男主/影山の息子
驚異の侵略者編
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イプシロン改との一戦。
DFに徹していた士郎がデザームに煽られ、アツヤとして攻め込む。
しかし、どんどん追い込まれていく想いに力は比例し弱まってしまった。
ついにデザームの言葉で士郎とアツヤは崩れ落ちてしまう。
“必要ない”
それは士郎にとっても、アツヤにとっても心に深く突き刺さるものだった。
戦意を失った士郎は最早ピッチに立つことも敵わない。
『士郎、僕は士郎は自分の意志でピッチに戻ってくるのを信じてるからね』
ベンチに座る士郎に声を掛ける。
返事がないのもわかってはいるけど、ちゃんと言葉で伝えておきたかった。
士郎は一人ぼっちじゃないんだってこと。
デザームがつまらなそうな顔をしていることに腹が立つ。
こんなにも仲間を傷つけて、関係のない人たちを不安がらせて…
『あー、もうっ!!』
頭をわしゃわしゃと掻きながら、何をするべきか考える。
あぁ、なんかまどろっこしいな…
どこかで、何かのブチ切れる音がした。
この感覚久しぶりかもしれない。
『…本気でぶっ飛ばす』
そうこぼして前を向けば、デザームとばっちり目が合った。
「…なんだ貴様は」
『なんでもない、ただのサッカー部員だ』
腸煮えくり返って、頭に血が上ってる感じ。
昔はこんなのばっかりだった。
うん、そうだ…こんな感じだったんだ。
一度燃え尽きる前は、こんなんだったんだっけ。
「影山時雨、か…」
デザームは僕にボールを渡した。
シュートしてみろってことなんだろう。
『…後悔するなよ、デザーム』
かなり近い距離から、全力に近い力加減でシュートするなんてことはまずない。
これがどれくらいの威力を持つかなんて、わからない。
でも相手のことを心配する以前の問題だった。
超が何個つくかわからないくらい、腹が立っていた。
『ガーディアン・デーモンッ!!!!』
もうサッカーなんかじゃない。
僕とデザームのガチでの力比べだ。
「ワーム…ホールッ」
シュートは吸い込まれる、でも…吸い込まれた時空の出口が光りだす。
「…!?」
デザームの顔面に直撃し、そのままボールと一緒にゴールした。
サッカーどうこうよりも久々の苛立つ感覚。
でも、それ以上にゴールに入った驚きが感情を支配していた。
『は、いった…』
ただこのシュートがデザームの闘志に火をつけることとなってしまう。
「フッ…フフフ、フハハハハハ!!!!」
僕のシュートを受け、笑い出したデザーム。
なんというか、こう不気味だ。
「いいシュートだ…ワームホールを破るとは思わなかったぞ」
『まさか入るとは思わないけどな…』
機嫌のいいデザームに僕は苦笑で返す。
なんかこう、まともな状態で相手にできるような奴じゃない。
経験論でわかる、こいつは絶対にヤバい。
「…私を本気にさせるとは、面白い」
『え…』
本気、だったのに…まだ上があるってことかな。
さっきのが引き金になっているとはいえ、かなりマズい展開だ。
『本気って、今までのは!?』
「本気だったぞ、キーパーのな」
『嘘、だ…』
にやりと笑ったデザームは古株さんに申し出た。
FWのゼルとGKのデザームのポジションチェンジ。
雷門サイドも観客も騒然とした。
普通、こんなチェンジは滅多なことじゃ有り得ない。
そこからが地獄だった。
圧倒的なデザームの力の前に誰も追いつくことも防ぐこともできなくて…
正義の鉄拳をあっさり粉砕し、1点を返され前半が終了した。
本来のポジションに戻ったデザームは本当に脅威だった。
ハーフタイム、雷門サイドは暗かった。
