男主/影山の息子
FF編
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一時、解散した僕たちに監督は5時集合だと告げた。
とりあえず、僕は母さんの墓参りに向かった。
『…ごめんね、心配ばっかりかけて』
いつものように返事は返ってこない。
頭に響く、あの母さんの声は幻だったのかな。
『僕さ、父さんにも気付いてほしいんだ』
榊を添えながら、墓石に話しかける。
『僕が傍にいたってこと、絶対に気付いてなんてくれないけど。
母さん、見守っててね。僕はもう大丈夫だよ、僕の道を歩いていく』
返事はないんだろうな、なんて思っていたら風が吹く。
(私はいつでも傍にいるわ…)
風の音の中にわずかに聞こえた母さんの声。
なんとなく、これが最後なんじゃないかと思う。
なんでだろう…もう、二度と返事は返って来ないとそう思った。
『…次は優勝の報告しに来るね、母さん』
絶対に勝って、戻ってくるから。
一度家に戻って、台所に立つ。
台所に立つのもいつ振りだっけ…とか思って苦笑した。
ピンポーン。と呼び鈴が鳴る。
玄関を開けて出てみれば、修也が居た。
『…修也』
「迎えに来た。準備、してないのか?」
『大方終わってるんだけど、ちょっとね』
「…?」
首を傾げる修也の手を引いて、家に上げた。
修也はリビングに荷物を置いて座る。
僕は再び台所に戻った。
「何、してるんだ?」
台所に立つ僕の姿が物珍しいのか、修也は僕の背中に問いかける。
『どうせ、カレーとかだと思ってさ。おかず持って行こうかなって』
「そうか」
『なんか食べたいものある?修也の好きなもの入れてあげる』
「いいのか?」
『もちろん』
ふと振り返ると少し悩む素振りをした修也が居た。
僕は圧力鍋を見ながら、火を調節した。
「…コロッケ」
ぼそっと修也が言う。
『タマゴコロッケでいい?』
「…作れるのか!?」
当然のように冷蔵庫から玉子を取り出す僕に修也は驚いていた。
そして、平然と「作れるよ」と言えば修也は開いた口が塞がらなかった。
準備も料理も出来た僕は修也と一緒に家を出た。
お重を持つ僕を見兼ねて、修也は僕の荷物を持ってくれた。
体育館に着くと、たくさん布団を並べられていて吃驚した。
みんなでご飯を作る。案外みんな手際がいい。
『秋ちゃん、おかず作ってきたよー』
「えぇ、ホントに!?」
「凄いです、時雨さん!!ロールキャベツ美味しそうですね」
秋ちゃんと春菜は目を輝かせて、料理を見た。
『これはタマゴコロッケだよ』
「あなた本当に器用ね」
『まぁ、毎日自炊だから』
夏未ちゃんはまじまじとコロッケを見つめていた。
そう言えば、料理したことないんだっけ?
そんなコトを思っていると塀吾郎の声が校舎から響き渡った。
なんでも、OBの人たちがあるものを持ってきたのだと言う。
OBの人たちも交えて、みんなでご飯を食べた。
こんな大人数で食事するのは初めてかもしれない。
「嬉しそうだな」
『大人数で食べることあんまりないから』
「そうかもしれんな」
有人はふっと笑う。
確かに、こんな風にご飯食べることってあんまりなかった。
実は有人も楽しいんじゃないかな、なんて思った。
夕飯後、再びイナビカリ修練場に向かう。
そこには40年前に作られたマジン・ザ・ハンド養成マシーンがあった。
錆びたハンドルに油を差して、動かせば今でも使えるらしい。
守のためにみんなが一つになった。守もいつもの守に戻ってた。
みんなで交代しながら、ハンドルを回す。
守も次のステップに移り、僕らフィールドプレイヤーの心にも火が着いた。
守がマジン・ザ・ハンドの特訓をしている間、各々特訓を始める。
僕の特訓は昔の自分と今の自分を一つにすること。
『影と、雨…』
影と雨の共通点は実体がないのに、自分を映し出す。
『スプラッシュ・エンプレス…』
ふいに浮かんだシュートの名前。
水しぶきを跳ね返しながらの女帝のシュート。
「時雨」
『ん?あぁ、修也…守の方はいいの?』
「今、土門と一之瀬がやってる」
『そっか』
今はトライペガサスを受けているのか。
守もみんなも気合い入ってるし、僕も負けてられないな。
修也がもの言いたげな顔をして僕を見る。
『…修也?』
「時雨、これ」
『え…』
修也に手渡されたのは、修也の首にかかるペンダントと同じもの。
ただ、色は修也のが銀で渡されたのは金だった。
「このペンダントは一年前の決勝戦前日、夕香が俺にくれたんだ」
『…夕香、ちゃんが』
「あぁ。それで、今度は俺から時雨に」
『…いいの?』
「絶対に勝つ、約束だ」
夕香ちゃんのペンダントが「誓い」だとすれば、これは僕らの「約束」だ。
