クリームパン争奪戦(あさって通訳マン)
「季肋ゥ! ちょっと昼休憩のクリームパン争奪戦に付き合ってくれね?」
1時間目と2時間目の間の10分休憩の時間に、あく太が季肋の席にやって来た。季肋の肩を気軽にぽんと叩く。
「いい、けど……なんで?」
季肋が眠たげな目をあく太に向けた。休日なら、まだこの時間はまだ布団に潜っていたい時間だった。すると、照れたようにあく太は頭をかいた。
「いやぁ! 実は難しい数学の課題を宗氏に手伝って貰ってさ。そのお礼に宗氏の好きな購買のクリームパンを買ってこようってわけ。自分たちの分も買おうぜ」
購買のクリームパンといえば、毎日争奪戦が起きることで有名だ。確か、販売開始10分で売り切れるのは日常茶飯事だったはずだ。あす高の名物パンであり、時には先生も闘いに参戦するらしい。
「そう……なんだ。じゃあ……、俺で……良かったら……協力……する」
実は季肋もクリームパンは前々から気になっていた。人混みが苦手であったため、争奪戦に参加するのを諦めていたのだ。いわば不戦敗である。
しかし、あく太がいるならば、人混みの中でも大丈夫かもしれない。
季肋が頷くと、あく太はガッツポーズした。
「イエーイありがとう。季肋の身体、デカくて争奪戦に強そうだからマジ助かる!」
「役に立てるか分からない、けど。頑張る」
またとない機会だった。季肋としては、噂に聞く極上のクリームパンに舌鼓を打ってみたい気分だった。
「よーし! じゃあ気合い入れようぜ! えいえいおー!」
「おー」
あく太は明るいかけ声と共に、派手に拳を天に掲げた。季肋は小さく呼応の声を出しながら、控えめに拳を上げてみせる。教室の片隅で、2人の結束力が高まった。
そんな様子が面白くなかったのか、ここに2人の濁った目をした少年たちがいた。
「はぁ。うるせえな」
木原は怠そうにため息をついた。遠目から季肋たちの様子を眺め、金田は嘲りの笑いを浮かべる。
「低い等級のくせに、あのクリームパンを食べようとか生意気だよな。あれ、殆ど高い等級のやつらがパシりを使って買ってんのに」
金田の言葉には、侮蔑の響きがあった。唐突に、良いことを思いついたというように、木原は指を鳴らした。
「そうだ。面白そうだし、俺たちもパシり使って、あいつらからクリームパンを奪っちまおうぜ」
木原の企みに、金田はクククと笑った。端整な顔立ちが悪魔のように歪んだ瞬間だった。
「お、良いね。アイツ使おうぜ」
金田は同調してから、隣の席の気弱な黒髪の少年に声をかけた。
「おい、黒川。話があるんだけどよ」
黒川は目も合わせず、黙って身体を震わせていた。
続く
1時間目と2時間目の間の10分休憩の時間に、あく太が季肋の席にやって来た。季肋の肩を気軽にぽんと叩く。
「いい、けど……なんで?」
季肋が眠たげな目をあく太に向けた。休日なら、まだこの時間はまだ布団に潜っていたい時間だった。すると、照れたようにあく太は頭をかいた。
「いやぁ! 実は難しい数学の課題を宗氏に手伝って貰ってさ。そのお礼に宗氏の好きな購買のクリームパンを買ってこようってわけ。自分たちの分も買おうぜ」
購買のクリームパンといえば、毎日争奪戦が起きることで有名だ。確か、販売開始10分で売り切れるのは日常茶飯事だったはずだ。あす高の名物パンであり、時には先生も闘いに参戦するらしい。
「そう……なんだ。じゃあ……、俺で……良かったら……協力……する」
実は季肋もクリームパンは前々から気になっていた。人混みが苦手であったため、争奪戦に参加するのを諦めていたのだ。いわば不戦敗である。
しかし、あく太がいるならば、人混みの中でも大丈夫かもしれない。
季肋が頷くと、あく太はガッツポーズした。
「イエーイありがとう。季肋の身体、デカくて争奪戦に強そうだからマジ助かる!」
「役に立てるか分からない、けど。頑張る」
またとない機会だった。季肋としては、噂に聞く極上のクリームパンに舌鼓を打ってみたい気分だった。
「よーし! じゃあ気合い入れようぜ! えいえいおー!」
「おー」
あく太は明るいかけ声と共に、派手に拳を天に掲げた。季肋は小さく呼応の声を出しながら、控えめに拳を上げてみせる。教室の片隅で、2人の結束力が高まった。
そんな様子が面白くなかったのか、ここに2人の濁った目をした少年たちがいた。
「はぁ。うるせえな」
木原は怠そうにため息をついた。遠目から季肋たちの様子を眺め、金田は嘲りの笑いを浮かべる。
「低い等級のくせに、あのクリームパンを食べようとか生意気だよな。あれ、殆ど高い等級のやつらがパシりを使って買ってんのに」
金田の言葉には、侮蔑の響きがあった。唐突に、良いことを思いついたというように、木原は指を鳴らした。
「そうだ。面白そうだし、俺たちもパシり使って、あいつらからクリームパンを奪っちまおうぜ」
木原の企みに、金田はクククと笑った。端整な顔立ちが悪魔のように歪んだ瞬間だった。
「お、良いね。アイツ使おうぜ」
金田は同調してから、隣の席の気弱な黒髪の少年に声をかけた。
「おい、黒川。話があるんだけどよ」
黒川は目も合わせず、黙って身体を震わせていた。
続く
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