男主/影山の息子
FFIアジア予選編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最近、征矢に付きっ切りだったから、他のメンバーに手をかけられなかった。
虎ちゃんのことは守や修也がフォローしてくれていたけど…、明王は試合に出れない悔しさからか、人に当たるし、喧嘩ふっかけるしで、そのケアをしてあげれてない。
特に気になるのは、リュウジ。
なんだか、焦っているように思えて心配にはなってたんだけど。
きっと、ヒロトや虎ちゃん、条介に圧倒されて、急いじゃってる。
まるで治にやられた時の士郎…いや、アツヤみたいに。
それに、最近すごく嫌な感じがする。
『身体が、重い…』
何故だろう、練習は毎日でないにしろ、そこそこ自主練はしている。そこまで身体がなまっているわけでも疲れているわけでもない。
『…治』
代表紅白戦の時の、治の言葉を思い出す。
不意に思い出した治のこと、そしてその言葉。僕も入れたメンバーで代表を狙う。
ただ、集めた仲間って一体誰なんだろう。
気にかかるけど、今は目の前にある問題から片付けておかなくちゃ。
『ヒロトー!』
「ん、何だい?時雨君」
練習途中のヒロトをベンチに呼び戻す。
『…最近リュウジの調子がさ、悪そうなんだけど、気付いてた?』
そう言うと、一瞬目を見開いた後、真剣な面持ちで頷いた。
「俺も気にはなってたんだ、緑川のことが」
『…僕はエイリア学園の一件でジェミニストームとは戦ってないんだ。正直、リュウジがエイリア学園時代から感じてたことはわからない。だからヒロトにリュウジのこと任せたいんだけど、構わないかなって思って』
「… 時雨君」
そう、僕がキャラバンに参加したのは大阪から…つまりイプシロン戦から。
別にお日さま園で、リュウジと仲が悪いわけじゃない。だけど、「レーゼ」時代のことは何一つわからない。だったら、ヒロトの方がわかってあげられるんじゃないかと思ったわけで。
「わかった、俺に任せておいてよ」
『ありがとう、ヒロト』
「緑川の無茶な練習の仕方、放っておけないからね」
『よろしくね』
こくりと頷いたヒロト。
ドリンクを飲むリュウジに視線を移して、何かを考えているようだった。
「大丈夫だよ、緑川のことは」
そう言って、にこっと笑ったヒロトは一旦練習へと戻って行った。
ーー危機感を感じる。
父さんの傍で身に付けた、悪意や敵意からの違和感。でも、今回のは敵意であっても、エイリア学園のような嫌味さは無い。
『…治、一体何を』
きっとこの違和感は治。彼の言っていた、代表を狙っているという目論見。
彼一人では成し遂げられない。仲間がいるはずだけど、それが一体誰なのか。
危機感と一緒に感じる懐かしさがきっと、ヒントなんだろうけど。
「何してんだ、お前」
雷門中近くの森をふらふらと歩きながら考えていると、数メートル先から声がした。
明王がそこに立っていた。ボールが近くに転がっていることから、ここで自主練していたらしい。
『明王こそ、ここで自主練してたんだ?』
「質問してんのは俺だ、何してんだよ」
少し疲れからかイライラしている明王。
『考え事してたら、こんなとこまで来てたんだよ』
「……」
妙に納得してない面持ちの明王。
僕は苦笑いをして誤魔化すと、けっと吐き捨てた。
「お前、チーム全員の問題を一人で抱え込む気か」
『え…』
思ってもみない言葉に驚いた。
「飛鷹もそうだけどよ、鬼道とか、お前は一緒になってっけど。お前、自分のことじゃないのに必死になって…バカか、破滅するぞ」
罵られている、でも心配しているから出てくる言葉。明王なりの心配の仕方なんだ。
僕は困ったように笑いながら、おどけてみせる。
『だったら、仕事増やさないでよ。個人行動されると探すの大変なんだから』
「…ハァ」
溜め息を吐いている明王はボールを拾って僕へ寄越した。
「少し付き合えよ、俺の出番がいつ来てもいいようにな」
『明王…』
「ちったぁ、身体動かして、頭ん中空にしとけよ容量オーバーでぶっ倒れられたら、困るからな」
不器用にも心配してくれるのが嬉しくて。僕は、素直に従うことにした。何せ明王とサッカーするのも随分久しぶりだったし。
あの危機感に対して、何かしなくちゃいけないような気がしたんだ。
明王の個人練習は結構ハードで、この量をこなして平気な顔してる明王はすごい。本当は誰よりも努力している天才なんだと思わされる。
ありがとう、ちょっと身体が、思考が軽くなった気がする。
それは突然やって来た。
突然放たれたシュートはーー治のもので。
