中学生編
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「あ、危ない!」
音無がそう叫んだも遅く、どがっとぶつかる音がして、どさっと倒れる音がした。
いち早く駆け込んだのは虎丸。
まさか、と思って慌てて駆け寄れば、予想通り。
「レオ!レオ!」
虎丸が肩を揺するも起きる気配がない礼生。
俺は身体が勝手に動いていて、礼生を横抱きにして抱える。
2つ違いとはいえ、同じ中学生のはずなのにものすごく軽い。
女の子、みたいだ…。
「豪炎寺、鬼道、保健室に行ってくる」
「ああ、あとは任せてくれ」
「頼んだぞ」
振動を与えちゃいけないって思うのと、早く保健室に連れてかなくちゃって思うのがおんなじくらい大事に思えて、足早へ保健室に向かう自分がいた。
大したことがなければいいけど。
保健室で、栗松がクリアしそこねた豪炎寺のシュートが礼生の頭にクリーンヒットしたことを説明して、ベッドで休ませてもらうことができた。
恐らく、気絶しているだけだから問題はないだろうって先生は言って氷枕でたんこぶを冷やしてくれた。
「円堂くん、ちょっと見ててあげてくれる?」
「どこか行くんですか?」
「剣道部と柔道部から怪我人みたいだけど、人数が多いみたいだから武道館の方へ行ってくるわ」
「わかりました」
「お願いね」
ぱたん、と保健室の扉が閉まる。
礼生は全然目を覚まさない。
打ち所が悪かったらどうしよう、とか悪いことばっかり頭に浮かんで、大丈夫って自分に言い聞かせての繰り返し。
落ち着かない。
「大丈夫か、礼生…」
無意識にぎゅっと礼生の手を握っていた。
気が気じゃない。
お前に何かあったらなんて、考えたくもない。
『ん、』
「礼生!?」
顔を覗き込むと、ゆっくりと開かれる目。
いつもの暗い紫色の目に俺が映る。
「大丈夫か?痛いとこないか?」
『…きゃぷ、てん?』
「ああ、俺だ」
ほう、と息を吐いて、礼生の手にほんの少しだけ力がこもる。
それから目を細めて俺を見た。
『そんなに、心配しないでください』
「だって!」
『貴方に、そんな顔されると…息ができなくなるんです』
いつもよりもずっと優しい視線で、やわらかい声音で、俺を安心させるみたいに言葉をつないでいく。
俺が、元気づけられてどうすんだよ。
『笑っててくれないと、貴方の元気がもらえないでしょう?』
「礼生…だって、どっか悪いとこあったらどうしようって」
『…そんな不吉な妄想はやめていただけますか』
「心配したんだよ!」
少し強く言ったかもしれない。
はっと、そう思って礼生と視線を合わせると困ったみたいに笑っていた。
あ、俺、すっげえ情けない。
『ご心配を、お掛けしました…本当に一瞬の不注意だったんです』
「…俺もごめん、言い方きつかった」
『わかってますよ、それくらい心配してくれたんだって』
優しい言葉なのに、俺の心をぎゅっと縛りつけるみたいに胸が苦しくなって、気が付いたら涙が止まらなくなってた。
『…なぜ、貴方が泣くんですか』
「わかんねえよ、心配で心配でしょうがなくて、なのにお前に元気づけられて、気遣わせてんのがなんか情けなくて…そしたら、涙止まらなくて、」
『キャプテン』
想いが、涙と一緒に溢れていく。
「俺、お前のこと好きだから、だから、全然止まらないんだ…涙も、気持ちも、全部が、止まってくれないんだ」
もう駄目だ。
溢れだして、止まらない。
絶対に止まらないんだ、好きで好きでしょうがなくて、それが涙になって零れてくる。
『…泣かないで、』
そっと頬に触れる、細い指。
俺の溢れる涙をその指で掬って、拭ってくれた。
『泣かないで、ください…』
「だって、止まんねえんだもん」
礼生に視線を合わせられる。
涙が止まったのと同時に俺が認識したのは、あのやわらかい感触。
『…泣くなって、言ってるでしょう』
「え、あ、えっと、」
『まったく、パニックになってますよ…ほら、深呼吸してください』
今、わけわかんねえことだらけだ。
なんで、キスされたんだろ。
てゆうか、俺どさくさで告白した、よな?
うわ、どうしよう…頭ん中ぐちゃぐちゃだ。
「おおおお俺、言った…よな?」
混乱する俺を見てくすりと微笑った。
『ええ、告白されてしまいましたね』
悪戯っぽくそう言って、俺の手の甲にちゅっと音を立ててキスをされた。
俺は顔から火が出そうなくらい真っ赤になって、俯いた。
不注意だった
(恥ずかしすぎて、死ねる…)