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1話目 紫陽花と渡り鳥
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正直、魚はあまり詳しくなかった。でも、可不可と一緒に居る時間がなんだか楽しくて、ずっとそばにいたかった。相変わらず可不可は冷たかったけど。
ある日、私はカセットレコーダーの交換日記を思い立った。カセットレコーダーは不思議だ。吹き込んだ人の心情がまざまざと伝わる。それに、直接言いづらいことでも、なぜかカセットレコーダーに吹き込むときは素直になれる。魔法みたいで素敵な道具。私は、自分からそっと色んな事を吹き込んだ。家族のこと、自分のこと。録音しているとき、お兄ちゃんや母が乱入することもあった。だけど、あえてそのまま渡した。等身大の温度感。自分がどんな人間で、どんな家庭で生まれ育ったか。それを伝えたかった。
きっと、自分から心から開いていけば、可不可も心を開いてくれるかも知れない。
カセットレコーダーに言葉を吹き込んだ次の日、私が渡すと可不可は不思議そうな顔をした。よく理解できないって顔だね。分かるよ。
もしも聴かず、交換日記を拒否したら、また別のアプローチで仲良くなろう。交換日記は、自己開示とお互いの続行の意思がなければ成立しない。たとえ声が乗り気で無くとも、交換日記が返ってきたら、仲良くなろうとしている証だと思う。
無視されたら、どうしよう。そんなドキドキは杞憂だというように、次の日に可不可はいつもの釣り場でカセットテープを渡してくれた。
「はい、これ。交換日記のやつ」
「えっ、嬉しい。ありがとう」
おずおずと渡されたカセットレコーダーに喜ぶと、可不可は黙って釣り糸を垂らした。ひょっとして、期待しても良い? もっと仲良くなれるって、考えても良い?
ドキドキしながらカセットを聞くと、丁寧に私の交換日記に答えてくれる可不可の声が流れてきた。ぽつぽつと、雨が降り始める小雨のような声だった。
「……次の日も会いに来てほしいな」
ポロリとこぼれた本音は、弱々しく自信なさげで。その声に、次の朝が待ち遠しくなった。朝になれば会える。駆け寄って、また交換しよう。開き始めた心の扉に希望を持って、私はまた録音を始めた。
「交換日記、返してくれてありがとう! 私のお父さんを心配してくれてありがとう。多分、丈夫だからすぐまた旅に出られるよ。その時は、お土産をあげるね」
この日々が、いつまで続くか分からない。それでも、可不可との日々を大切にしたいと思っていた。
ある日、私はカセットレコーダーの交換日記を思い立った。カセットレコーダーは不思議だ。吹き込んだ人の心情がまざまざと伝わる。それに、直接言いづらいことでも、なぜかカセットレコーダーに吹き込むときは素直になれる。魔法みたいで素敵な道具。私は、自分からそっと色んな事を吹き込んだ。家族のこと、自分のこと。録音しているとき、お兄ちゃんや母が乱入することもあった。だけど、あえてそのまま渡した。等身大の温度感。自分がどんな人間で、どんな家庭で生まれ育ったか。それを伝えたかった。
きっと、自分から心から開いていけば、可不可も心を開いてくれるかも知れない。
カセットレコーダーに言葉を吹き込んだ次の日、私が渡すと可不可は不思議そうな顔をした。よく理解できないって顔だね。分かるよ。
もしも聴かず、交換日記を拒否したら、また別のアプローチで仲良くなろう。交換日記は、自己開示とお互いの続行の意思がなければ成立しない。たとえ声が乗り気で無くとも、交換日記が返ってきたら、仲良くなろうとしている証だと思う。
無視されたら、どうしよう。そんなドキドキは杞憂だというように、次の日に可不可はいつもの釣り場でカセットテープを渡してくれた。
「はい、これ。交換日記のやつ」
「えっ、嬉しい。ありがとう」
おずおずと渡されたカセットレコーダーに喜ぶと、可不可は黙って釣り糸を垂らした。ひょっとして、期待しても良い? もっと仲良くなれるって、考えても良い?
ドキドキしながらカセットを聞くと、丁寧に私の交換日記に答えてくれる可不可の声が流れてきた。ぽつぽつと、雨が降り始める小雨のような声だった。
「……次の日も会いに来てほしいな」
ポロリとこぼれた本音は、弱々しく自信なさげで。その声に、次の朝が待ち遠しくなった。朝になれば会える。駆け寄って、また交換しよう。開き始めた心の扉に希望を持って、私はまた録音を始めた。
「交換日記、返してくれてありがとう! 私のお父さんを心配してくれてありがとう。多分、丈夫だからすぐまた旅に出られるよ。その時は、お土産をあげるね」
この日々が、いつまで続くか分からない。それでも、可不可との日々を大切にしたいと思っていた。