男主/影山の息子
驚異の侵略者編
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吉良星二郎は抜けていったメンバーを侮辱した。
それは守を、みんなを傷付けた。
頭に血を上らせて、冷静な判断をさせないために。
『…母さん、私怨に塗れた嫌なサッカーを無くしてみせるよ』
それが星二郎さんを止める方法で父さんと同じにしないやり方。
そうすれば、これ以上僕みたいに傷つく人が増えずに済むと思う。
『守が、怒ってる…』
ヒロトやジェネシスは雷門を、守を挑発して、大技をぶちかます。
その刹那…修也と士郎に何か兆しが見える。
だけど、防戦一方の雷門は1点リードされたまま前半が終わる。
憤っていた守に瞳子監督や士郎が声をかける。
守は自分を殴って、目を醒ました。
「やろう、一緒に」
搭子の声にみんなが賛同する。
僕はまたチョコレートをぱりっとかじった。
「…大丈夫か、時雨」
「さっき、動きが止まってたから…気になって」
『修也、士郎…』
心配そうな二人に、ぱっと笑ってみせる。
『大丈夫、最後の約束をしてただけだから』
そう言うと、二人はにっと笑う。
大丈夫だよ…僕も守も、みんな一人じゃないんだ。
修也も士郎も、みんないるから大丈夫だ。
さぁ、フィールドへ行こう。
目を醒ました守はさっきまでとは違う。
前半とは真逆の展開にジェネシスは驚いている。
「どういうことだ!?動きが全然違うっ…」
『僕らは仲間を信じてる。だから、強くなれるんだよ、ウル』
「時雨っ」
デスゾーン2で1点を返す。
仲間がいれば、心のパワーは100倍にも1000倍にもなる。
守の言葉通り…僕らは常に進化している。
みんなでみんなをカバーして、支えあって進む。
それが雷門の「サッカー」なんだ。
「雷門のキーパーはお前だ、立向居っ」
「「「立向居っ」」」
『勇気っ、お前が一番強いキーパーだ!!』
この想いが勇気に届いてっ…!!
ムゲン・ザ・ハンドが進化する。
歯が立たなかったはずの勇気はさらに進化して、スーパーノヴァを止めた。
でも、そこへ血も涙もない星二郎さんの声がした。
“リミッター解除”
それは抑えていたジェネシスの力を解放する。
ただ、それは彼らの体を考えずにそのまま壊れろと言ってる。
まるで…あの時の父さんみたいに。
『ダメだっ!!ウル、やめろっ』
「黙れ、時雨…私は父さんの命令に従う」
全員がリミッターを解除すると、動きはさらに速くなった。
それは目で追えないくらいに。
リミッター解除されたジェネシスに圧倒される雷門。
こんなの…こんなの父親のやることじゃない。
世宇子みたいに、真・帝国みたいに、選手の体を道具みたいにしちゃいけない。
みんなの体が悲鳴を上げている。
「ジェネシスですら、道具なのかよ」
『…っ』
ぎりっと歯を食いしばる。
許せない、子供をも道具にするなんて…
もう、これ以上黙って聞いてられない。
『監督、僕と夕弥を変えてください』
「…時雨君、どうする気なの?」
きっと、高みの見物をしている星二郎さんを睨みつける。
『…僕の仕事は試合の他にもあるんですよ』
そう言って、視線を戻せば響木監督はこくりと頷く。
瞳子監督の瞳は揺れていたけど、夕弥は進み出てくれた。
「まかせなよ、俺頑張るから」
『…よろしくね、夕弥』
夕弥はきっと目付きを変えてピッチに入る。
「時雨!!」
『…修也、僕っ…』
「わかってるっ」
修也はこくりと頷いた。そして、静かにわかってるともう一度言った。
「俺はここで戦う。だがお前はお前のやりたいようにやれ、ここは任せろ」
『うん、僕も戦ってくる…気持ちはみんなと一緒にあるから』
こうして僕は再びグラウンドを飛び出し、星二郎さんの許へ急いだ。
殴りこむようにして、星二郎さんの部屋へ駆け込む。
星二郎さんは呑気な声で僕を迎えた。
「ここまで来ましたか、影山時雨君」
『てめぇ、いい加減にしろよ…』
デザームの時以来だ、言葉遣いさえ荒くなる。
