中学生編
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礼生がサッカー部のマネージャーになってから、あいつは一度だって“練習”には参加しなかった。
いつもマネージャー業をテキパキとこなしてくれていたけど、サッカーしたいって言ってくれなかった。
早く、一緒にサッカーしたいのに。
虎丸は、
「あいつ出前の帰りとかは練習付き合ってくれるんですけどね」
って言って、苦笑い。
なんか羨ましいっていうか、悔しいっていうか。
なんかわかんないけど、ヤキモチ。
なんでだろう。
俺とも一緒に練習してほしいだけなのにな。
今日のミーティングで、俺はフットボールフロンティア2連覇という目標をみんなに伝えた。
みんなも気合い入ってて、今年も優勝できそうなそんな気がした。
礼生の表情も、いつもより引き締まった顔してたな。
(…あいつのサッカー、みたいな)
そんなことをぼんやり思いながら、ベンチに戻ると秋が重たそうな荷物を持っててとてと歩いてた。
なんか危ないなあって思ってたその時、秋が躓いてバランスを崩した。
「秋っ!」
反射的に秋を庇って、荷物の下敷きになる。
不意に、嫌な感じがした。
「え、円堂くん!ごめんなさい、大丈夫?」
「秋の方こそ、怪我ないか?」
「私は大丈夫…円堂くんが庇ってくれたから。でも、円堂くん、その腕…」
秋に言われて自分の腕を見た。とてつもなく酷い色。
保健室の先生に診てもらったら、病院に行けって言われた。
恐らく、腕を捻っているかもしれないって。
ヤバイな…予選の一回戦は一週間後。
「ごめんなさい、円堂くん」
「秋の所為じゃないって。秋に怪我がなくてよかった」
『木野先輩が無傷だったのはよかったと思いますが、それで貴方が負傷というのは感心しませんね』
「…レオくん」
『木野先輩も、あの時置いといてくださいと言ったじゃないですか。勝手に、無理をしてもらっては困ります。そういう力仕事は男手に任せておけばいいんですから』
礼生は心配そうに秋を見ながら、そう言った。
秋も「次からはお願いするね」って、礼生と約束した。
ただ今この状況で、一番の問題は…
「このままでは試合にキーパーがいない状態になってしまう、ということだな」
鬼道は眉間に皺を寄せた。
「ごめんな、みんな」
「いや、お前は間違ってない。木野だって、少し頑張りすぎただけだ」
鬼道、優しいこと言うようになったよな。
ふっと微笑んでそう言うと、また何かを考え出す。
そこで甲高い声が俺達の思考を遮る。虎丸の声だった。
「ひとつ、方法があります!」
「なんだ?」
豪炎寺が虎丸に続きを促した。虎丸はにっと笑って、礼生を見る。
礼生#は何かに気付いたのか、目を逸らした。
「レオがキーパーすればいいんですよ!円堂さんの怪我が治るまではそれしかないです!」
『…やめてください、トラ』
「だけど!このままじゃ、キーパーいないまま試合しなきゃいけないんだよ!?」
『だからと言って、私にキャプテンの代わりが務まるとは限らないでしょう』
「いいえ!そんなことはあ、ありません!」
喧嘩腰の二人の言葉を遮るように、目金が声を上げた。
いつの間に出てきたんだろう…こいつ。
『目金先輩、何を…』
「…“獅子王”のレオと呼ばれた君ならば、今この絶対的不利な雷門中を勝利に導けるはずです!さあ、円堂くんどうします?」
目金は俺を見る。
ああ、そっか。
あとはキャプテンが決めろってことなんだろ。
「礼生」
『…嫌です』
「…この試合だけでいい、出場してくれないか」
『私はっ…』
目が合った。
礼生は悔しそうに顔を歪める。
『…どうして、私なんかが…』
そうぽつりと消えそうな声で呟いた。
「ゴールを、守ってくれないか?」
『……』
「…レオ、」
『………わかりました』
今にも泣きそうなヒドイ顔でそう言った。
胸が苦しくなった。
(本当に泣き出しそうだったから、見ててとても苦しくなった。でも、それでも、お前の本気が見てみたいって…ダメなことなのかな)
※加筆修正190817