男主/影山の息子
FFIアジア予選編
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案の定、反乱は起きた。
試合まではあと二日しかない。
チーム連携や、必殺技の調整をしたいに決まっている。
みんなの気持ちだってわからなくはないけど…
僕は久遠監督を信じると、信じて付いていくと決めたから。
あの頃の梅雨ちゃんのように。
『荒れてるなぁ…』
食堂でみんなと久遠監督の話を聞いていた。
することもないから、秋ちゃんたちと昼食の準備をした。
昼食を済ませ、さっさと部屋へ引き上げてしまった飛鷹。
「格好とかどこか不良っぽいですよね」
「そう?考えすぎよ」
春奈の言葉に、秋ちゃんが柔らかく受け流す。
冬花が首を傾げながら、僕に問いかけた。
「… 時雨くんには、飛鷹くんも話するのに」
「確かにふゆっぺの言う通りだな、時雨…何か知ってるのか?」
そんなに問い詰めなくても、と思ったけど、不思議そうにしていた守。
守だけじゃない、みんなそうだと思う。
飛鷹と、虎丸、明王の情報はあまりない。
人は情報のないものを怖いと思う、だからかみんなの警戒は解けない。
『僕が練習に付き合うから、よく話してくれるようになったんだよ』
なんとなく、そんなことを言って誤魔化したけど。
守は納得したように「そうかぁ」なんて言っていたけど、多分有人は納得してないんだろうな、なんて。
それから、欠流が情報を持ってきたとか言ってDVDを持ってきた。
僕は色々知っているから、見るまでもない。
食器の後片付けをしてから、飛鷹の部屋に向かった。
『トビー』
みんなはまだ食堂にいるから、あだ名で呼ぶ。
すると、部屋の戸ががらっと開いて入って来いと静かに言われた。
「どうかしたか」
部屋に入ると、響木監督から言われている練習をしていた飛鷹。
僕はちょこんと、ベッドに腰掛けた。
飛鷹は練習を続けている。
『…もうちょっと、みんなと仲良くしようよ』
「それをお前が言うか、グレ」
『それも、そうなんだけどさ』
確かに、過去の僕に仲間の温かさを教えてくれたのはトビーとアカリだった。
だからみんながトビーのもとに集まってくるのもわかる気がする。
『でも、ただでさえ顔怖いのに…1年がビビッちゃってたよ』
「人の悪口言ったのはあいつらだ」
『そういうものだよ、相手について情報がないと人間は怖くなる。だから、悪いように言って、近づかなくなるんだよ…近づかなければ安全でしょ?』
「……」
不意に飛鷹の動きが止まる。
何かを思いつめているんじゃないかな。
『…頼っていいんだよ、だから一人にならないで、トビー』
「グレ…悪ぃ」
『悪かないよ、ただ心配なだけ』
あんまり心配しなくていいと思うよ。
だって、どんな事情があっても、きっと守は受け止めてくれるから。
守がいる限り、このチームが支えてくれるから。
『もうちょっと、なんだけどな』
「…何がだ?」
『ん、トビーのサッカーって、センスはいいんだけど技術が追いついてなくて。もうちょっとで、前に進めそうな感じなんだけどなーって思って、つい声に』
「もうちょっと、か。全然上手くいきやしねーけどな」
『そんなことない。ちゃんと、歩き出してるよ』
にかっと笑うと、飛鷹はふっと微笑った。
このアニキ肌な感じがきっと、不良としてカリスマ性を持ってるんだろうな。
そんなことを思っていると、不意に外から飛鷹を呼ぶ声と、困ったような秋ちゃんの声がした。
『…トビー、』
「あぁ、行くぞ」
『うんっ』
慌てて駆け出した飛鷹の後を僕も追いかけた。
飛鷹が久遠監督に外出許可を請う。
すると、監督は僕を連れて行くなら構わないとあっさり許可を出した。
慌てて外へ出た飛鷹を追おうとして、久遠監督に呼び止められた。
「時雨」