正義の鉄拳を破られるも、守備はみんなで固めることになった。
ただ、攻撃は…点が入らなければ勝てない。
「…時雨、お前キレたな」
『やっぱり…わかる?』
「昔、お前に何度ボコボコにされたことか…」
『そう、でした…』
有人、それに飛鳥はわかってくれていた。
帝国時代の悪い癖、気が短くてすぐに手が出る…さっきのシュートはそれに近かった。
有人は少し悪戯っぽく笑いながら、僕にスコーンと牛乳を差し出した。
「お前はもそもそした食い物が好きだからな」
『…覚えてたんだ?』
「まあな」
結局、この幼馴染の理解力は侮りがたいってことだ。
「後半も頼むぞ」
『…またキレたらごめん』
「構うか、それもお前の一部だ」
『ありがと』
「あぁ」
最後ににっと笑ってピッチに戻る有人。
後ろから条介に「お前らどういう関係?」って聞かれたから短く「幼馴染」と返した。
搭子には「出たな、キレキャラ」と笑われた。
うん、キレたって何したってみんなと一緒なら大丈夫。
こうして僕らは後半戦に臨む。
後半、イプシロンは雷門を潰しにかかった。
そんなことはさせまいと奮闘するものの、力の差は歴然で…
ほとんど、守と僕に対してデザームという勝負になっていた。
デザームがフィールドに出ると、こんなにも力の差が出るのかと思った。
『…守』
「なんだよ、時雨…こんな時に」
『こんな時だからだ』
「…?」
不思議そうな顔をしている守を背にそのまま話を続ける。
『未完成っていうのをマイナスに考えちゃいけないよ』
「…どういう意味だ?」
『例えば、僕はずっと影の力は悪いものだと思っていた。
でも、それは単なる考え方の問題だったんだ…影が悪なんじゃない。
影は一番の支えで、みんなを守って上げられる存在だったんだ…』
「それが、あのシュートか」
『うん、ガーディアン・デーモン。
これを気付かせてくれた人と完成させたんだ…だから、』
「未完成ってことを、違う意味で考えろってことだな!!」
『そういうことっ』
それだけ言って、振り返れば何かに気が付いた守が笑っていた。
デーモン・ハンドではデザームは止められない。
でも、守がいる…だからゴールはもう割らせない。
「正義の…鉄拳!!!!」
守はグングニルを破った。
雷門のゴールを守ってくれた。
その時、こぼれたボールを受けた人がいた。
目を疑った。
本当に、本当に…夢じゃないって。
『修也!!』
「待たせたな」
その一言がどれだけ嬉しかったか。
守の返した言葉はそういえばなんて思って笑った。
「お前はいつも遅いんだよ!!」
みんなの目に輝きが戻る。
あぁ、そうだ…これがエースストライカーの力。
みんなを引っ張っていってくれる、大きな光。
『修也』
「…時雨」
『これ、返すね』
そう言って銀色のペンダントを首から外して手渡す。
修也は目を細めて、ペンダントを自分の首元に戻した。
「時雨、まだ動けるか?」
『もちろん、修也が戻ってたのに休んでらんないよっ』
修也はふっと笑って、「行くぞ」と言った。
試合は再開した途端に修也とデザームの一騎打ち。
でも、華麗にボールを奪いさらにパワーアップしたシュート。
みんなが見惚れていたんじゃないかと思う。
そのファイアトルネードを見たデザームはキーパーに戻った。
『…僕を止められないのに、修也を止めるのは不可能だよ』
デザームはまだ修也を侮っている、そうじゃなかったらもう彼の維持だろう。
修也が戻って来たことで士気の上がった雷門はもう止まらない。
あっという間に修也にボールが渡った。
そして、修也の新必殺技には敵味方関係なく全員が驚いたに違いない。
こうして、豪炎寺修也復活に加え、雷門はイプシロン改に勝利した。
