星原のセラフィム(心向)

「太緒と千弥のツーショット! 路上ライブの後に撮らせてもらった🥺」

無邪気なSNSの投稿がオレの心をえぐる。ちぃの隣には、短髪の黒髪の男の子が写っていた。世界線が違ったら、オレが隣にいたかもしれないのに。胸がじんと痛む。「かもしれない」を追求してもきりはないけど、どうしても考えてしまう。オレがちぃとダンスで会場を盛り上げることなんて、夢物語なのかな。
なんとなく、ちぃが今どうしているか気になってSNSで「千弥」と検索したら、こんな投稿が出てきてしまった。リプには「まじで尊い」とか「この2人神すぎ」とかがあった。誰も悪くないけど、なんだか胸がモヤモヤする。ちぃの隣に立つ彼は太緒くんというらしい。
太緒……か。気になったオレは、色々太緒についてパブサしてみた。
刑務所のサバイバルオーディションで合格したメンバーで、今はちぃと仲が良いみたい。経歴は不明で、窃盗容疑で収監されていたものの、冤罪だったらしい。
ファンからは主に、「Ev3nsの良心」、「常識人」、「近所のお兄ちゃん」と呼ばれているみたいだ。冤罪だったのも頷けるくらいのホワイトな評判だった。
ちょっとくらい悪かったら良いのに。
黒い感情が鎌首をもたげる。ダメだ! こんなこと考えちゃいけない。オレは必死に思いを振り払った。人の欠点を願うような大人になっちゃいけないって、パパ言ってたじゃん。

不意に、SNSでファンがアップしたEv3nsのライブ動画が目に入った。ちぃと太緒の呼吸が合ったパフォーマンス。太緒はダンス経験があるのだろうか。素人であれば、短期間でよくここまで仕上げられたものだ。やっぱり、ちぃから教えて貰ったのかな。

……ああもう! オレはSNSを閉じて、スマホで録画しておいた今日のダンス動画を開いた。今日のオレのダンス、何が悪かったか振り返りしなきゃ。
ダンスを教えてくれたちぃはもうオレの傍にはいない。だったら、自分でダンスを磨かなきゃ。あの2人に負けないくらい、良いパフォーマンスを皆に披露してみせる。オレは付箋まみれのノートを開いて、メモを取り始めた。

もし、番組でEv3nsとダンス対決をすることになったらどうなるかな。オレは想像してみる。スポットライトの下、挑戦的な眼差しを2人は向けてくれるだろうか。
オレはその日を楽しみに待っている。だから、2人も頑張って欲しいな。期待を胸に、ノートに走らせたペンの速度が上がった。
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