『え、あ、はいっ』
「飛鷹のことは任せた」
『…、はい!』
僕は飛鷹の後を追って外へ出た。
「時雨くん…どうしよう」
『大丈夫、僕が付いてくから心配しないで?』
「…うん」
心配そうな秋ちゃん。
そりゃ、突然こんなことされたら驚くし、怖くもなると思う。
何より飛鷹に驚いているようで。
「行くぞ、グレ」
『あ、うん!行ってきます』
「気をつけてね、時雨くん」
心配してくれる秋ちゃんを背に、飛鷹を追いかけた。
響木監督、久遠監督、飛鷹のことはまかせてください。
飛鷹はスズメたちに戻ってきて欲しいと懇願された。しかし、サッカーに全てを賭けている飛鷹。戻る気はない、チームのメンバーを裏切るような形になった。
こういうとこ、僕と似てるんだよね。
僕もこうやって帝国を去り、サッカーをやめたんだっけ。
どういう形であれ、やってることは同じなんだよなぁ。
飛鷹と話をしながら宿舎へ戻る帰り道。
僕はお菓子を調達するために、コンビニに寄った。
「お前、コンビニ好きだな」
『そうだね、コンビニ好きなんだよ』
それはきっと飛鳥が教えてくれた、あの頃の些細な幸せだからだと思う。
「そんでもって抹茶とか紅茶とか好きで」
『あはは、それは否定できないな』
それから沢山お菓子を買って、宿舎へ戻った。
戻ってからは、宿舎中からボールの音がしていた。
『くーどうかんとくー』
「時雨、戻っていたか」
『この様子だと、監督の作戦通りって感じですね』
「あぁ、これで…試合の鍵は完成した。あとはそれに気付けるかどうか、選手次第だろうがな」
宿舎の外で、まじまじと見つめている久遠監督。この人の采配は意外性があるのに、的確で面白いと感じる。
明日の試合、自分は出ないはずなのにわくわくするんだ。
開会式が終わり、初戦が始まる。スターティングメンバーが発表され、試合が始まった。
オーストラリア戦は先制点を奪われて、前半は苦悩した。
その上、有人が怪我をした。
でも…
久遠監督の采配は凄かった。
敵にも味方にもわからないその奇策。巧妙に仕組まれた作戦は、本当に凄いって思ってわくわくした。
初戦は条介と修也の、それぞれ新しいシュートでゴールを奪い勝利した。
ただ、その試合の中で、僕は久遠監督の過去をみんなに話した。
響木監督がいいって言ってくれたから。
それは父さんの所為で起こった事件。
何より、梅雨ちゃんの関わったことだから、僕は知っていた。
今日の試合、見ててくれたかな…梅雨ちゃん。
その日、宿舎に戻ってから、修也の部屋に行った。
『しゅーやっ』
「時雨…」
『お疲れ様』
「いや、こんなところで疲れたなんて言ってられないさ」
修也は疲れた様子はなく、話してくれた。
だけど、少し膨れているような、怒っているような感じ。
『…ねぇ、修也』
「ん、どうかしたか?」
『うん…なんか、怒ってるのかなって』
「あぁ、別に怒ってるんじゃない。虎丸がシュートを打たなかったのが気にかかっているだけだ」
『確かにシュートチャンスはあったけど、打たなかったね』
「…なぜ、打たなかったんだ」
サッカーに関して、修也は厳しい。それは時に誰よりも。
だから、守や士郎は思いっきりシュートを受ける羽目になったんだけど。
『あんまり思いつめない方がいいよ、煮詰まっちゃうし』
「まぁ、そう言われたらそうなんだが」
困ったように言う修也。
僕は修也の首に腕を回して、抱きついた。
こうやって、くっついたりするのは久しぶりな気がする。
『無理、しないで…心配になる』
「… 時雨」
修也がきゅっと抱きしめてくれた。この温もりが何より大事で、大好きだ。
僕を抱きしめたまま、修也はごろんと横になる。
その日はそのまま、修也の部屋で眠ってしまった。
どうやら、疲れていたのは修也だけじゃなかったみたい。
