男主/影山の息子
FFI本選編
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今日は本選の初試合、イギリス戦。気合い十分にこの間の借りを返す気満々だった。気持ちの上では。身体が焼けるように熱い。何より怠くて動けない。
『しんど、』
部屋の扉を誰かが叩く。体が全くと言っていいほど動かない。返事を聞く前に扉が開く。
「時雨、もう起きないと…って、どうした⁉︎」
『あつい…』
ベッドの上で動けなくなっている僕の額に手を当てる。修也は顔をしかめた。
「すごい熱だぞ、お前…」
『…最悪』
「動けるか?」
『無理、』
「おい、時雨」
本当にこんな熱久しぶりで、風邪なんていつ振りだろう。辛いっていうか、苦しいっていうか。再び、部屋の扉がノックされる。
「豪炎寺くん、時雨くんはって…どうしたの!?」
「木野、」
なかなか出てこない僕を心配して来てくれた秋ちゃんは慌てて、風邪薬を取りに行ってくれた。風邪薬と水を持ってきてくれた秋ちゃんの後ろには久遠監督。
「…酷い熱だわ」
「今日はここに残れ、容態が悪化するかもしれん」
『すみません、この有様で…』
謝る僕から視線を外した久遠監督はそこらに散らばる書類を手に取り、内容を確認する。
「…無理を、させたか」
首を横に振れば、少し痛そうな表情をした。
「イギリスの攻略法、キーマン…今日の試合で使わせてもらう。お前はここに残っていても、ピッチにはお前の意志がある…心配するな」
『はい』
去り際に薄く笑って、久遠監督は玄関に向かって行った。
「ここに薬とお水、あとおにぎりも置いておくから…少しくらい食べてから、薬飲んでゆっくり寝ててね」
こくりと頷けば秋ちゃんは優しく笑って、久遠監督の後を追った。
「大丈夫か?」
『うん。ねえ、修也』
「なんだ?」
『頑張って、ね』
「あぁ、必ず勝つよ」
僕の額にキスをして、頭を優しく撫でてくれた。
「行ってくる」
『行ってらっしゃい』
霞む視界の中で、僕は修也の背を見送った。
部屋に置いてある小型テレビを付け、横になったまま見ていた。みんなが戦っている、その雄姿を見る。本当にちゃんと僕の示した作戦を使ってくれているな、久遠監督。
『僕の、心』
僕の意志はそこにある。みんなと一緒にあるんだと。嬉しくて顔が綻んだ瞬間、携帯電話の通知音が鳴る。電話ではなく、メールの。見たたところ知らないアドレスだ。
“私は、ここだ”
それを見た途端に体中に雷が走ったような衝撃を受けた。これは絶対に父さんからだ。どこに、どこにいるんだ。
『この島に、いる…?』
さっきから身体中が何かを感じ取り、ざわめいている。いるんだ、あの人がこの島のどこかに。そう確信した瞬間、容体が悪化したように感じる。身体が重い、熱い。意識も朦朧としてきた。
意識が仄暗い海の底に堕ちていく。遠くでは、イギリス戦の実況が鳴っている。
ーー私は、ここだ
あぁ、父さんの声がする。いるはずのないその人の声が鮮明に聞こえる。聞こえるというより、頭の中で反響しているみたい。
『…いない、はずなのに』
当たり前だ、いるわけないんだ。この場には。次は何をする気なんだという気持ちとまだ何かしようとしているのかという憤り。一体、何を求めているのか。何度対峙しても、考えていることがわからない。
目を凝らすと、テレビにはタイガーストームが映し出されていた。
イナズマジャパンが勝ったんだと、認識できた。
『…よかった、みんな』
僕は秋ちゃんのおにぎりを二口ほど食べ、薬を飲み眠った。不安はあるものの、熱には勝てず、自ら意識を手放した。
ばたん、扉の閉じる音で目が覚めた。ゆっくりと目を開ければ、トレーに夕飯を乗せた修也がいる。
「熱は?」
『大分、いいよ』
「だろうな、顔色がよくなっている」
トレーを机に置き、ベッドの端に座った。僕もゆっくり身体を起こす。
「無理はするな」
『大丈夫だよ、元々頑丈だし。今日はゆっくり休んだしね』
