男主/影山の息子
FFIアジア予選編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は大方仕事を終わらせて、飛鷹と一緒に雷雷軒に行った。
飛鷹の練習の様子見も兼ねて僕も練習したかっただけなんだけど。
ついに、今日は蹴り方の練習からボールを使って的を当てる練習へと切り替わった。
『…真空魔』
「お前もあれを知っているんだったな」
『あの足に何度か助けられてます』
「あれは、次の試合で必ず必要になる。それまではあいつを頼むぞ」
『任せてください、響木監督』
必死になってボールを蹴り続ける飛鷹。僕は響木監督とその様子をただただ見ていた。
翌日、練習を始めたみんなの様子を記録していた。各々パス練習、模擬試合などしながら、特訓を重ねている。
飛鷹は勇気とパス練習。なかなか上手く蹴れないのか、イライラしているようだ。勝手に走りこみを始めてしまった。
『勇気っ』
「あ、時雨さん…飛鷹さんですか?」
『うん、また走りだしたでしょ』
「はい」
『正直、勇気はキーパーだから練習になると思っての組み合わせだったんだけどな』
「GKとMFの経験を兼ね備えてますから」
『うん、勇気もキーパー練習しておいて』
「はい!」
仕方が無いから、僕も後を追って一緒に走った。
『とーびーたーかー』
「… グレ」
『なんで一人でやんの?みんなにも手伝ってもらえばいいのに』
「っ、俺は…」
『下手だから?足引っ張るから嫌なんだ?』
そう言うと、押し黙ってしまう飛鷹。
『僕は別に気にしないと思うけど、守たちなら』
「キャプテン、なら…」
口では色々言ってるけど、本当は追いつきたいだけなんだろうな。みんなそうだった。
足怪我したり、キーパーに転向したり、リベロになったり、サッカーできなくなったり…色々と問題を抱えていても、一緒に乗り越えてきたから。
頼るってことがいまいちわかってないんだろうな。
ずっと先頭を突っ切って、年下の舎弟たちを守ってきた飛鷹だから、頼りづらいのかもしれない。
練習が終わり、ストレッチもしないで行ってしまう飛鷹の後を慌てて追った。今日は追いかけてばっかりだ。
『だからさ、ストレッチちゃんとやってよ!』
「わかってる、後でやる」
『ちょっと、飛鷹…』
自分のペースで顔を洗う飛鷹。
後ろから追いかけてきた守がそっと飛鷹にタオルを差し出した。
「…、どうも」
「ストレッチちゃんとやってないんだろ?」
「…っ」
「ごめん、時雨の声が聞こえたから」
「…あぁ」
『本当に孤立主義は困るんだから』
それは飛鷹だけでもない話だけど。
守が飛鷹にみんなと練習するように説得するも、丁寧に断った。そこへ嫌な言い方で、問題児が登場。
「へっ、偉そうによぉ」
「不動っ」
嫌味を並べる明王に、守が言い返す。飛鷹は無言でガンを飛ばしている。やっぱ、怖いよ…その表情は。何せ明王が怯んでるくらいだしね。
「なんだよ、その目は!?」
つかつかと歩み寄る明王と、飛鷹の前に立ちはだかる守。飛鷹と明王、二人はバラバラに引き上げて行ってしまった。
『…あぁ、もう、』
「時雨…」
『守、ごめんね。もうちょっと上手くやっていけたらとは思うんだけど』
「別に、お前の責任じゃないさ」
『うん…そう、なんだけど、やっぱり、ね』
どうすればみんなで上手くやっていけるんだろうか。飛鷹がみんなに歩み寄ってくれるのか。明王が心を開いてくれるのかはわからない。人の心は複雑だと思う。
『不器用、なんだよね…簡単に言えば』
「それって飛鷹のことか?」
『うーん、飛鷹も明王もかな。二人とも、不器用…どっちかって言えば明王の方が』
それは確かに、向き合ってくれれば飛鷹の方が接しやすい。明王は何より天邪鬼で意図が読みづらいから。
何より二人とも悔しいんだ。上手くできないことが、試合に出れないことが…その劣等感は明王の方がより強く感じていることもわかってる。
『守、二人のこと悪く思わないでね』
「わかってる、本当はいい奴なんだよな」
『うん、そう。ただ、不器用なだけ』
守はわかった、と言ってにかっと笑ってくれた。
僕も守は本当にわかってくれてると思ってる。
今日も飛鷹は響木監督のところへ行った。
守は飛鷹のことが気になって仕方が無いみたいだけど、深くは聞いて来なかった。
きっと、飛鷹本人から聞きたいのかもしれない。
数日の間、飛鷹は走り込みばかりしていた。