「お前も無理するな、時雨」
眠る僕に優しくそう言って、額にキスしてくれたことを僕は知らない。
試合まではあと二日しかない。
チーム連携や、必殺技の調整をしたいに決まっている。
みんなの気持ちだってわからなくはないけど…
僕は久遠監督を信じると、信じて付いていくと決めたから。
あの頃の梅雨ちゃんのように。
『荒れてるなぁ…』
食堂でみんなと久遠監督の話を聞いていた。
することもないから、秋ちゃんたちと昼食の準備をした。
昼食を済ませ、さっさと部屋へ引き上げてしまった飛鷹。
「格好とかどこか不良っぽいですよね」
「そう?考えすぎよ」
春奈の言葉に、秋ちゃんが柔らかく受け流す。
冬花が首を傾げながら、僕に問いかけた。
「… 時雨くんには、飛鷹くんも話するのに」
「確かにふゆっぺの言う通りだな、時雨…何か知ってるのか?」
そんなに問い詰めなくても、と思ったけど、不思議そうにしていた守。
守だけじゃない、みんなそうだと思う。
飛鷹と、虎丸、明王の情報はあまりない。
人は情報のないものを怖いと思う、だからかみんなの警戒は解けない。
『僕が練習に付き合うから、よく話してくれるようになったんだよ』
なんとなく、そんなことを言って誤魔化したけど。
守は納得したように「そうかぁ」なんて言っていたけど、多分有人は納得してないんだろうな、なんて。
それから、欠流が情報を持ってきたとか言ってDVDを持ってきた。
僕は色々知っているから、見るまでもない。
食器の後片付けをしてから、飛鷹の部屋に向かった。
『トビー』
みんなはまだ食堂にいるから、あだ名で呼ぶ。
すると、部屋の戸ががらっと開いて入って来いと静かに言われた。
「どうかしたか」
部屋に入ると、響木監督から言われている練習をしていた飛鷹。
僕はちょこんと、ベッドに腰掛けた。
飛鷹は練習を続けている。
『…もうちょっと、みんなと仲良くしようよ』
「それをお前が言うか、グレ」
『それも、そうなんだけどさ』
確かに、過去の僕に仲間の温かさを教えてくれたのはトビーとアカリだった。
だからみんながトビーのもとに集まってくるのもわかる気がする。
『でも、ただでさえ顔怖いのに…1年がビビッちゃってたよ』
「人の悪口言ったのはあいつらだ」
『そういうものだよ、相手について情報がないと人間は怖くなる。だから、悪いように言って、近づかなくなるんだよ…近づかなければ安全でしょ?』
「……」
不意に飛鷹の動きが止まる。
何かを思いつめているんじゃないかな。
『…頼っていいんだよ、だから一人にならないで、トビー』
「グレ…悪ぃ」
『悪かないよ、ただ心配なだけ』
あんまり心配しなくていいと思うよ。
だって、どんな事情があっても、きっと守は受け止めてくれるから。
守がいる限り、このチームが支えてくれるから。
『もうちょっと、なんだけどな』
「…何がだ?」
『ん、トビーのサッカーって、センスはいいんだけど技術が追いついてなくて。もうちょっとで、前に進めそうな感じなんだけどなーって思って、つい声に』
「もうちょっと、か。全然上手くいきやしねーけどな」
『そんなことない。ちゃんと、歩き出してるよ』
にかっと笑うと、飛鷹はふっと微笑った。
このアニキ肌な感じがきっと、不良としてカリスマ性を持ってるんだろうな。
そんなことを思っていると、不意に外から飛鷹を呼ぶ声と、困ったような秋ちゃんの声がした。
『…トビー、』
「あぁ、行くぞ」
『うんっ』
慌てて駆け出した飛鷹の後を僕も追いかけた。
飛鷹が久遠監督に外出許可を請う。
すると、監督は僕を連れて行くなら構わないとあっさり許可を出した。
慌てて外へ出た飛鷹を追おうとして、久遠監督に呼び止められた。
「時雨」
『え、あ、はいっ』
「飛鷹のことは任せた」
『…、はい!』
僕は飛鷹の後を追って外へ出た。
