男主/影山の息子
FF編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
円堂が壁にぶち当たった。
レベルアップするにはそれを打ち破るしかないんだ。
僕は円堂を、円堂守を信じてる。
目を閉じる。
そうすると、頭の中に思念として現れる一人の女の人。
僕と同じ栗色の、長い髪を靡かせて同じ赤い目をしている女性。
『…やっと、会えたわね』
目が合う。顔を見ると驚いた。
『母さん…なの?』
『そうよ、時雨。随分、大きくなって…昔の私みたいだわ』
母さんはくすっと笑った。
まるで、自分が動いているみたいで不思議な感じだったけど…
『母さんはずっと、僕の中にいたの?』
『えぇ、ずっと…時雨を見守っていた』
『…僕は気が付かなかったんだね』
『最初は、ね』
僕が俯くと、優しく抱きしめてくれた。
懐かしい気がする。
幼いころ、母さんに抱きしめられたその感じに似ていた。
『でも、貴方は私に気が付いた。どうしてだと思う?』
母さんはふふっと笑って、言った。
僕は少し考えて思い当たった一つの答え。
『僕が変わったから?』
『そうね、友達を信じようと、守ろうとする想いが強くなったからかしら』
そう言われて、改めて思い返す。
飛鳥のこと、有人のこと、修也のこと、円堂のこと…みんなのこと。
『仲間を、信じたから…』
『あの人と貴方は違う。本当の力はみんなを信じることよ』
『母さん…』
『だから、あの人を止めて…円堂君を、貴方の大切な人たちを守って』
強く抱きしめられる。
母さんの想いが僕に託された。
『いつも、私がついてるから』
僕はそこで目が覚めた。
いつも、母さんは傍にいた…そう“ネロ・エンプレス”のあの影こそ、
『母さんだったんだ…』
母さん、僕は父さんを止めるよ。
みんなと一緒に世宇子を破るから、みんなを、僕を見守っていて…
鉄塔広場で円堂が無茶苦茶な特訓を始めた。
僕はあえて、手を貸さないで夏未ちゃんと秋ちゃんと一緒に見ていた。
夏未ちゃんの様子がおかしい。
もしかしたら、と思ったけど…余計なことかもしれないと思ってやめた。
円堂が派手にやらかしたので、雷雷軒へ氷をもらいにやって来た。
すると、そこへやって来たお客さんは鬼瓦さん。
「元気か、時雨」
『僕は大丈夫、それよりそっちはどうなったの?』
「全然ダメだ」
『そっか』
噛み痕が疼いたような気がした。
鬼瓦さんは円堂に力ばかりを求めると父さんのようになる、と注意を促した。
不思議そうな顔をしているみんなに鬼瓦さんは50年前のある話を話し出した。
「影山東吾という選手を知っているか?」
『…っ!?』
影山東吾、日本サッカー界を代表する選手だった…影山零治の父。
『…祖父だ』
「あぁ、影山の父親…時雨のじいさんだ」
僕の言葉に有人が付け足した。
僕は目の前が真っ暗になりそうだった。
でも、修也が支えてくれたし…何より母さんの声が聞こえた。
父さんの勝つことへの執念。
全てを壊したサッカーへの恨みは凄まじい。
鬼瓦さんは随分と調べたみたいだ。
僕も知らないことまで、たくさん…調べていた。
「時雨、お前には辛い話になるな。
だが、奴が多くの人を苦しめてきたことは確かだ」
『…うん』
身体の震えが止まらない。母さんの声も届かなくなっていた。
「それから、豪炎寺。お前もその一人。
妹さんの事故、奴が関係している可能性がある」
「『!?』」
修也は動揺している。
僕は震える自分の掌を見た。震えは酷くなる一方だ。
そこで、告げられる父さんに繋がる言葉。
“プロジェクトZ”と“空の上”
僕はどうしたらいいんだ、母さん――
父さんは勝ちたいんだ、完全なる勝利が欲しいんだ。
気が付いたときには雷雷軒を飛び出して、家まで逃げるように走り帰っていた。
僕はあの日から、家に篭っている。
みんなと顔を合わせずらくて、覚悟が揺るぎそうだったから。
父さんを倒す、みんなを信じて―
今、僕は本当に信じることができてるのかな。
『母さん、僕は…みんなを信じられてるのかな。
あの話を聞いて、僕を…信じてくれているのかな』
(そうね、私は信じている。貴方はもう、あの人のいいなりじゃない。
自分自身の意志でサッカーをして、信じてくれる仲間のために必死で戦ってるって)
そうだ。今まで、必死になって一緒に戦ってきたんだ。
『僕自身の意志…』
(もう一人じゃない、そうでしょ?)