響木監督とはちゃんと練習してるんだろうけど。
でも、飛鷹も守も互いのことが少し気になるみたいだった。
『響木、監督…』
夜の雷雷軒で、あまり物をつかって料理している僕。
調理しながら話しかけた。
響木監督は客席で新聞を読みながら答える。
「どうした?」
『僕、思うんですけど』
「なんだ?」
中華鍋を振りながら、話を進める。
『飛鷹、守に興味示してますよね?』
響木監督は新聞を机に置いて、腕を組んだ。
「そうだな、円堂も気にかけてくれているみたいだった」
『そうですね、守なら…飛鷹のことわかってくれるんじゃないかって思います』
「それは俺も同じだ」
うん、守だから受け止めてくれる部分ってあると思うんだ。
だから、みんながその背に付いていく。
各々の背を預けられるんだって、思うんだ。
「時雨」
『なんですか?出来ましたよ、雷雷丼』
雷雷丼とは雷雷軒のあまり物で作ったまかない食。
響木監督はレンゲを持って、動きを止めた。
「俺も歳だ、少々具合が悪くてな」
『…っ!?』
「明日、病院へ行ってくる」
『練習は休みますか?』
「いや、円堂に任せようと思うんだが、お前どう思う?」
サングラスの奥にある強い意志を持った瞳。
僕はこくりと頷いた。
『僕も守に任せてみたいと思います。僕だけではさすがに限界があるのかもしれません』
「そうか…やっぱり、お前を代表候補から外すべきではなかったかもしれんな」
『選手とかサポートとか関係ないです、ただ』
「…ただ、」
『守みたいなまっすぐな光を、誰もが持ってるわけじゃない。あれは守の持ってる最大の魅力だって思うんです』
「光、か」
『僕は影や闇を伝えることが得意で、感じ取ることもできます。でも、守みたいな温かい大きな光は守にしか伝えられないから』
こくりと頷いて、響木監督は僕の作った雷雷丼を一口食べた。
「お前の言う通りだ、明日は円堂に任せる。…あと、上手いなこれ」
『はい!あ、ありがとうございます!』
守ならきっと…そう思うのは彼に多くを救われたから。円堂守という大きな光に託そうと思ったんだ。
翌日の夕方、守が出て行ったのに気付いて僕も付いていった。空き地にはいなかった。
どこに行ったんだろうと探していると、河川敷に人影を見た。
『あれは…』
対岸で見ていることにした。
なんか夢中になっている守と飛鷹を見ていると、わくわくしてくる。
あぁ、そうだ。
僕はサッカーが好きなんだ。みんなサッカーが好きであそこにいるんだってことなんだ。
「時雨」
『監督、やってますよ』
「そのようだな」
『それにしても、えらい薬の量ですね』
「まあな…」
『そんなに悪いんですか?』
「どうだろうな、だがあいつらには何も言うなよ…変な心配をかけるわけにはいかん」
『わかりました…黙ってます』
それだけ言うと、響木監督は店の方へ戻って行った。
僕は二人の様子を見ていた。
気が付けば、空は夜の帳に包まれている。
守が帰ったのを見計らって、河川敷に足を運んだ。
『飛鷹!』
「グレっ!何でここに?」
『ごめん、ずっと見てたんだ』
「ずっと?」
『そう、守と練習してるの見かけてさ』
驚いたように言葉を失う飛鷹。
『随分と上手くなったね』
「…そうか?」
『うん、何より楽しそうだったな』
「そうだな、楽しかった」
飛鷹の表情は柔らかく、どこか楽しげで、満足げだった。僕はそれが何よりも嬉しかった。
『もう少し練習してく?』
「あぁ、そのつもりだ」
『じゃあさ、僕ともサッカーしようよ、征矢!』
「っ、あぁ!」
初めて下の名前で呼んだ。
それは不良としての飛鷹征矢から、サッカー少年になった節目。
僕は飛鷹とサッカーをしばらくやっていた。
なんだか不思議な感じだけど、どこか嬉しかった。
「時雨ッ!」
征矢からパスを受け、久々にゴールへシュートを打つ。
『ガーディアン・デーモン!』
僕のシュートに驚く征矢。
それもそうか、と勝手に納得した。
「…今の、凄いな」
『あれが僕の必殺シュートなんだ』
「必殺技、か」
『征矢もすぐに出来るよ、だから見せてね…サッカー版の真空魔』
真空魔。
あれがフィールドで発揮される日が来ることを信じて。
ズキッ
身体に痛みが走る。
なんだろう、この妙に嫌な感じ。
「?… 時雨!?」
『大丈夫、なんでもない』
痛みで表情が歪んでいたのか、心配そうな征矢。
大丈夫だといえば、納得してなさそうな顔でしぶしぶ頷いた。
嵐の予感が気のせいであってほしいと、願った。