ここにも守らしい一面があって、デザームや他のメンバーにも温かく声をかける。
“サッカーの楽しさを知って欲しい”
なんて守るらしくて、平和なんだろうか。
心が温かくなる。優しくなる。
彼らとだって和解できるんだと、そう思っていたのも束の間だった。
ダイヤモンドダストのキャプテン・ガゼルの制裁によって消されてしまう。
これがエイリア学園。
利用価値がないものは必要ない、そういう理念の下で構成された組織。
かつての帝国学園のように、父さんのように…
でも、今は…今は帰ってきた修也におかえりを言う。
それを僕は僕たちはずっと待ち望んでいた。
みんなから歓喜の声が上がった。
『…修也、おかえり』
「ただいま、時雨」
目の前に修也がいる、その事実がどれほど嬉しくて幸せか。
本当に嬉しくて仕方がなかった。
そして、ここで語られる修也の去った理由。
鬼瓦さんと梅雨ちゃん、雷電から話される事件の真相。
『って、梅雨ちゃんと雷電グルだったんだ?』
「一応ヒントは言ったぜ?お前の兄貴に世話になってる…ってな」
『それって現在進行形だったの!?』
「悪く思うなって」
おどけたように笑う雷電を小突く。
そしたら、後ろで梅雨ちゃんがからから笑っていた。
『あれ、ということは…』
僕がそう言いかけると、梅雨ちゃんに抱き上げられる。
小さい時からそんなことされたことなくて、吃驚して、梅雨ちゃんを殴った。
そしたら雷電は「乱暴だな、お前」って言われた。
「ホント、お前乱暴だっつーに」
『あ、あんなん吃驚するって』
「可愛いけど可愛くないな、時雨は」
『やかましいっ』
そう言ってみれば、またカラカラと笑う兄。
本当はこうやって一緒に育っていくべきはずだったんだろうな…なんて。
過去を捏造しても仕方がないんだけど。
兄弟でバカやってたら、修也が梅雨ちゃんに話しかけた。
「梅雨さん、ありがとうございました」
「いーや、お前が雷電とサッカーしてたのをまぁアドバイスしただけだって」
「それでも二人がいなかったら俺は…」
「弟が世話になってる礼だと思えよ、修也」
梅雨ちゃんにぽふっと頭に手を置かれる。
あぁ、もう…この人は、いやこの人たちは。
あったかい。
心が満たされるような感覚だ。
修也が戻ってきて、みんなは楽しそうに練習を始めた。
僕は梅雨ちゃんと鬼瓦さんが先に本土に戻るというので、港まで送った。
「時雨、ごめんな…バタバタしてて」
『ううん、エイリア学園の一件は終わったわけじゃないから』
梅雨ちゃんはふっと笑って、僕の髪をくしゃくしゃと撫で回した。
少し痛くて、どこか優しい。
大きくてあったかい手はじーちゃんを思い出させる。
「梅雨、貴方も無理はしないで」
「時雨のことは頼むな、瞳子」
「エイリア学園の一件は貴方にまかせるわ」
「あぁ…弟たちを、見ててくれ」
『梅雨ちゃんも鬼瓦さんに迷惑かけないようにね』
「わかってるって、時雨」
にっと笑う梅雨ちゃんに釣られてにっと笑って見せた。
珍しく、瞳子監督も微笑んでいた。
「じゃあな、瞳子、時雨」
「気をつけて行きなさい」
『僕も頑張るよ、梅雨ちゃん』
威勢よく返事をして、梅雨ちゃんは本土に帰って行った。
「…時雨君」
『なんですか、監督』
瞳子監督は少し寂しそうなどこか複雑な面持ちだった。
「以前言ってくれたこと、覚えているかしら」
『貴方を信じると言った事ですか』
「えぇ…その言葉、昔梅雨にも言われたわ」
そう言って、またふっと笑う監督。
「共通の記憶なんてないのに、心が似ているのはやっぱり兄弟なのね」
『そう、かもしれません』
監督は踵を返し、歩き出す。