腹が立ってしょうがない。
どうして、恨みに囚われて同じ過ちしかできないんだろうか。
『ジェネシスじゃ、あいつらには雷門には勝てねぇよ』
「ふん、そんなわけないじゃありませんか」
『見てみろよ』
そう言って、ガラスの向こうのグラウンドを指す。
すると、星二郎さんは驚愕した。
また、みんなが1点を返してくれた。
「そんな、バカな…」
『あいつらはみんなサッカーバカで、仲間思いだ、だから強くなれる』
グラウンドでは今再び、ジェネシスが勇気を襲っていた。
勇気はしっかりとボールを取り、ゴールを守っている。
「嘘だ…まさか、そんな」
『僕の父もそうだった。そう言って、三度彼らに敗れていった』
「…影山零治ですか」
『そう、あの人もあんたと同じように私怨でサッカーを汚した』
「同じ…ですか」
『そうだ、仲間を侮辱して、サッカーを汚して…同じように悪いことをした。』
星二郎さんが押し黙る。
『悪事を働いた人間に勝利なんかない』
視線はすっかりグラウンドに向いている。
グラウンドではみんなが繋いだボールにみんなの想いが集まっている。
ここにいる仲間だけじゃない。
悔しくも去っていた仲間たち、地方で応援している仲間。
みんなの想いがここにある。
ホイッスルが告げる。
試合終了と、雷門の勝利を。
星二郎さんはすっかり黙ってしまった。
「これが、心の力ですか」
搾り出したように星二郎さんは言う。
ジェネシスは負けた。
雷門の、ハートのあるサッカーに。
『そうだよ、これが影山零治を倒して、エイリア学園を倒したサッカーだ』
「…時雨君」
『見てよ、あのウルの涙を』
ウルは勝ちたかったと涙を流して、悔やんでいる。
これも全ては星二郎さんのため、愛する父の為にしたことだ。
『エイリア学園は貴方という存在で繋がっている組織だ』
「……」
『愛する父に愛されたくて、その父を思えばこその彼らの戦い』
「……」
『貴方は愛されてるんです…星二郎さん。
それを貴方に教えてやってほしいと、死んだ母は言いました』
「…水無月さんが、霧雨さんが」
『はい、だから…彼らの許へ行きましょう』
「…っ、しかし」
戸惑う星二郎さんの手を引く。
『彼らには貴方が必要なんです、もう父さんのようにしたくないから』
「…わかりました、時雨君」
僕は星二郎さんと一緒にみんなの許へ急いだ。
星二郎さんはヒロトや、瞳子監督に謝った。
きっと、後悔しているんだろうと思う。
エイリア学園、ジェネシス計画が間違っていたと気付いてくれた。
ただ、ウルは逆上した。
“貴方が否定するな”
そう言って、蹴ったボールは星二郎さんを襲う。
みんなに緊張が走る。
でも、僕は何故か大丈夫だと思った。
『…ヒロト』
星二郎さんを庇って、ヒロトがシュートをもろに受け膝をつく。
守が肩を貸し、なんとか立ち上がるヒロト。
彼らにとって父こそが世界の全てで、生きる全てだった。
だから否定されようが捨てられようがいい、父の為に何かしたいと思うんだろう。
そして、星二郎さんもわかっている。
自分がしでかしたことの大きさ、父を想うがゆえの彼らの強さ。
何より言えるのは、謝っても許されることじゃないことだってこと。
星二郎さんは今一度、ウルにボールを渡した。
それで気が済むのなら打てと。
(そんなわけない…だって、ウルもヒロトも、星二郎さんが大好きだから)
「私にとっても大切な父さんなんだっ…」
『ウル…』
彼女の涙は綺麗だった。
止め処なく溢れる涙は彼らのウルの想いの大きさを強さを物語っていた。
『ウル、ちゃんとお父さんと和解してね』
「時雨っ…」
手を差し伸べれば、縋るように手を取りなき続けるウル。
ウルだけじゃない…ジェネシスみんなが目に涙を浮かべていた。
『お父さん、いい人だから…きっと大丈夫だよ』
「…そんなこと、わかってるっ」
『うん、そうだね』
僕は父さんと和解することはできなかった。
きっと、生きているだろうあの人とこの先も和解できるなんて思わない。