「時雨くん…どうしよう」
『大丈夫、僕が付いてくから心配しないで?』
「…うん」
心配そうな秋ちゃん。
そりゃ、突然こんなことされたら驚くし、怖くもなると思う。
何より飛鷹に驚いているようで。
「行くぞ、グレ」
『あ、うん!行ってきます』
「気をつけてね、時雨くん」
心配してくれる秋ちゃんを背に、飛鷹を追いかけた。
響木監督、久遠監督、飛鷹のことはまかせてください。
飛鷹はスズメたちに戻ってきて欲しいと懇願された。しかし、サッカーに全てを賭けている飛鷹。戻る気はない、チームのメンバーを裏切るような形になった。
こういうとこ、僕と似てるんだよね。
僕もこうやって帝国を去り、サッカーをやめたんだっけ。
どういう形であれ、やってることは同じなんだよなぁ。
飛鷹と話をしながら宿舎へ戻る帰り道。
僕はお菓子を調達するために、コンビニに寄った。
「お前、コンビニ好きだな」
『そうだね、コンビニ好きなんだよ』
それはきっと飛鳥が教えてくれた、あの頃の些細な幸せだからだと思う。
「そんでもって抹茶とか紅茶とか好きで」
『あはは、それは否定できないな』
それから沢山お菓子を買って、宿舎へ戻った。
戻ってからは、宿舎中からボールの音がしていた。
『くーどうかんとくー』
「時雨、戻っていたか」
『この様子だと、監督の作戦通りって感じですね』
「あぁ、これで…試合の鍵は完成した。あとはそれに気付けるかどうか、選手次第だろうがな」
宿舎の外で、まじまじと見つめている久遠監督。この人の采配は意外性があるのに、的確で面白いと感じる。
明日の試合、自分は出ないはずなのにわくわくするんだ。
開会式が終わり、初戦が始まる。スターティングメンバーが発表され、試合が始まった。
オーストラリア戦は先制点を奪われて、前半は苦悩した。
その上、有人が怪我をした。
でも…
久遠監督の采配は凄かった。
敵にも味方にもわからないその奇策。巧妙に仕組まれた作戦は、本当に凄いって思ってわくわくした。
初戦は条介と修也の、それぞれ新しいシュートでゴールを奪い勝利した。
ただ、その試合の中で、僕は久遠監督の過去をみんなに話した。
響木監督がいいって言ってくれたから。
それは父さんの所為で起こった事件。
何より、梅雨ちゃんの関わったことだから、僕は知っていた。
今日の試合、見ててくれたかな…梅雨ちゃん。
その日、宿舎に戻ってから、修也の部屋に行った。
『しゅーやっ』
「時雨…」
『お疲れ様』
「いや、こんなところで疲れたなんて言ってられないさ」
修也は疲れた様子はなく、話してくれた。
だけど、少し膨れているような、怒っているような感じ。
『…ねぇ、修也』
「ん、どうかしたか?」
『うん…なんか、怒ってるのかなって』
「あぁ、別に怒ってるんじゃない。虎丸がシュートを打たなかったのが気にかかっているだけだ」
『確かにシュートチャンスはあったけど、打たなかったね』
「…なぜ、打たなかったんだ」
サッカーに関して、修也は厳しい。それは時に誰よりも。
だから、守や士郎は思いっきりシュートを受ける羽目になったんだけど。
『あんまり思いつめない方がいいよ、煮詰まっちゃうし』
「まぁ、そう言われたらそうなんだが」
困ったように言う修也。
僕は修也の首に腕を回して、抱きついた。
こうやって、くっついたりするのは久しぶりな気がする。
『無理、しないで…心配になる』
「… 時雨」
修也がきゅっと抱きしめてくれた。この温もりが何より大事で、大好きだ。
僕を抱きしめたまま、修也はごろんと横になる。
その日はそのまま、修也の部屋で眠ってしまった。
どうやら、疲れていたのは修也だけじゃなかったみたい。
「お前も無理するな、時雨」
眠る僕に優しくそう言って、額にキスしてくれたことを僕は知らない。
