中学生編
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私が、サッカー部に無理矢理入部させられてから数日。
すっかり、先輩方は馴染んでくれている。
当初はそこそこ迷惑だったものの、一度やると決めたことを投げ出すのはもっと不快だ。
毎日、マネージャーの業務を投げ出すことなくやっていると、先輩方はすんなりと仲間だと認識してくれたのだ。
『…音無先輩、代わりましょうか?』
「これくらい大丈夫よ」
『いえ、そんな重たいもの運ぶ暇があったらデータをまとめた方がいい。それは私がやっておきますので』
「あ、ありがとう」
『それでは失礼します』
何故、この部はそんなことをさも当たり前かのようにやってのけるのか。
いくらマネージャーでも、重たいクーラーバックを女生徒一人で持っていくには少々厳しいものがあるだろうに。
音無先輩の代わりに、クーラーバックを抱えてグラウンドのベンチに運んだ。
「あら?音無さんに頼んだと思ったけど」
『運ぶのに手間取ってましたので、代わりに私が運ぶことにしました』
「やっぱり…一人で運ぶのはちょっと無理だったみたいね」
木野先輩が苦笑する。
恐らく、音無先輩が張り切って引き受けたのだろう。
できないのなら、安請け合いをする必要はないと思うのだが…まあ、するな、というには少々無理な人種だ。
トラといい勝負、といったところか。
「すっかり馴染んだなあ」
呑気な声が背後からして、私は振り返りキッと睨みつけた。
『あなたが連れてきたのでしょう、キャプテン』
人を無理矢理サッカー部に入部させておいて、まったく呆れたものだ。
皮肉を込めて言った「キャプテン」という言葉も、あまり意味を成していないに違いない。
「元々真面目だもんなあ」
『全く私の話を聞いていませんね』
「しかも、機械的」
『…あなたの耳は飾りですか』
こうした押し問答も、ほぼ恒例になりつつある。
その所為か、誰も止めようとはしないし、誰も割って入ってこようともしない。
ややこしくないから、構わないものの…話の通じない相手と話をするのは疲れるもので。
『…サイアクですよ、本当に』
私の口癖になりつつあったこの言葉。
この言葉を言うと、いつも木野先輩が苦笑する。
私だって、最初からこの男を邪見に思っていたわけではない。
今も、邪見には思っていない。
ただ…私には、縁のない人だと思っていた。
いくらトラが世界選抜だったとしても、私はしがない一般人で、その選手の方々に面識を持ってもらえるなんて思っていなかった。
だから、わざと邪見にする。
現実味が沸かないから。
何より、いつか終わる夢なのではないかと…思ってならなかった。
『…どうして、私なのでしょうか』
ぽつりと零したその言葉は、誰にも掬われることはなく、グラウンドの足音や掛け声にあっさり掻き消された。
理由は彼しか知らないのだろう。
(ここにいることが、不思議でたまらない)
※加筆修正190817