だからこそ、ウルやヒロト、瞳子監督にジェネシスと星二郎さんはちゃんと和解してほしいと思う。
鬼瓦さんや梅雨ちゃんが来て、星二郎さんはエイリア学園の経緯を話した。
僕はある程度聞いていたから動じなかったけど、それは衝撃だったと思う。
梅雨ちゃんも知っていたみたいで、悔しそうに頭を下げていた。
「梅雨君、随分立派になりました。弟君にも世話になってしまった。
大人として、親として、私は情けないでしょう…本当に申し訳ない」
「父さん…」「吉良さん」
恐らく刑事になったのは僕の為だけじゃない。
瞳子監督の為でもあったんだ。
肉親を失う悲しみを自分も知っていたから。
ズキンッ
『あ゛っ…』
「時雨!?円堂、グラン、時雨がっ」
星二郎さんの話を聞いていた僕の首筋に突如痛みが走る。
久しぶりに来るこの感覚。
何かよくないことが起こる前兆だと思う。
すかさず修也が駆けつけてくれた。
「時雨、痛むのか?!」
『うん、それより…みんな気をつけて』
何かある、そう思ったときだった。
星の使徒本部が大きく揺れた。
その場が騒然となる。
逃げるにも瓦礫で道が塞がってしまった。
そこへ車の音がして、キャラバンを操る古株さんが乗り込んできてくれた。
敵も味方もない、みんなが慌ててキャラバンに乗り込む。
『梅雨っ、星二郎さんがっ!!』
「お父さんっ」「吉良さんっ」
ただ、星二郎さんがその場から動こうとしない。
ここで命を絶つ気なんだと瞬時に悟った。
僕は修也とウルに引きずられて、キャラバンに乗り込んだ。
星二郎さんは守とヒロトに説得され、梅雨ちゃんに抱えられて搭乗した。
キャラバンはなんとか星の使徒本部を抜け、全員が助かった。
落ち着いてから梅雨ちゃんに聞いた。
イプシロンやジェミニのみんなも無事だったという。
星二郎さんは逮捕された。
でも、梅雨ちゃんが俺に任せろって言ってたから大丈夫だと思う。
「みんな、本当にありがとう」
瞳子監督はお日さま園に戻るため、そう言ってヒロトたちと帰っていった。
みんなで星二郎さんの帰りを待つんだろう。
帰る家があるのはいいことだ…
僕も、一回家に帰ることを考えておかなkyちゃいけない。
「…時雨、ありがとう」
『ウル、僕の方こそありがとう』
そう言うと、ウルはふふっと微笑んだ。
その笑顔はどこか瞳子監督に似ているような気がした。
「また、お前とサッカーできるか?」
『梅雨ちゃんがお日さま園行く時についてくよ』
「そうか…そうだったな」
ウルに手を差し出される。
僕は笑いかけて、その手を取った。
『さっきと逆だね』
「あぁ…そうだな。また会うときまで、元気で」
『うん、ウルもみんなも元気でね』
こくりと頷いて、ウルはみんなとお日さま園へ帰っていった。
これ以上彼らを苦しめるものはない。
家族みんなで、お父さんの帰りを待っていくんだろうな。
僕らもまたキャラバンで東京へと帰る。
修也と士郎の間に座って、キャラバンに揺られる。
「これで平和に暮らせるね」
『そうだね、士郎。修也は早く夕香ちゃんに会いたいでしょ」
窓を見ていた修也がぱっと振り返って笑う。
「そうだな、一緒に行くか」
『うん、そうだね』
「その後はデートするの?」
「『えっ!?』」
士郎の言葉に二人で赤面する。
ふふっと、士郎は面白がって笑っていた。
「普段から一緒にいるからな、そいつらは」
『ゆ、有人っ!!』
「俺が一緒にいるとスッゲー豪炎寺睨んでくるしな」
「…もう、やめてくれ…土門」
「あら、時雨君を泣かしたら理事長代理としてただじゃおかなくてよ?」
「お菓子がかりの私も、忘れてもらっちゃ困りますよ」
『夏未ちゃんに春奈まで…』
次から次へとみんなが茶化すから、キャラバンの中はすっかり賑やかだった。
守も搭子も爆笑してるし、リカちゃんも便乗して一哉に迫っていた。
でも、この賑やかさが雷門だと思う。
やっぱり、いいなぁ…雷門は。
キャラバンは雷門中を目指して、走る。
このとき、僕らは気付いてなかったんだ。
