境界の庭
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「それ四天宝寺の制服よな?」
そう言いながらタオルで頭をガシガシと拭いて、モケット生地の椅子に座る。
『ハイ…あのここって』
「昔から行きつけやねん。ここの白玉ぜんざいは絶品やで」
雨でびしょ濡れになった服は、1枚のハンカチでどうにかなるはずもなく
財前光似の彼は少し考えた末、商店街の中の喫茶店に私を連れてきた。
…ここは私の行きつけでもあるお店だ。
「おぉ、光くん。どうしたんやそんな濡れて」
「っす、ちょっと捨て猫拾ったら濡れたっすわ」
「捨て猫ぉ?…もしかしてその後ろの、可愛いお嬢ちゃん?」
60代の老夫婦が経営していた、古き良き喫茶店。
つい最近来た時より、内装も変わっていて
おじさんとおばさんの顔はシワが深くなって、背中も少し丸くなっている気がした。
「お嬢ちゃん!ホンマに着替えんでええの?孫が置いてる服で良かったら貸したげるよぉ」
いつもちよちゃんと呼んでくれていた、おばさん。
自分の中ではつい最近だったつもりなのに、随分時間が経って忘れられたようだった。
『…大丈夫です、ありがとうございます』
そう?と笑顔で、私の近くに電気ストーブを置いてくれた。
優しくて、温かい空間のはずなのに
どこか1人ぼっちな気がして、心が凍えるのを感じた。
「…で、なんで俺の名前知っとんの」
『ごめんなさい、知り合いに似てたけど…その子私の1つ下だし、勘違いだったっていうか…』
言い訳がましく俯く私に、彼は眉間に皺を寄せながらじっと見つめる。
『まさか…とは思うんですけど』
「まさか?」
『光って…財前光、じゃないですよね』
「…」
少しの沈黙を経て、彼は口を開く。
「お前、ほんまに誰?」