僕はペンダントを握り締める。
『修也っ…』
突然抱きつく僕を修也は優しく受け止めてくれる。
こんなにも想ってくれる人がいるなんて、一年前なら思ってなかった。
『ありがと、僕もう大丈夫だ』
「俺の方こそ、ありがとう」
修也といると、心が温かくて満たされる。
今は、少し修也の耳が赤いのは黙っておこう。
「ホント、仲いいよな」
一郎太の声がして、修也と二人でビクリと肩を震わせた。
「か、風丸っ!?」
『…いつからそこに?』
「うーん、時雨が豪炎寺に抱きついたトコくらいから」
修也と一緒に顔を真っ赤にして、顔を見合わせる。
一郎太はくすくすと笑いながら傍まで歩み寄る。
「邪魔して悪いな」
「そんなことは、ない」
「その間はあるだろ、豪炎寺」
そうは言いながらも、一郎太は未だにくすくすと笑っていた。
「すっかり立ち直ったみたいでよかったよ、二人とも」
『…修也も?』
「……」
修也がぱっと目を逸らす。
一郎太が僕の耳元でこそっと教えてくれた。
僕が来ない間、修也は少しそわそわした様子だったらしい。
『そーなんだ?』
「そーなんだよ」
「もう、その話はするな…」
照れた様子で言う修也が妙に可愛かった。
一郎太も面倒見がいいなぁ…
だから守と仲いいんだなと思う。
それから、修也と一郎太に手伝ってもらって僕は必殺技を改良した。
「影の僕」と「雨の僕」を一つにするイメージ。
二つが一つになって、進化した技や僕の中で消えてしまった技、残った技。
やっぱり、イリュージョンボールが消えることはなかったけど。
合宿の後、各々家に戻ったけど練習にかり出されてあまり意味はなかったかな。
試合当日、スタジアムに着くと閉鎖されていた。
夏未ちゃんの携帯に大会本部から連絡が入る。
会場の変更だとか…父さん、また何かを企んでいるんだね。
突如、スタジアム上空に現れた大きなスタジアム。
『…あそこに、父さんがいる』
親子の因縁も、祖父同士の因縁も僕が全て断ち切ってみせる。
神にだって勝つ。
僕らは僕ら以外の人たちの思いも背負っている。
『父さん、これが…最後の戦いだ』
ついに決勝が始まる。
とりあえず、僕は母さんの墓参りに向かった。
『…ごめんね、心配ばっかりかけて』
いつものように返事は返ってこない。
頭に響く、あの母さんの声は幻だったのかな。
『僕さ、父さんにも気付いてほしいんだ』
榊を添えながら、墓石に話しかける。
『僕が傍にいたってこと、絶対に気付いてなんてくれないけど。
母さん、見守っててね。僕はもう大丈夫だよ、僕の道を歩いていく』
返事はないんだろうな、なんて思っていたら風が吹く。
(私はいつでも傍にいるわ…)
風の音の中にわずかに聞こえた母さんの声。
なんとなく、これが最後なんじゃないかと思う。
なんでだろう…もう、二度と返事は返って来ないとそう思った。
『…次は優勝の報告しに来るね、母さん』
絶対に勝って、戻ってくるから。
一度家に戻って、台所に立つ。
台所に立つのもいつ振りだっけ…とか思って苦笑した。
ピンポーン。と呼び鈴が鳴る。
玄関を開けて出てみれば、修也が居た。
『…修也』
「迎えに来た。準備、してないのか?」
『大方終わってるんだけど、ちょっとね』
「…?」
首を傾げる修也の手を引いて、家に上げた。
修也はリビングに荷物を置いて座る。
僕は再び台所に戻った。
「何、してるんだ?」
台所に立つ僕の姿が物珍しいのか、修也は僕の背中に問いかける。
『どうせ、カレーとかだと思ってさ。おかず持って行こうかなって』
「そうか」
『なんか食べたいものある?修也の好きなもの入れてあげる』
「いいのか?」
『もちろん』
ふと振り返ると少し悩む素振りをした修也が居た。
僕は圧力鍋を見ながら、火を調節した。
「…コロッケ」
ぼそっと修也が言う。
『タマゴコロッケでいい?』
「…作れるのか!?」
当然のように冷蔵庫から玉子を取り出す僕に修也は驚いていた。
そして、平然と「作れるよ」と言えば修也は開いた口が塞がらなかった。
準備も料理も出来た僕は修也と一緒に家を出た。
お重を持つ僕を見兼ねて、修也は僕の荷物を持ってくれた。
体育館に着くと、たくさん布団を並べられていて吃驚した。
みんなでご飯を作る。案外みんな手際がいい。
『秋ちゃん、おかず作ってきたよー』
「えぇ、ホントに!?」
「凄いです、時雨さん!!ロールキャベツ美味しそうですね」
秋ちゃんと春菜は目を輝かせて、料理を見た。
『これはタマゴコロッケだよ』
「あなた本当に器用ね」
『まぁ、毎日自炊だから』
夏未ちゃんはまじまじとコロッケを見つめていた。
そう言えば、料理したことないんだっけ?