脅威はまだ終わっていないということに。
わずかに残る首筋の痛みなんて、気にも留めていなかった。
それは守を、みんなを傷付けた。
頭に血を上らせて、冷静な判断をさせないために。
『…母さん、私怨に塗れた嫌なサッカーを無くしてみせるよ』
それが星二郎さんを止める方法で父さんと同じにしないやり方。
そうすれば、これ以上僕みたいに傷つく人が増えずに済むと思う。
『守が、怒ってる…』
ヒロトやジェネシスは雷門を、守を挑発して、大技をぶちかます。
その刹那…修也と士郎に何か兆しが見える。
だけど、防戦一方の雷門は1点リードされたまま前半が終わる。
憤っていた守に瞳子監督や士郎が声をかける。
守は自分を殴って、目を醒ました。
「やろう、一緒に」
搭子の声にみんなが賛同する。
僕はまたチョコレートをぱりっとかじった。
「…大丈夫か、時雨」
「さっき、動きが止まってたから…気になって」
『修也、士郎…』
心配そうな二人に、ぱっと笑ってみせる。
『大丈夫、最後の約束をしてただけだから』
そう言うと、二人はにっと笑う。
大丈夫だよ…僕も守も、みんな一人じゃないんだ。
修也も士郎も、みんないるから大丈夫だ。
さぁ、フィールドへ行こう。
目を醒ました守はさっきまでとは違う。
前半とは真逆の展開にジェネシスは驚いている。
「どういうことだ!?動きが全然違うっ…」
『僕らは仲間を信じてる。だから、強くなれるんだよ、ウル』
「時雨っ」
デスゾーン2で1点を返す。
仲間がいれば、心のパワーは100倍にも1000倍にもなる。
守の言葉通り…僕らは常に進化している。
みんなでみんなをカバーして、支えあって進む。
それが雷門の「サッカー」なんだ。
「雷門のキーパーはお前だ、立向居っ」
「「「立向居っ」」」
『勇気っ、お前が一番強いキーパーだ!!』
この想いが勇気に届いてっ…!!
ムゲン・ザ・ハンドが進化する。
歯が立たなかったはずの勇気はさらに進化して、スーパーノヴァを止めた。
でも、そこへ血も涙もない星二郎さんの声がした。
“リミッター解除”
それは抑えていたジェネシスの力を解放する。
ただ、それは彼らの体を考えずにそのまま壊れろと言ってる。
まるで…あの時の父さんみたいに。
『ダメだっ!!ウル、やめろっ』
「黙れ、時雨…私は父さんの命令に従う」
全員がリミッターを解除すると、動きはさらに速くなった。
それは目で追えないくらいに。
リミッター解除されたジェネシスに圧倒される雷門。
こんなの…こんなの父親のやることじゃない。
世宇子みたいに、真・帝国みたいに、選手の体を道具みたいにしちゃいけない。
みんなの体が悲鳴を上げている。
「ジェネシスですら、道具なのかよ」
『…っ』
ぎりっと歯を食いしばる。
許せない、子供をも道具にするなんて…
もう、これ以上黙って聞いてられない。
『監督、僕と夕弥を変えてください』
「…時雨君、どうする気なの?」
きっと、高みの見物をしている星二郎さんを睨みつける。
『…僕の仕事は試合の他にもあるんですよ』
そう言って、視線を戻せば響木監督はこくりと頷く。
瞳子監督の瞳は揺れていたけど、夕弥は進み出てくれた。
「まかせなよ、俺頑張るから」
『…よろしくね、夕弥』
夕弥はきっと目付きを変えてピッチに入る。
「時雨!!」
『…修也、僕っ…』
「わかってるっ」
修也はこくりと頷いた。そして、静かにわかってるともう一度言った。
「俺はここで戦う。だがお前はお前のやりたいようにやれ、ここは任せろ」
『うん、僕も戦ってくる…気持ちはみんなと一緒にあるから』
こうして僕は再びグラウンドを飛び出し、星二郎さんの許へ急いだ。
殴りこむようにして、星二郎さんの部屋へ駆け込む。
星二郎さんは呑気な声で僕を迎えた。
「ここまで来ましたか、影山時雨君」
『てめぇ、いい加減にしろよ…』
デザームの時以来だ、言葉遣いさえ荒くなる。
腹が立ってしょうがない。
どうして、恨みに囚われて同じ過ちしかできないんだろうか。