『修也、それにみんな…』
(えぇ、みんなが傍にいてくれる)
『そうだね、母さん。気付かせてくれてありがとう』
母さんは優しく笑ったような気がした。
帝国時代の力と、抜けた後の僕の力。
片方だけではダメなんだ、どっちだってそれは僕の力でまるで光と影。
『光と影が重なった時、僕はみんなを守れる』
行かなくちゃ、なんだか嫌な予感がする。
休んだはずの学校だけど、みんなが練習するグラウンドに急いだ。
僕が着いた時には円堂は倒れて、みんなに囲まれている。
そして、そこには金髪の長い髪を靡かせた彼が居た。
『アフロディ、何しに来たんだ!?』
「おや、ようやく来たね。影山時雨君。
君は本来、神となるべきだったのに…愚かな事だ」
『僕は愚かだろうがなんだろうが構わない。
雷門のみんなを傷つけたら、神も人も関係ない…僕は絶対に許さない』
迷いはない。
みんなと一緒に戦うって、守るって決めたから。
僕と父さんは違う人間だ、だから…違う道を歩いていける。
「ふふっ…君と、円堂君か。決勝戦が少し楽しみだな」
『アフロディ』
消えそうなアフロディを僕は引き止める。
彼は不思議そうな顔をしていた。
「何か、あったかい?」
『父さんに伝えておいて、父さんが信じるのは完全なる勝利だけだ。
でも、僕は違う。僕が信じるのは、貴方の言う泥臭いみんなを信じて掴む勝利だって』
「そうか、残念だな」
ふわりと風のように消え去った。
世宇子中こそ、プロジェクトZそのもの。
一体、どんなカラクリを使っているんだろう…
身体を起こして、円堂が声を掛けてくれた。
「やっと、来てくれたな」
『遅くなってごめん、守…』
「…時雨、今…名前」
『え、あぁ…なんでだろう』
不意に出た円堂の名前。
確か、武方との勝負の時にも一回だけ。
「でも、名前で呼んでくれたほうがいいや」
にっと笑った円堂に僕の表情も緩む。
後ろから、肩をぽんと叩かれる。振り返れば飛鳥が居た。
「顔色、悪いけど大丈夫か?」
飛鳥に言われて気が付いた。
ずっと考えていた所為か、いつ寝たのかも覚えていない。
それでも、心は決まった。
『覚悟は決まったから、大丈夫』
そう言うと飛鳥はにっと笑って、そっかと答えた。
「時雨、戻ってくると信じていた」
『…また、心配かけたね』
「あぁ、もっと頼れよ」
修也は呆れたように笑ったけど、心配してくれてたんだろうな。
「相変わらず仲良しさんだなー」
『茶化さないでよ、飛鳥』
「ごめんごめん」
また仲間に入れてくれたみんなに感謝だ。
みんなのためにも、僕はボールを追いかける。
それから、夏未ちゃんと響木監督の意向で合宿をすることになった。
がむしゃらになったって、意味はない。
焦ったって、仕方がない…そういうことだと思う。
レベルアップするにはそれを打ち破るしかないんだ。
僕は円堂を、円堂守を信じてる。
目を閉じる。
そうすると、頭の中に思念として現れる一人の女の人。
僕と同じ栗色の、長い髪を靡かせて同じ赤い目をしている女性。
『…やっと、会えたわね』
目が合う。顔を見ると驚いた。
『母さん…なの?』
『そうよ、時雨。随分、大きくなって…昔の私みたいだわ』
母さんはくすっと笑った。
まるで、自分が動いているみたいで不思議な感じだったけど…
『母さんはずっと、僕の中にいたの?』
『えぇ、ずっと…時雨を見守っていた』
『…僕は気が付かなかったんだね』
『最初は、ね』
僕が俯くと、優しく抱きしめてくれた。
懐かしい気がする。
幼いころ、母さんに抱きしめられたその感じに似ていた。
『でも、貴方は私に気が付いた。どうしてだと思う?』
母さんはふふっと笑って、言った。
僕は少し考えて思い当たった一つの答え。
『僕が変わったから?』
『そうね、友達を信じようと、守ろうとする想いが強くなったからかしら』
そう言われて、改めて思い返す。
飛鳥のこと、有人のこと、修也のこと、円堂のこと…みんなのこと。
『仲間を、信じたから…』
『あの人と貴方は違う。本当の力はみんなを信じることよ』
『母さん…』
『だから、あの人を止めて…円堂君を、貴方の大切な人たちを守って』
強く抱きしめられる。
母さんの想いが僕に託された。
『いつも、私がついてるから』
僕はそこで目が覚めた。
いつも、母さんは傍にいた…そう“ネロ・エンプレス”のあの影こそ、
『母さんだったんだ…』
母さん、僕は父さんを止めるよ。
みんなと一緒に世宇子を破るから、みんなを、僕を見守っていて…
鉄塔広場で円堂が無茶苦茶な特訓を始めた。
僕はあえて、手を貸さないで夏未ちゃんと秋ちゃんと一緒に見ていた。
夏未ちゃんの様子がおかしい。
もしかしたら、と思ったけど…余計なことかもしれないと思ってやめた。
円堂が派手にやらかしたので、雷雷軒へ氷をもらいにやって来た。
すると、そこへやって来たお客さんは鬼瓦さん。
「元気か、時雨」
