男主/影山の息子
FFIアジア予選編
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急停止したキャラバン。
古株さんの指差す先にはデコチャリと不良軍団。これは征矢と唐須の睨み合いになってしまう。
もう、征矢に喧嘩させる訳には行かない。征矢に守、条介と雷電までキャラバンを降りる。唐須の挑発に乗りそうな条介を雷電が牽制してくれた。
時間は刻一刻と過ぎていく。
そんな時、沈黙を破ったのは征矢だった。
「お別れです、みなさん」
『…征矢?』
「行ってくれ、時雨、キャプテン。
これは元々俺の招いた問題…こんなことでみんなの夢を台無しにしたりできねぇ」
征矢の言葉に唐須はふざけたように返す。ここで足止めをすると言った征矢の肩を守が引きとめた。
「俺たちは全員でイナズマジャパンなんだ」
「!?」
『そうだね…それに、チームだけが仲間じゃないでしょ。僕たちには一緒に戦う仲間が付いているんだから』
唐須がギロリと瞳を輝かせた。彼らが襲い掛かってきそうになったその瞬間、茂みから何かが飛び出してきた。その正体は僕も征矢も知っている。
「間に合ったみたいですね」
「す、スズメ?」
「あー…ホント、ギリギリでした!」
『…アカリ』
現れたスケボー軍団は、唐須たちの前に立ちふさがった。
「飛鷹さん、時雨さん、ここは俺たちに任せてください」
「これ以上、唐須の好き勝手にはさせませんよ!!」
「何より、オレに命分けてくれた恩を返すときでしょ?」
「お前ら…」
『義理堅いよね、みんな』
「… 時雨」
驚く征矢に僕は言った。
『チームだけが仲間じゃない。僕達には一緒に戦う仲間がいる。それがどんな場面で、どんなフィールドだとしても、変わらないんだ』
「時雨さんの言う通りです」
「行って下さい!飛鷹さん!」
スズメたちを含め、僕も、みんな征矢に助けられた。征矢に出会ったからアカリを助けられた。二人に会ったから、前に進もうと思えたんだ。だから、征矢の夢は仲間である僕らみんなの夢なんだよ。
「羽ばたいて下さい、飛鷹さん!世界へ!!」
「世界に…」
『ほーら、何ボサっとしてんの?行くよ、征矢』
「あ、あぁ…」
みんながキャラバンに乗り込んで、僕は最後に振り返った。
『アカリ!怪我しないようにね!!』
「オレはそんな弱くないですよっ」
そう言ってアカリがにっと笑った。けして、アカリは弱いわけじゃない。だから僕らとつるんでいられたんだから。
アカリ、スズメ、みんな、ありがとう。征矢を必ず世界に送り出すからね。
キャラバンは急いで会場に向かった。
玄関で監督と冬花が待っていてくれて、イナズマジャパンはピッチに立つことができた。
ベンチで円陣を組み、気合を入れる。
そこへ、韓国代表ファイアードラゴンが現れた。
テルに風ちゃんと晴ちゃんそして…チェ・チャンスウ。
「チェ・チャンスウ…」
『やっぱり出てきたね、チェ・チャンスウ』
「やはり、ご存知でしたか」
『そりゃあ、ねぇ…龍に舞われちゃ面倒から』
「なぁ、そんなに凄い奴なのか?」
守やみんなが首を傾げている。その様子に僕達二人は苦笑した。まぁ、それもそうかと納得せざる得ないのはみんなのことを理解しているから。
欠流がチャンスウのことをみんなに説明すると、守はいつもの調子でみんなをやる気にさせた。
『修也』
「時雨…」
『いつも通り、サッカーして来て』
「…そうだな」
『無駄な力が入らないように、周りをよく見て』
「あぁ」
『修也、』
僕は首からペンダントを外して、修也に付けた。
「これは?」
『僕も夕香ちゃんも、傍にいるから…大丈夫だよ』
二つのペンダントをきゅっと握り締める修也。
修也の味方はすぐ傍にいるんだから。
一人だと、思わないで。
『僕ね、修也のこと好きだよ』
「… 時雨」
『サッカーしてる修也はもっと好き。だから、離れていても我慢できる』
修也は珍しく今にも泣きそうな顔をして、微笑う僕を見ていた。そんな顔しないでよ。いつもみたいに、笑ってて。
『行ってらっしゃい、修也』
「ありがとう、行ってくるよ」
修也の背を見送って、そのすぐ後不安になる。修也の最後の試合って言うのもそうだけど。征矢のことも、久遠監督の作戦のことも、この試合には波乱と綻びが目立つだろう。
それでも、乗り越えた後の結束力と成長、勢いは誰にも止められない。
『勝って、世界に…』
今までの試合以上に、選手じゃないことがもどかしくて、悔しいと思った。