その後ろには彼の集めた仲間と、かつての監督だった瞳子監督がいた。
帝国の仲間、世宇子のメンバー、エイリア学園やFFの強豪校の選手達。源田や、タダシ、ユタカ、茂人…僕と仲のいいメンバーもいる。
『…本当に、来たんだ』
しかも、監督はあの吉良瞳子。ヒロトやリュウジも吃驚していた。予想だにしなかった展開に付いていけないメンバー。
彼ら、ネオジャパンの目的は代表交代。
試合をして、彼らが勝てば代表の座は奪われる。
「時雨」
『…治』
あの時と同じ目だ。
最初に、引き抜きに来たときと同じ。
「今一度問う!我らと共に、代表になる気は無いかと」
真っ直ぐな目。本気なんだって、わかる。
身体がびりびりするくらい伝わって来る。
だけど、僕だって…そんな簡単に気持ちを変える気は無い。
『断る、僕の気持ちは変わらない』
「そうか、残念だ」
今度はあっさりと、自分のチームへ戻っていく治。
きっと、試合が終わった後にでももう一度交渉に来るだろう。
ーーー今、治は自分達が勝つと信じている。
逆境を経験した人間は強くなる。治だからこそより強くそう思っているはずだ。
僕は選手じゃなくていいと思った。この大会に関しては、全面的にサポートをしていくと。
自分が戦わない試合で自分の命運が決まるのは気に入らないけど。
「メンバーチェンジだ」
突然、久遠監督がそう言った。
『監督?』
「いつになったら当事者になるんだ、お前は」
『え…』
突然のことに思考が付いて行かなくて。
それでも、久遠監督は淡々と言葉を紡いでいく。
「この試合に限り、不動明王に代わって、影山時雨をメンバーに加える」
『え!?』
「この非公式試合に限りお前を使う」
戸惑っている僕に、久遠監督は告げた。
「知っていていて報告しなかったペナルティだ。自分のことは自分で決めろ」
『…久遠監督』
どうしてだか、この時に梅雨ちゃんの言葉を思い出した。
“凄くチームを想っていてくれる”
これはチームだけじゃなくて、それを構成する選手一人ひとりを見ているってことなんだ。だから、みんなこの人に付いて行く。
「木野にユニフォームを渡してある、早く着替えて来い」
久遠監督は淡々と言った。
『ありがとうございますっ…』
ただ、お礼を言って頭を下げることしかできなかった。治との決着を着けるチャンスをくれた久遠監督。本当に感謝の言葉以外が見つからない。
着替えて、宿舎から出てくると玄関で明王が待っていた。彼の手には四国限定のみかんジュース。
ハーフタイムの糖分がないことを知って、持ってきてくれたらしい。ベンチに置かれた缶ジュースを、明王は預かっていてくれた。
久々の試合。
試合開始直後はベンチで試合運びを見ていた。
一郎太が監督に呼ばれアップをしに行く。
『攻めているのに、』
攻めているのに、攻め切れていない。
あっという間に形勢逆転されてしまった。
何より、イリュージョンボールを習得されたことに腹が立つ。正義の鉄拳も歯が立たない、この状況。
どっちにも負けられない理由がある。
成ちゃんの動きがよくなっている、寺門も強くなっている。源田もKOGとして磨きがかかっているように思う。
それは勝ちたいと思うからこそ。
それでも、イナズマジャパンの…円堂守の強さは試合の中で進化すること。どれだけ完成された選手たちも、目の前で進化されては歯が立たない。
アップを終えた一郎太が戻って来た。息を切らせて、汗だくに成っている。
『一郎太、いける?』
「あぁ」
久遠監督は目を光らせた。
「選手交代!宇都宮に代わって、風丸。土方に代わって時雨」
「『はいっ!』」
前半も残り時間が少ない。
DFエリアには条介と塀吾郎を残して、全員が上がる。リュウジは治からボールを守れず、歯を食いしばっていた。
「風丸っ」
有人から一郎太にボールが渡り、風神の舞でフィールドを駆ける。
「時雨!」
『任せて!ガーディアン・デーモン!!』
一郎太からボールを受け、久しぶりに源田との一騎打ち。結果は僕がゴールに叩き込み、勝利を収め、1点を返すことができた。みんなが一郎太を賞賛する中で一人顔を歪めるリュウジ。
『リュウジ』
「あ、時雨…俺、俺さ」
『大丈夫、僕が一緒に走るから。だから、リュウジは好きなようにプレーしなよ』
「俺の、好きなように…」
一瞬キョトンとしたけど、すぐに元に戻った。
「ありがとう、時雨」
『ううん、大丈夫だよ、リュウジなら』
少し元気を取り戻してくれたようで、リュウジはフィールドに戻った。ハーフタイムに明王からもらったみかんジュースを飲んで、糖分を取る。
こんなところで日本代表に黒星をつけさせるわけにはいかない。
だって、次で世界に行けるんだっ!