『ジェネシスじゃ、あいつらには雷門には勝てねぇよ』
「ふん、そんなわけないじゃありませんか」
『見てみろよ』
そう言って、ガラスの向こうのグラウンドを指す。
すると、星二郎さんは驚愕した。
また、みんなが1点を返してくれた。
「そんな、バカな…」
『あいつらはみんなサッカーバカで、仲間思いだ、だから強くなれる』
グラウンドでは今再び、ジェネシスが勇気を襲っていた。
勇気はしっかりとボールを取り、ゴールを守っている。
「嘘だ…まさか、そんな」
『僕の父もそうだった。そう言って、三度彼らに敗れていった』
「…影山零治ですか」
『そう、あの人もあんたと同じように私怨でサッカーを汚した』
「同じ…ですか」
『そうだ、仲間を侮辱して、サッカーを汚して…同じように悪いことをした。』
星二郎さんが押し黙る。
『悪事を働いた人間に勝利なんかない』
視線はすっかりグラウンドに向いている。
グラウンドではみんなが繋いだボールにみんなの想いが集まっている。
ここにいる仲間だけじゃない。
悔しくも去っていた仲間たち、地方で応援している仲間。
みんなの想いがここにある。
ホイッスルが告げる。
試合終了と、雷門の勝利を。
星二郎さんはすっかり黙ってしまった。
「これが、心の力ですか」
搾り出したように星二郎さんは言う。
ジェネシスは負けた。
雷門の、ハートのあるサッカーに。
『そうだよ、これが影山零治を倒して、エイリア学園を倒したサッカーだ』
「…時雨君」
『見てよ、あのウルの涙を』
ウルは勝ちたかったと涙を流して、悔やんでいる。
これも全ては星二郎さんのため、愛する父の為にしたことだ。
『エイリア学園は貴方という存在で繋がっている組織だ』
「……」
『愛する父に愛されたくて、その父を思えばこその彼らの戦い』
「……」
『貴方は愛されてるんです…星二郎さん。
それを貴方に教えてやってほしいと、死んだ母は言いました』
「…水無月さんが、霧雨さんが」
『はい、だから…彼らの許へ行きましょう』
「…っ、しかし」
戸惑う星二郎さんの手を引く。
『彼らには貴方が必要なんです、もう父さんのようにしたくないから』
「…わかりました、時雨君」
僕は星二郎さんと一緒にみんなの許へ急いだ。
星二郎さんはヒロトや、瞳子監督に謝った。
きっと、後悔しているんだろうと思う。
エイリア学園、ジェネシス計画が間違っていたと気付いてくれた。
ただ、ウルは逆上した。
“貴方が否定するな”
そう言って、蹴ったボールは星二郎さんを襲う。
みんなに緊張が走る。
でも、僕は何故か大丈夫だと思った。
『…ヒロト』
星二郎さんを庇って、ヒロトがシュートをもろに受け膝をつく。
守が肩を貸し、なんとか立ち上がるヒロト。
彼らにとって父こそが世界の全てで、生きる全てだった。
だから否定されようが捨てられようがいい、父の為に何かしたいと思うんだろう。
そして、星二郎さんもわかっている。
自分がしでかしたことの大きさ、父を想うがゆえの彼らの強さ。
何より言えるのは、謝っても許されることじゃないことだってこと。
星二郎さんは今一度、ウルにボールを渡した。
それで気が済むのなら打てと。
(そんなわけない…だって、ウルもヒロトも、星二郎さんが大好きだから)
「私にとっても大切な父さんなんだっ…」
『ウル…』
彼女の涙は綺麗だった。
止め処なく溢れる涙は彼らのウルの想いの大きさを強さを物語っていた。
『ウル、ちゃんとお父さんと和解してね』
「時雨っ…」
手を差し伸べれば、縋るように手を取りなき続けるウル。
ウルだけじゃない…ジェネシスみんなが目に涙を浮かべていた。
『お父さん、いい人だから…きっと大丈夫だよ』
「…そんなこと、わかってるっ」
『うん、そうだね』
僕は父さんと和解することはできなかった。
きっと、生きているだろうあの人とこの先も和解できるなんて思わない。
だからこそ、ウルやヒロト、瞳子監督にジェネシスと星二郎さんはちゃんと和解してほしいと思う。