「なら、いいんだが。夕飯、食えるか?木野が雑炊にしてくれた」
『食べれると思う』
修也が小皿に取り分けて、僕に渡してくれた。
『…過保護』
「病人扱いだ、別に過保護じゃないさ」
秋ちゃんの作ってくれた雑炊をゆっくり食べる。ほとんど何も食べていないせいか、次々と食べ進め、いつの間にか完食していた。
「これだけ食べられれば大丈夫だな」
『うん、ありがとう』
優しく笑う修也。
「動けるようになったからと言って、無理はするなよ」
『気をつける』
「明日は休みだ、少しくらい寝坊しても構わないだろう」
『そう、なんだ?じゃあ、ゆっくり寝ようかな』
「その方がいい」
修也はずっと僕の手を握っている。
『……』
「どうした?」
『ん、手』
はっと気付いたように頬を赤らめる。首を傾げれば、照れくさそうに言った。
「時雨が、いないと変な感じだったんだ」
『…僕もだよ』
僕がはにかむと、修也も笑ってくれた。不意にキスされて、一瞬思考が止まった。恥ずかしくて、顔の熱が上がっていくのを感じる。
『うつる…』
「大丈夫だ」
『言ってること、無茶苦茶』
「だったら、」
真っ直ぐ見つめられる。本当にずるい。その真剣な眼差しに弱いってわかってるくせに。
「時雨がキスしてくれないか」
『…はずい』
「俺だって、お前が構ってくれない間は寂しいんだ」
『う、』
「俺はお前みたいにお利口さんでいられない。前にも言っただろう、独占欲が強いんだって…」
『…ずるい』
そんなこと言われたら、拒めないの知ってるくせに。僕は修也に触れるだけのキスをする。そうすれば、修也は満足そうに笑った。
「もう、寝ろ。また熱が出る」
『うん』
「あぁ、おやすみ」
『おやすみ、修也』
幸せな気持ちで僕は再び眠りについた。
翌日、休みを与えられた選手達。海で遊んだり、買い物をしたりと休みを過ごしていた。
朝、ゆっくり眠っていた僕の耳に聞こえたボールの音。恐らく、キーパーの練習の音。それが誰なのか、僕にはすぐにわかった。
『…勇気だ』
僕はつなぎに着替えて、勇気を探した。近くにある別の小さなコートに彼はいた。
『勇気!』
「時雨さん、具合はいいんですか?」
『うん、もうすっかり。今日休みなんでしょ?勇気は練習?』
「はい…俺はまだまだ円堂さんのようにゴールを守れないので」
そう言った時の勇気の表情はすごく悔しそうで。
『…勇気、一緒にやる?』
「え、でも、また具合悪くなったら…」
『大丈夫、ちょっとは動いた方がいいし』
「時雨さん」
ーー思い出す。初めて勇気に会った時の、あの迸る雷のような衝撃。
今、ダイヤの原石は、必死に磨かれている。輝こうとしている、勇気はいい方向に向いているはずだ。
『思い出しちゃったなぁ』
「何を、ですか?」
『マジン・ザ・ハンドの時のこと』
「あ!あの時も時雨さんに特訓してもらいましたね」
『うん。僕は今でも勇気は守を越えられると思ってるよ』
「円堂さんを…俺が?」
きょとんとしている勇気。僕はシュートを打った後に笑った。
『勇気に足りないのは、発想と威厳とみんなの想い』
「…え」
『もっと、みんなにパワーもらいなよ』
「みんなのパワー…」
『勇気はみんなの想いを受けて強くなると思うから』
二人で砂塗れになりながら、特訓した。僕よりもずっと早くから練習していた勇気は夕方ごろにはふらふらで。倒れそうだなって思って、勇気を宿舎まで背負って戻ったらみんなが吃驚してた。
「ありがとうございます、時雨さん」
部屋に連れて帰ってあげれば、そう言った勇気。
『いいよ。それより、足りないもの補ってごらん。もっと強くなれる』
「はいっ」
『それじゃあ、おやすみ』
「おやすみなさい」
勇気のことはみんなに任せる。陰で他の一年が心配そうに見ていたことに途中で気がついた。きっと、力になってくれるだろう。
ー僕は僕の抱える問題を片付けなくちゃ。
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