そんなコトを思っていると塀吾郎の声が校舎から響き渡った。
なんでも、OBの人たちがあるものを持ってきたのだと言う。
OBの人たちも交えて、みんなでご飯を食べた。
こんな大人数で食事するのは初めてかもしれない。
「嬉しそうだな」
『大人数で食べることあんまりないから』
「そうかもしれんな」
有人はふっと笑う。
確かに、こんな風にご飯食べることってあんまりなかった。
実は有人も楽しいんじゃないかな、なんて思った。
夕飯後、再びイナビカリ修練場に向かう。
そこには40年前に作られたマジン・ザ・ハンド養成マシーンがあった。
錆びたハンドルに油を差して、動かせば今でも使えるらしい。
守のためにみんなが一つになった。守もいつもの守に戻ってた。
みんなで交代しながら、ハンドルを回す。
守も次のステップに移り、僕らフィールドプレイヤーの心にも火が着いた。
守がマジン・ザ・ハンドの特訓をしている間、各々特訓を始める。
僕の特訓は昔の自分と今の自分を一つにすること。
『影と、雨…』
影と雨の共通点は実体がないのに、自分を映し出す。
『スプラッシュ・エンプレス…』
ふいに浮かんだシュートの名前。
水しぶきを跳ね返しながらの女帝のシュート。
「時雨」
『ん?あぁ、修也…守の方はいいの?』
「今、土門と一之瀬がやってる」
『そっか』
今はトライペガサスを受けているのか。
守もみんなも気合い入ってるし、僕も負けてられないな。
修也がもの言いたげな顔をして僕を見る。
『…修也?』
「時雨、これ」
『え…』
修也に手渡されたのは、修也の首にかかるペンダントと同じもの。
ただ、色は修也のが銀で渡されたのは金だった。
「このペンダントは一年前の決勝戦前日、夕香が俺にくれたんだ」
『…夕香、ちゃんが』
「あぁ。それで、今度は俺から時雨に」
『…いいの?』
「絶対に勝つ、約束だ」
夕香ちゃんのペンダントが「誓い」だとすれば、これは僕らの「約束」だ。
僕はペンダントを握り締める。
『修也っ…』
突然抱きつく僕を修也は優しく受け止めてくれる。
こんなにも想ってくれる人がいるなんて、一年前なら思ってなかった。
『ありがと、僕もう大丈夫だ』
「俺の方こそ、ありがとう」
修也といると、心が温かくて満たされる。
今は、少し修也の耳が赤いのは黙っておこう。
「ホント、仲いいよな」
一郎太の声がして、修也と二人でビクリと肩を震わせた。
「か、風丸っ!?」
『…いつからそこに?』
「うーん、時雨が豪炎寺に抱きついたトコくらいから」
修也と一緒に顔を真っ赤にして、顔を見合わせる。
一郎太はくすくすと笑いながら傍まで歩み寄る。
「邪魔して悪いな」
「そんなことは、ない」
「その間はあるだろ、豪炎寺」
そうは言いながらも、一郎太は未だにくすくすと笑っていた。
「すっかり立ち直ったみたいでよかったよ、二人とも」
『…修也も?』
「……」
修也がぱっと目を逸らす。
一郎太が僕の耳元でこそっと教えてくれた。
僕が来ない間、修也は少しそわそわした様子だったらしい。
『そーなんだ?』
「そーなんだよ」
「もう、その話はするな…」
照れた様子で言う修也が妙に可愛かった。
一郎太も面倒見がいいなぁ…
だから守と仲いいんだなと思う。
それから、修也と一郎太に手伝ってもらって僕は必殺技を改良した。
「影の僕」と「雨の僕」を一つにするイメージ。
二つが一つになって、進化した技や僕の中で消えてしまった技、残った技。
やっぱり、イリュージョンボールが消えることはなかったけど。
合宿の後、各々家に戻ったけど練習にかり出されてあまり意味はなかったかな。
試合当日、スタジアムに着くと閉鎖されていた。
夏未ちゃんの携帯に大会本部から連絡が入る。
会場の変更だとか…父さん、また何かを企んでいるんだね。
突如、スタジアム上空に現れた大きなスタジアム。
『…あそこに、父さんがいる』
親子の因縁も、祖父同士の因縁も僕が全て断ち切ってみせる。
神にだって勝つ。
僕らは僕ら以外の人たちの思いも背負っている。
『父さん、これが…最後の戦いだ』
ついに決勝が始まる。