小走りで追いつけば、彼女は前を向いたまま小さな声で言った。
「私も貴方達のこと、信じているわ」
DFに徹していた士郎がデザームに煽られ、アツヤとして攻め込む。
しかし、どんどん追い込まれていく想いに力は比例し弱まってしまった。
ついにデザームの言葉で士郎とアツヤは崩れ落ちてしまう。
“必要ない”
それは士郎にとっても、アツヤにとっても心に深く突き刺さるものだった。
戦意を失った士郎は最早ピッチに立つことも敵わない。
『士郎、僕は士郎は自分の意志でピッチに戻ってくるのを信じてるからね』
ベンチに座る士郎に声を掛ける。
返事がないのもわかってはいるけど、ちゃんと言葉で伝えておきたかった。
士郎は一人ぼっちじゃないんだってこと。
デザームがつまらなそうな顔をしていることに腹が立つ。
こんなにも仲間を傷つけて、関係のない人たちを不安がらせて…
『あー、もうっ!!』
頭をわしゃわしゃと掻きながら、何をするべきか考える。
あぁ、なんかまどろっこしいな…
どこかで、何かのブチ切れる音がした。
この感覚久しぶりかもしれない。
『…本気でぶっ飛ばす』
そうこぼして前を向けば、デザームとばっちり目が合った。
「…なんだ貴様は」
『なんでもない、ただのサッカー部員だ』
腸煮えくり返って、頭に血が上ってる感じ。
昔はこんなのばっかりだった。
うん、そうだ…こんな感じだったんだ。
一度燃え尽きる前は、こんなんだったんだっけ。
「影山時雨、か…」
デザームは僕にボールを渡した。
シュートしてみろってことなんだろう。
『…後悔するなよ、デザーム』
かなり近い距離から、全力に近い力加減でシュートするなんてことはまずない。
これがどれくらいの威力を持つかなんて、わからない。
でも相手のことを心配する以前の問題だった。
超が何個つくかわからないくらい、腹が立っていた。
『ガーディアン・デーモンッ!!!!』
もうサッカーなんかじゃない。
僕とデザームのガチでの力比べだ。
「ワーム…ホールッ」
シュートは吸い込まれる、でも…吸い込まれた時空の出口が光りだす。
「…!?」
デザームの顔面に直撃し、そのままボールと一緒にゴールした。
サッカーどうこうよりも久々の苛立つ感覚。
でも、それ以上にゴールに入った驚きが感情を支配していた。
『は、いった…』
ただこのシュートがデザームの闘志に火をつけることとなってしまう。
「フッ…フフフ、フハハハハハ!!!!」
僕のシュートを受け、笑い出したデザーム。
なんというか、こう不気味だ。
「いいシュートだ…ワームホールを破るとは思わなかったぞ」
『まさか入るとは思わないけどな…』
機嫌のいいデザームに僕は苦笑で返す。
なんかこう、まともな状態で相手にできるような奴じゃない。
経験論でわかる、こいつは絶対にヤバい。
「…私を本気にさせるとは、面白い」
『え…』
本気、だったのに…まだ上があるってことかな。
さっきのが引き金になっているとはいえ、かなりマズい展開だ。
『本気って、今までのは!?』
「本気だったぞ、キーパーのな」
『嘘、だ…』
にやりと笑ったデザームは古株さんに申し出た。
FWのゼルとGKのデザームのポジションチェンジ。
雷門サイドも観客も騒然とした。
普通、こんなチェンジは滅多なことじゃ有り得ない。
そこからが地獄だった。
圧倒的なデザームの力の前に誰も追いつくことも防ぐこともできなくて…
正義の鉄拳をあっさり粉砕し、1点を返され前半が終了した。
本来のポジションに戻ったデザームは本当に脅威だった。
ハーフタイム、雷門サイドは暗かった。
正義の鉄拳を破られるも、守備はみんなで固めることになった。