守のベンチスタートが、チームの士気に関わっていることは確か。でも、有人はわけがあるとわかっている。だったら、きっと采配は大丈夫のはず。
『勇気っ!』
ゴールで震えている勇気を、見てられない。
「… 時雨さん、俺…俺、」
『勇気、この間の試合思い出して』
「この間、」
『必殺技を成長させるのに必要なのは?』
勇気ははっと気が付いたように、声を上げた。
「サッカーへの、熱い想い…」
『上出来!そこでしっかり守ってよ』
「はいっ!!ありがとうございます!」
キリッと勇気の表情が変わる。そうだよ、それでこそイナズマキャラバンのキーパーだ。苦難は何度と越えてきた、大丈夫。
試合が始まる―
先制シュートはヒロト。
だけど、正面ではあっさりと止められる。
勇気も負けてない、テルのシュートをしっかりと止めた。
『…修也、力入れすぎ』
ファウルを貰ってしまった修也。有人が声を掛けていたけど、きっと噛み合っていない。
視野が狭まった征矢には誰の声も届かない。
なんとかゴール前に帰って来た士郎がスノーエンジェルで食い止める。そのまま雷電との連携シュート・サンダービーストが先制を下した。
『ダメだ、全然』
先制点を取っても、修也が、征矢が綻びとなり、弱点となる。
「悔しそうだな、お前」
『明王、』
「…お前がキャプテンなら、余裕だったんじゃねーの」
『どう、かな…そんなガラでもないしね』
「そうかよ」
明王はこの間にも自分だったらどうするかって考えている。
そういうことなんだよ、必要なのは。
圧倒的なファイアードラゴンのタクティクスに士郎が、条介がフィールドに沈む。マネージャーに介抱される二人は強がってはいるけど今日はもう立てない。
『士郎、条介、ベンチ。虎ちゃんと夕弥、でいいですか?久遠監督』
「ちょっと待って、時雨」
「そうだぜ、俺たちはまだ…」
『ダメだよ』
恐らく、久遠監督が守をベンチに置いているのには恐らく不服だろうから。監督の言葉は届かない。
だから、僕が代わりに言うんだ。
「代弁感謝する」
『いいんです、何かしてないともどかしくて…悔しくて、泣きそうになるから』
「お前を戦わせてやれば、」
『でも、僕には僕の仕事がある。泥の意味もそろそろ気付いてくれると思います』
「そうでなければ、困るが…」
久遠監督と有人の視線がぶつかる。理解したんだね、有人。
必殺タクティクス、ルート・オブ・スカイ。その後の、タイガードライブ。
修也の視線がおかしい。その上、雷電と有人の負傷。
『…有人っ!?』
気づいたのは、僕だけ。
もどかしい。あっという間に逆転されてしまった。
僕が、ゲームメイクをしたい。一緒にフィールドを走りたい…
『悔しい、』
「おい」
『あき、お…』
「何泣きそうになってんだよ、まだ試合終わってねーだろ」
『そう、だけど』
「お前がやんのは監督と同じことだろ、しっかりしろ。チームの地盤が緩むじゃねーかよ、監督補佐さんよぉ」
『明王、』
しっかりしなくちゃ。そうだ、ここで僕まで飲まれちゃいけない。雷電の代わりに、鉄平が。
ーーーだったら、有人の代わりは…
『明王』
「んだよ、正気に戻ったか」
『お陰様でね。それより、この試合明王の力が必要になる』
「へぇ、俺のね」
『それで、明王は明王のままでいて』
「俺のまま?」
『いつものあのプレースタイルで』
「おいおい、いいのかよ」
『そうじゃなくちゃいけないんだよ』
しっかりと目を見て言えば、妙に納得したように目を閉じて笑った。
僕の頭をふわりと撫でて、不敵に笑う。
「わかったぜ…、いいんだな?」
『うん、頼んだよ』
後半は10人でのスタート。
守が各々に声を掛けて、またベンチに戻った。
『行け、明王』
明王は駆け引きとか、挑発とか、そういう頭を使うプレーが得意だ。わざと仲間を使うような先戦法もらしいといえばらしい。
『明王』
みんなが明王に抱く不信感。それは、明王が他人を信用しないから。間違った母からの刷り込みにより、今の明王がいる。僕は真・帝国の裏側を知っているからこそ、僕は明王を信じてる。
響木監督はみんなに明王のことを話した。なぜ、今の明王があるのかを。
「お前は知っていたんだな」
『ごめん、有人』
「いや、構わないさ。お前の考え、不動のこと、少しわかってきた。お前は俺にあいつを、不動を一人の選手として見て欲しかったんだろう?」
『うん、だから選考試合のチームをわざわざ一緒にしたんだよ』
有人はふっと笑った。
「お前の仕業か」
