中学生編
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雷門は2回戦、準決勝と順調にフットボールフロンティアの地区予選を勝ち残っていった。
ついに2週間後には帝国との決勝戦。
去年はフットボールフロンティアを優勝したから、負けても本選には出られるけど…でも、どうせだったら勝ちたい。
『…帝国、ですか』
おもむろに礼生が呟く。
そっか、去年の世界大会の時に弁当持ってきてくれたから、佐久間と不動のことは知ってるんだっけ。
「今年は不動がいるんだよなあ」
『去年はいなかったんですか?』
「ん、ああ、あいつ三年にあがる時に帝国に転校したからさ、去年までは鬼道がキャプテンやってたし」
『そう、でしたね』
去年は礼生も虎丸も小学生だったんだよな。
うわ、ランドセル背負ってたのか…。なんか想像つかないかも。
『今、何か、とても失礼なことを考えませんでしたか?』
「え?いや…別に?」
『その割には少々動揺していらっしゃるようですが』
「気のせいだって」
『…まあ、そういうことにしておきましょう』
このままでは埒があきませんしね、と冷たく言い放って礼生は追及をやめてくれた。それにしても素っ気ない。
礼生だしなあ、素であんなベタベタ甘い感じになられるとそれはそれで身が持たない。
じっと礼生に見つめられる。
し、視線が痛い。
でも、ドキドキする。
「何だよ、」
『いえ、特には』
それだけ言うと、すたすたとグラウンドへ入って行ってしまった。
なんだったんだろう、すごくドキドキした。
練習が終わって、風丸たちと喋りながら着替える。
なんだかんだでみんな結構喋るの好きだから、着替え終わっても部室で盛り上がってることも多い。
礼生はだいたいいつも虎丸と一緒。
そうじゃない時は染岡や壁山なんかと話していることが多い気がする。
『あ、』
「どーしたんスか、レオ君」
『…いえ、ノートが1冊見当たらなくて』
「また虎丸に貸してんじゃねえの?」
「え!?俺今朝返したよね?」
『ええ、どうやら教室に置いてきたみたいです』
風丸がははっと笑う。
「珍しいな、お前しっかりしてるのに」
「えー?意外とおっちょこちょいなんですよ、風丸さん」
「とてもそうは見えないでヤンス」
「ああ、そうだな」
『すみません、ノート取りに行くので先に失礼します』
「おう、気を付けてな」
『あ、はい、お疲れ様です』
「お疲れさーん」
ぴしゃ、と部室の扉が閉まった。
本当にあいつが忘れ物とか、珍しい。
というより、ちゃんと持って帰ってるのが偉い。
だいたいみんな置き勉すんのに。
散々部室で騒いだ後、俺は部室の鍵を返しに職員室へ向かった。
鍵を返して、昇降口に戻ると見慣れた金色。
「礼生?」
ぱっと振り返って、目が合う。
『円堂キャプテン、鍵ですか?』
「おう、今返してきた」
俺が靴を履いてる間、少し待っててくれた。
「ノートは見つかったのか?」
『ええ、先程先生に返却し忘れていたと言われまして戻ってきました』
「そっか、見つかってよかったな」
『はい』
目を細めてそう言う礼生。
あれ、なんだか。
俺の勘違いだったら、あれ、だけど。
「なあ、礼生」
『なんです?』
「お前、喋り方優しくなったよな」
『…そんなことないです』
「そうか?前よりずっとやわらかい気するけど」
笑って見せれば、少し照れたように頬を染める。
この間から、そうだけど…少しずつ、いろんな表情を見せてくれてる気がする。
多分、礼生にはその自覚はないんだと思う。
『だとしたら、』
「?」
『貴方の、お陰でしょうね』
「お、俺?」
困ったように微笑んで、夕焼けに染まりかかった空に視線を移した。
『貴方のお陰でまたサッカーできるようになりました、悩みがなくなった分心に余裕ができたのかもしれません』
「……」
『円堂キャプテン、』
俺に向けられたその笑顔はとんでもなく可愛くて、まるでたんぽぽのようにあったかかった。
『ありがとうございます』
「お、おう」
胸のドキドキはどんどん速くなった。
加速する想い
(俺は余裕ない、かも)