『…タダシがDF?』
後半のメンバーチェンジ。
DFエリアにタダシを入れてくるなんて…向こうエリアに攻撃を仕掛けたとき、一気に形成逆転されかねない。
ネオ・ジャパンのキックオフで後半がスタート。
カットしたヒロトはリュウジへパスを寄越し、リュウジは僕と一緒に上がっていく。そこへ、幽谷と霧隠がチャージをかける。
『リュウジ!』
「あぁ、俺は信じるさ!自分のサッカーを!!」
電光石火の如く、走り抜けるリュウジ。
欠流はその必殺技にライトニングアクセルと名づけた。そこからリュウジは好調で上手く回り始めていた。
ただ、最強のキーパー技・無限の壁を真に進化させて立ちはだかる。
修也、士郎、ヒロト、リュウジ…誰のシュートもそれを破ることは出来ない。
おまに、形勢逆転であっという間に守ばかり攻撃されている始末。
『守っ!』
「大丈夫だ!ゴールは絶対に割らせないっ」
そうは言うけど、凄く嫌な予感。
慌ててゴール前まで戻れば、美しい六枚の白い翼。
世宇子の必殺シュート。
「ゴッドノウズ!!」
治がゴッドノウズを進化させてきた、超協力シュート。だけど、僕だって伊達に世宇子中に匿ってもらっていたわけじゃない。
どんなに強くなったって、テルよりも強力なゴッドノウズを打てるわけがないから。
『絶対に止めるっ…』
暗闇が僕を包み、シュートはその闇で構成された空間に入る。そこは真っ暗闇の空間で一面の彼岸花が咲いている。
ざぁっと空間に風が流れ込み、ボールは守の手の中へすっぽりと収まった。
「…え、」
『守、ボールちゃんと取った?』
「あぁ…サンキュー!」
治はまさか、というような表情で僕を見ていた。
そう、闇は脅かすだけじゃない。影とは仲間を守ってくれる大きな存在なんだ。
ただ驚いていたのは帝国の面々だったようで…有人はふっと微笑った。
「常闇の、彼岸花か」
ここでさらにメンバーチェンジ。
征矢と勇気を加え、守をリベロにチェンジさせる。
攻撃型になったフォーメーション。瞳子監督はそこへ突っ込んでくる。
『征矢、しっかり!』
「え、あぁ…」
未だ自信なさそうに、返事をする征矢。
予想通り、ペナルティエリア内まであっさりと侵入されてしまった。
『勇気!』
「っ!?」
トライアングルZが勇気を襲う。
しかし、それを征矢の出来かけの真空魔が無に返す。勇気の腕の中に残されたボールは、僕へ返る。
『守、修也、有人、上がれっ!』
ボールを持ち込んで駆け上がれば、後ろから猛スピードで治に追われる。
「行かせん!」
『!?っ、負けない!』
イリュージョンボールで治をかわし、有人へパスをする。
『有人!』
「まかせておけ!」
イナズマブレイクが無限の壁を破り、2点目を叩き込む。イナズマジャパンの勝利の瞬間だった。
試合が終わって、挨拶を済ませると、凄い勢いで飛びつかれた。
「せんぱーい!」
『成ちゃん』
ぎゅーっと抱きついてくる成ちゃん。その後ろから溜め息を吐いてやってきた、源田と寺門。
「成神、お前な…」
「言っても無駄だぞ、寺門」
『…源田、寺門』
僕に抱きついたまま、文句を垂れる成ちゃん。
源田も寺門も、言っても聞かないだろうと呆れていた。
「それにしても常闇の彼岸花とはやられたぜ」
「あぁ…驚いた」
「凄かったスねー!先輩!!」
『そんなことないよ、みんなも凄かったしね』
そう言うと、成ちゃんは嬉しそうに笑った。
「また試合しましょうね!」
『うん』
成ちゃんから解放され、今度はタダシとユタカに話しかけられる。
二人とも悔しがっている様子だった。
だけど、また世宇子にも来いと優しく笑っていた。
『しーげーとー』
「!?」
びくりと身体を震わせた茂人。
どこかチームに馴染み切っていない感じがするのは気のせいじゃない。
『元気そうだね』
「あ、うん」
『ぎこちないね、茂人』
「そうだな…晴矢がいないから、なんか」
『…茂人。大丈夫だよ、茂人も病気治ったんだし、一人じゃないから』
「うん、ありがとう」
茂人と話していると、ざっと足音がした。
「… 時雨」
『治』
治は一度目を伏せてから、真っ直ぐ僕を見た。
「私の負けだ」
『…今日は、ね』
「あぁ、次は私が…我々が勝つ」
『それは困るなぁ』
冗談ぽく言うと、治はふっと微笑った。根はいい奴なんだけど、何かすぐ喧嘩になっちゃうんだよな。
「やはり、私は思うのだが」
『ん?』
「お前は選手として、試合に出るべきだ。その強さ、勿体無い」
『そんなことないよ』
「いいや、お前のような選手はくすぶっていくのは絶対に間違っている」
『…いや、間違いとかじゃなくてさ』
「大体あの監督は一体何を思ってお前をサポーターなんかに」
治の説教が始まってしまい、茂人と一緒に耳を塞ぐ。あぁ、これはきっと長いだろうな。
「であるから…って、耳を塞ぐな!」
『わっ、バレた!走れ、茂人!!』
「え、あっ…ちょっと待てよ」
「貴様らー!!」
この後しばらく、瞳子監督が止めてくれるまで追いかけられる羽目となった。
こうやってバカやれる仲間が増えたことは、嬉しかったんだ。だから、こうやって試合した後もすぐに打ち解けられるんだと思う。
みんなの想いを背負って、日本代表は予選決勝に挑むことになる。
頑張って、みんな!