『ごめんね』
「お前がいればもっと早く不動を活かせたかもしれんがな」
あぁ、わかってるんだ、有人は。あとはキャプテンが立ち上がればいい。萎縮したチームを、上手く繋ぎ合わせる。
『明王、征矢、修也、一郎太、勇気、ヒロト…』
「お前はいつもこんな想いで俺たちを見守っててくれたんだな」
『…守』
「俺たちは自分のことばかり、その周りしか見えていなかったんだな」
「情けない、としか言いようが無い」
バラバラになったチーム。焦っているみんなに気付いた守。キャプテンにみんなを託すよ。
『みんなを頼むね、守』
「あぁ、俺はあいつらのキャプテンなんだよな」
『うん』
「行ってくる」
守の後を追うように、今度は有人。
「俺は…」
『教えてあげて、明王に…一人じゃないってさ』
「わからせてやる、不動に。司令塔は俺達二人だとな」
『任せたよ、有人』
後は二人に任せる。
僕には、あと一つだけフィールドの外に仕事があるから。
頼んだよ、二人とも。
絶対に世界に行ってね、みんな。
「…本当に悔しい思いをさせたな」
『いいんです、響木監督』
「お前がいてくれたから、あいつらはあそこに立てる」
『僕はそんな大層なもんじゃありませんよ』
笑って言えば、響木監督も笑ってくれた。
「フィールドには円堂も鬼道もいる、行っても大丈夫だ」
見抜かれている。本当に、敵わないんだ…この人には。
『はい、僕も行ってきます』
「気をつけて行ってこい、時雨」
こくりと頷き、久遠監督とも一瞬アイコンタクトを取る。僕はベンチを後にして、ある人のところに向かった。きっと、ここに来ているはずだから。
修也の視線の先にあるのはきっと…僕はベンチを抜け、観客席へと急ぐ。
「時雨さん!!」
『アカリ!スズメ!みんなっ』
「飛鷹さんは!?」
『大丈夫、見ててあげて!』
フィールドを振り返る。大丈夫、あそこには守がいるから。みんなの調子がぐんぐんよくなっている。征矢もヒロトも…あとは、修也だけ。
「時雨さん、勝ったらでっかいケーキ作りますから!」
『うん、みんなで食べようね』
「はいっ」
アカリたちと別れ、観客席を見渡すもののそれらしい人はいない。だったら、ロビーか控え室。僕は一旦ロビーへ、そして控え室に向かう。
モニターテレビのところにいる、紺の髪に白いメッシュ、切れ長の目に黒縁メガネ。
『いたっ!豪炎寺さん!』
驚いたように目を見開くその人は、修也のお父さん。
『やっぱり、来てたんだ…豪炎寺さん』
「君は…」
『チームのマネージャーです!修也の想い、届きませんか?あなたに』
「…他人の君には、」
『他人じゃない!修也は仲間です!!』
豪炎寺さんはじっと僕を見ていた。
『僕は修也の決めたことに文句を言うつもりはありません。だけど一つだけ言っておきたいことがあります、豪炎寺さんに』
「…?」
『僕やチームメイトのみんな、それから夕香ちゃん、みんな修也のことが大好きです。だから、修也とサッカーできてすごく嬉しかったし、楽しかった。できるなら、この先もずっと一緒にサッカーしたいって思います』
「……」
『これが僕達イナズマジャパンの想いです、もちろん修也も含めて』
モニターから声がする。タイガードライブが成功したこと、カオスブレイクを止めたこと。何より、4対3で日本が勝利したこと。
「勝った、ということは次は本選か」
『そう、です…』
「次の試合に修也がいないと、夕香が膨れそうだな」
『え…』
「修也の気持ちも、君達の気持ちもわかった。修也の好きにさせよう」
『本当に…いいんですか!?』
こくりと頷いた豪炎寺さん。目から涙が溢れて、止まらない。修也も一緒に世界に行ける…よかった。
「行こうか、修也の元に」
『はい!』
豪炎寺さんは修也に言った。
“歩いていくがいい、お前はお前自身の道をな”
その言葉がどこか羨ましかった。いいなって、どこかで思う自分に苦笑いする。
「修也、その子を大切にしなさい」
ぽんと頭を叩かれ、豪炎寺さんは帰って行った。
「時雨、お前…父さんに何か言ったか?」
『大したことは、言ってないけど』
「でも、ありがとう。お前の言葉だったから、届いたのかもしれない」
『そうだったら、嬉しいな』
顔を見合わせて笑えば、いつもの修也がいた。
「行こう、世界に」
『うん、みんなと一緒に』
こうして、イナズマジャパンはアジア予選を突破した。みんながいたから、みんなとだから。
行こう、世界に!
例えどんな困難や闇があっても、負けない。