鬼瓦さんや梅雨ちゃんが来て、星二郎さんはエイリア学園の経緯を話した。
僕はある程度聞いていたから動じなかったけど、それは衝撃だったと思う。
梅雨ちゃんも知っていたみたいで、悔しそうに頭を下げていた。
「梅雨君、随分立派になりました。弟君にも世話になってしまった。
大人として、親として、私は情けないでしょう…本当に申し訳ない」
「父さん…」「吉良さん」
恐らく刑事になったのは僕の為だけじゃない。
瞳子監督の為でもあったんだ。
肉親を失う悲しみを自分も知っていたから。
ズキンッ
『あ゛っ…』
「時雨!?円堂、グラン、時雨がっ」
星二郎さんの話を聞いていた僕の首筋に突如痛みが走る。
久しぶりに来るこの感覚。
何かよくないことが起こる前兆だと思う。
すかさず修也が駆けつけてくれた。
「時雨、痛むのか?!」
『うん、それより…みんな気をつけて』
何かある、そう思ったときだった。
星の使徒本部が大きく揺れた。
その場が騒然となる。
逃げるにも瓦礫で道が塞がってしまった。
そこへ車の音がして、キャラバンを操る古株さんが乗り込んできてくれた。
敵も味方もない、みんなが慌ててキャラバンに乗り込む。
『梅雨っ、星二郎さんがっ!!』
「お父さんっ」「吉良さんっ」
ただ、星二郎さんがその場から動こうとしない。
ここで命を絶つ気なんだと瞬時に悟った。
僕は修也とウルに引きずられて、キャラバンに乗り込んだ。
星二郎さんは守とヒロトに説得され、梅雨ちゃんに抱えられて搭乗した。
キャラバンはなんとか星の使徒本部を抜け、全員が助かった。
落ち着いてから梅雨ちゃんに聞いた。
イプシロンやジェミニのみんなも無事だったという。
星二郎さんは逮捕された。
でも、梅雨ちゃんが俺に任せろって言ってたから大丈夫だと思う。
「みんな、本当にありがとう」
瞳子監督はお日さま園に戻るため、そう言ってヒロトたちと帰っていった。
みんなで星二郎さんの帰りを待つんだろう。
帰る家があるのはいいことだ…
僕も、一回家に帰ることを考えておかなkyちゃいけない。
「…時雨、ありがとう」
『ウル、僕の方こそありがとう』
そう言うと、ウルはふふっと微笑んだ。
その笑顔はどこか瞳子監督に似ているような気がした。
「また、お前とサッカーできるか?」
『梅雨ちゃんがお日さま園行く時についてくよ』
「そうか…そうだったな」
ウルに手を差し出される。
僕は笑いかけて、その手を取った。
『さっきと逆だね』
「あぁ…そうだな。また会うときまで、元気で」
『うん、ウルもみんなも元気でね』
こくりと頷いて、ウルはみんなとお日さま園へ帰っていった。
これ以上彼らを苦しめるものはない。
家族みんなで、お父さんの帰りを待っていくんだろうな。
僕らもまたキャラバンで東京へと帰る。
修也と士郎の間に座って、キャラバンに揺られる。
「これで平和に暮らせるね」
『そうだね、士郎。修也は早く夕香ちゃんに会いたいでしょ」
窓を見ていた修也がぱっと振り返って笑う。
「そうだな、一緒に行くか」
『うん、そうだね』
「その後はデートするの?」
「『えっ!?』」
士郎の言葉に二人で赤面する。
ふふっと、士郎は面白がって笑っていた。
「普段から一緒にいるからな、そいつらは」
『ゆ、有人っ!!』
「俺が一緒にいるとスッゲー豪炎寺睨んでくるしな」
「…もう、やめてくれ…土門」
「あら、時雨君を泣かしたら理事長代理としてただじゃおかなくてよ?」
「お菓子がかりの私も、忘れてもらっちゃ困りますよ」
『夏未ちゃんに春奈まで…』
次から次へとみんなが茶化すから、キャラバンの中はすっかり賑やかだった。
守も搭子も爆笑してるし、リカちゃんも便乗して一哉に迫っていた。
でも、この賑やかさが雷門だと思う。
やっぱり、いいなぁ…雷門は。
キャラバンは雷門中を目指して、走る。
このとき、僕らは気付いてなかったんだ。
脅威はまだ終わっていないということに。
わずかに残る首筋の痛みなんて、気にも留めていなかった。