも知らず、私たちは脳天気に明日を待ちわびていたのだ。
「可不可・・・・・・手術しているの?」
病院の受付のお姉さんが気まずそうに頷いて、私はうなだれた。
「大丈夫。きっとなんとかなるよ。だよね? お姉さん」
お兄ちゃんが尋ねると、
「今、お医者さんが頑張って治療しているからね。可不可くんは一生懸命頑張っているから、2人は応援してくれると嬉しいな。今日は会えないから、無事を祈っていてね」
とお姉さんは努めて笑顔で答えてくれた。「うん」ではないんだ。子供ながらに、それが何を意味していたか分かった。私が立ち尽くしていると、お兄ちゃんが私の手を握った。
「椛、大丈夫。きっとなんとかなるさ。お父さんが言ってたよ。この病院は優秀なお医者さんが多いって」
「そうだよね。きっと、なんとかなる」
「うん、じゃあ、お父さんの病室に行こう。お父さん、椛のことを首を長くして待ってるかもよ」
お兄ちゃんは、いつでもお兄ちゃんだった。こんな時でも気を遣わせるなんて、いけないな。
「うん。お父さん、寂しがり屋だからね」
今日の病院はひどく灰色に見える。影の色も濃く見えて、私の心に暗い悲しみが迫りくる。それを昇華できないまま、私は暗い病棟を兄と一緒に歩いた。
続く