『僕は大丈夫、それよりそっちはどうなったの?』
「全然ダメだ」
『そっか』
噛み痕が疼いたような気がした。
鬼瓦さんは円堂に力ばかりを求めると父さんのようになる、と注意を促した。
不思議そうな顔をしているみんなに鬼瓦さんは50年前のある話を話し出した。
「影山東吾という選手を知っているか?」
『…っ!?』
影山東吾、日本サッカー界を代表する選手だった…影山零治の父。
『…祖父だ』
「あぁ、影山の父親…時雨のじいさんだ」
僕の言葉に有人が付け足した。
僕は目の前が真っ暗になりそうだった。
でも、修也が支えてくれたし…何より母さんの声が聞こえた。
父さんの勝つことへの執念。
全てを壊したサッカーへの恨みは凄まじい。
鬼瓦さんは随分と調べたみたいだ。
僕も知らないことまで、たくさん…調べていた。
「時雨、お前には辛い話になるな。
だが、奴が多くの人を苦しめてきたことは確かだ」
『…うん』
身体の震えが止まらない。母さんの声も届かなくなっていた。
「それから、豪炎寺。お前もその一人。
妹さんの事故、奴が関係している可能性がある」
「『!?』」
修也は動揺している。
僕は震える自分の掌を見た。震えは酷くなる一方だ。
そこで、告げられる父さんに繋がる言葉。
“プロジェクトZ”と“空の上”
僕はどうしたらいいんだ、母さん――
父さんは勝ちたいんだ、完全なる勝利が欲しいんだ。
気が付いたときには雷雷軒を飛び出して、家まで逃げるように走り帰っていた。
僕はあの日から、家に篭っている。
みんなと顔を合わせずらくて、覚悟が揺るぎそうだったから。
父さんを倒す、みんなを信じて―
今、僕は本当に信じることができてるのかな。
『母さん、僕は…みんなを信じられてるのかな。
あの話を聞いて、僕を…信じてくれているのかな』
(そうね、私は信じている。貴方はもう、あの人のいいなりじゃない。
自分自身の意志でサッカーをして、信じてくれる仲間のために必死で戦ってるって)
そうだ。今まで、必死になって一緒に戦ってきたんだ。
『僕自身の意志…』
(もう一人じゃない、そうでしょ?)
『修也、それにみんな…』
(えぇ、みんなが傍にいてくれる)
『そうだね、母さん。気付かせてくれてありがとう』
母さんは優しく笑ったような気がした。
帝国時代の力と、抜けた後の僕の力。
片方だけではダメなんだ、どっちだってそれは僕の力でまるで光と影。
『光と影が重なった時、僕はみんなを守れる』
行かなくちゃ、なんだか嫌な予感がする。
休んだはずの学校だけど、みんなが練習するグラウンドに急いだ。
僕が着いた時には円堂は倒れて、みんなに囲まれている。
そして、そこには金髪の長い髪を靡かせた彼が居た。
『アフロディ、何しに来たんだ!?』
「おや、ようやく来たね。影山時雨君。
君は本来、神となるべきだったのに…愚かな事だ」
『僕は愚かだろうがなんだろうが構わない。
雷門のみんなを傷つけたら、神も人も関係ない…僕は絶対に許さない』
迷いはない。
みんなと一緒に戦うって、守るって決めたから。
僕と父さんは違う人間だ、だから…違う道を歩いていける。
「ふふっ…君と、円堂君か。決勝戦が少し楽しみだな」
『アフロディ』
消えそうなアフロディを僕は引き止める。
彼は不思議そうな顔をしていた。
「何か、あったかい?」
『父さんに伝えておいて、父さんが信じるのは完全なる勝利だけだ。
でも、僕は違う。僕が信じるのは、貴方の言う泥臭いみんなを信じて掴む勝利だって』
「そうか、残念だな」
ふわりと風のように消え去った。
世宇子中こそ、プロジェクトZそのもの。
一体、どんなカラクリを使っているんだろう…
身体を起こして、円堂が声を掛けてくれた。
「やっと、来てくれたな」
『遅くなってごめん、守…』
「…時雨、今…名前」
『え、あぁ…なんでだろう』
不意に出た円堂の名前。
確か、武方との勝負の時にも一回だけ。
「でも、名前で呼んでくれたほうがいいや」
にっと笑った円堂に僕の表情も緩む。
後ろから、肩をぽんと叩かれる。振り返れば飛鳥が居た。
「顔色、悪いけど大丈夫か?」
飛鳥に言われて気が付いた。
ずっと考えていた所為か、いつ寝たのかも覚えていない。
それでも、心は決まった。
『覚悟は決まったから、大丈夫』
そう言うと飛鳥はにっと笑って、そっかと答えた。
「時雨、戻ってくると信じていた」
『…また、心配かけたね』
「あぁ、もっと頼れよ」
修也は呆れたように笑ったけど、心配してくれてたんだろうな。
「相変わらず仲良しさんだなー」
『茶化さないでよ、飛鳥』
「ごめんごめん」
また仲間に入れてくれたみんなに感謝だ。
みんなのためにも、僕はボールを追いかける。
それから、夏未ちゃんと響木監督の意向で合宿をすることになった。
がむしゃらになったって、意味はない。
焦ったって、仕方がない…そういうことだと思う。