ただ、攻撃は…点が入らなければ勝てない。
「…時雨、お前キレたな」
『やっぱり…わかる?』
「昔、お前に何度ボコボコにされたことか…」
『そう、でした…』
有人、それに飛鳥はわかってくれていた。
帝国時代の悪い癖、気が短くてすぐに手が出る…さっきのシュートはそれに近かった。
有人は少し悪戯っぽく笑いながら、僕にスコーンと牛乳を差し出した。
「お前はもそもそした食い物が好きだからな」
『…覚えてたんだ?』
「まあな」
結局、この幼馴染の理解力は侮りがたいってことだ。
「後半も頼むぞ」
『…またキレたらごめん』
「構うか、それもお前の一部だ」
『ありがと』
「あぁ」
最後ににっと笑ってピッチに戻る有人。
後ろから条介に「お前らどういう関係?」って聞かれたから短く「幼馴染」と返した。
搭子には「出たな、キレキャラ」と笑われた。
うん、キレたって何したってみんなと一緒なら大丈夫。
こうして僕らは後半戦に臨む。
後半、イプシロンは雷門を潰しにかかった。
そんなことはさせまいと奮闘するものの、力の差は歴然で…
ほとんど、守と僕に対してデザームという勝負になっていた。
デザームがフィールドに出ると、こんなにも力の差が出るのかと思った。
『…守』
「なんだよ、時雨…こんな時に」
『こんな時だからだ』
「…?」
不思議そうな顔をしている守を背にそのまま話を続ける。
『未完成っていうのをマイナスに考えちゃいけないよ』
「…どういう意味だ?」
『例えば、僕はずっと影の力は悪いものだと思っていた。
でも、それは単なる考え方の問題だったんだ…影が悪なんじゃない。
影は一番の支えで、みんなを守って上げられる存在だったんだ…』
「それが、あのシュートか」
『うん、ガーディアン・デーモン。
これを気付かせてくれた人と完成させたんだ…だから、』
「未完成ってことを、違う意味で考えろってことだな!!」
『そういうことっ』
それだけ言って、振り返れば何かに気が付いた守が笑っていた。
デーモン・ハンドではデザームは止められない。
でも、守がいる…だからゴールはもう割らせない。
「正義の…鉄拳!!!!」
守はグングニルを破った。
雷門のゴールを守ってくれた。
その時、こぼれたボールを受けた人がいた。
目を疑った。
本当に、本当に…夢じゃないって。
『修也!!』
「待たせたな」
その一言がどれだけ嬉しかったか。
守の返した言葉はそういえばなんて思って笑った。
「お前はいつも遅いんだよ!!」
みんなの目に輝きが戻る。
あぁ、そうだ…これがエースストライカーの力。
みんなを引っ張っていってくれる、大きな光。
『修也』
「…時雨」
『これ、返すね』
そう言って銀色のペンダントを首から外して手渡す。
修也は目を細めて、ペンダントを自分の首元に戻した。
「時雨、まだ動けるか?」
『もちろん、修也が戻ってたのに休んでらんないよっ』
修也はふっと笑って、「行くぞ」と言った。
試合は再開した途端に修也とデザームの一騎打ち。
でも、華麗にボールを奪いさらにパワーアップしたシュート。
みんなが見惚れていたんじゃないかと思う。
そのファイアトルネードを見たデザームはキーパーに戻った。
『…僕を止められないのに、修也を止めるのは不可能だよ』
デザームはまだ修也を侮っている、そうじゃなかったらもう彼の維持だろう。
修也が戻って来たことで士気の上がった雷門はもう止まらない。
あっという間に修也にボールが渡った。
そして、修也の新必殺技には敵味方関係なく全員が驚いたに違いない。
こうして、豪炎寺修也復活に加え、雷門はイプシロン改に勝利した。
ここにも守らしい一面があって、デザームや他のメンバーにも温かく声をかける。
“サッカーの楽しさを知って欲しい”
なんて守るらしくて、平和なんだろうか。
心が温かくなる。優しくなる。
彼らとだって和解できるんだと、そう思っていたのも束の間だった。
ダイヤモンドダストのキャプテン・ガゼルの制裁によって消されてしまう。
これがエイリア学園。
利用価値がないものは必要ない、そういう理念の下で構成された組織。
かつての帝国学園のように、父さんのように…
でも、今は…今は帰ってきた修也におかえりを言う。
それを僕は僕たちはずっと待ち望んでいた。
みんなから歓喜の声が上がった。
『…修也、おかえり』
「ただいま、時雨」
目の前に修也がいる、その事実がどれほど嬉しくて幸せか。
本当に嬉しくて仕方がなかった。
そして、ここで語られる修也の去った理由。
鬼瓦さんと梅雨ちゃん、雷電から話される事件の真相。
『って、梅雨ちゃんと雷電グルだったんだ?』
「一応ヒントは言ったぜ?お前の兄貴に世話になってる…ってな」
『それって現在進行形だったの!?』
「悪く思うなって」
おどけたように笑う雷電を小突く。
そしたら、後ろで梅雨ちゃんがからから笑っていた。
『あれ、ということは…』
僕がそう言いかけると、梅雨ちゃんに抱き上げられる。
小さい時からそんなことされたことなくて、吃驚して、梅雨ちゃんを殴った。
そしたら雷電は「乱暴だな、お前」って言われた。
「ホント、お前乱暴だっつーに」
『あ、あんなん吃驚するって』
「可愛いけど可愛くないな、時雨は」
『やかましいっ』
そう言ってみれば、またカラカラと笑う兄。
本当はこうやって一緒に育っていくべきはずだったんだろうな…なんて。
過去を捏造しても仕方がないんだけど。
兄弟でバカやってたら、修也が梅雨ちゃんに話しかけた。
「梅雨さん、ありがとうございました」
「いーや、お前が雷電とサッカーしてたのをまぁアドバイスしただけだって」
「それでも二人がいなかったら俺は…」
「弟が世話になってる礼だと思えよ、修也」
梅雨ちゃんにぽふっと頭に手を置かれる。
あぁ、もう…この人は、いやこの人たちは。
あったかい。
心が満たされるような感覚だ。
修也が戻ってきて、みんなは楽しそうに練習を始めた。
僕は梅雨ちゃんと鬼瓦さんが先に本土に戻るというので、港まで送った。
「時雨、ごめんな…バタバタしてて」
『ううん、エイリア学園の一件は終わったわけじゃないから』
梅雨ちゃんはふっと笑って、僕の髪をくしゃくしゃと撫で回した。
少し痛くて、どこか優しい。
大きくてあったかい手はじーちゃんを思い出させる。
「梅雨、貴方も無理はしないで」
「時雨のことは頼むな、瞳子」
「エイリア学園の一件は貴方にまかせるわ」
「あぁ…弟たちを、見ててくれ」
『梅雨ちゃんも鬼瓦さんに迷惑かけないようにね』
「わかってるって、時雨」
にっと笑う梅雨ちゃんに釣られてにっと笑って見せた。
珍しく、瞳子監督も微笑んでいた。
「じゃあな、瞳子、時雨」
「気をつけて行きなさい」
『僕も頑張るよ、梅雨ちゃん』
威勢よく返事をして、梅雨ちゃんは本土に帰って行った。
「…時雨君」
『なんですか、監督』
瞳子監督は少し寂しそうなどこか複雑な面持ちだった。
「以前言ってくれたこと、覚えているかしら」
『貴方を信じると言った事ですか』
「えぇ…その言葉、昔梅雨にも言われたわ」
そう言って、またふっと笑う監督。
「共通の記憶なんてないのに、心が似ているのはやっぱり兄弟なのね」
『そう、かもしれません』
監督は踵を返し、歩き出す。
小走りで追いつけば、彼女は前を向いたまま小さな声で言った。
「私も貴方達のこと、信じているわ」