男主/影山の息子
FF編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の対戦は千羽山、鉄壁のディフェンスを誇る「無限の壁」を持っているらしい。
僕も足が治って練習に参加できるようになった。
ただ、気になったのはみんなのタイミングが合わなくなっている。
『…個人能力があがりすぎてる』
「よく、わかったな」
『監督…』
「お前に相談がある」
『相談…ですか』
響木監督は僕をフィールドの端に呼び出した。
「お前、帝国時代の力を遣う気はないか?」
『…昔の、父さんの求めた力をですか?』
「だが、お前は影山とは違う。受け止めている仲間がいる。
そう心配することはないんじゃないのか?」
監督の言う通り、みんななら僕の力を受け入れてくれるかもしれない。
でも、もしそれで失敗したら…みんなを傷つけることになる。
誰も知らないものを簡単に受け入れろというには…あまりにも。
『覚悟が、できたら使います』
「そうか。じゃあ、俺もそれまで待つ。
もっと仲間に甘えることも覚えた方がいいぞ」
『…はい』
そう言った監督はあまりにも優しかった。
父さんとは全然違う。
これが、雷門のカラーなのかもしれない。
その日の帰り、僕は有人の家に寄った。
修也に「鬼道を雷門に誘った」と聞いたから。
「…時雨」
『有人、修也に誘われたんだって?』
そう言うと彼はふっと笑って「あぁ」と短く答えた。
僕は有人の部屋のソファに身体を沈めた。
「お前は何しに来た?」
有人はゴーグルを外して、そのままの赤い瞳で僕を見た。
『…僕は有人に言いたいことがあったから』
「言いたいこと?」
こくりと頷いて、僕は答える。
『僕、“女帝”の力を雷門の為に使いたい』
「本気か?」
『うん、大会のどこかに潜んでいる父さんと決着もつけたいから。
これ以上、自分の力を恐れるのも怯えるのもやめようと思って…』
「そうか…」
『だから、有人にいてほしい』
僕は有人の赤い目をじっと見つめた。
帝国時代を共に戦った仲間だから、有人と一緒にまた戦いたい。
この想いは有人に届いただろうか。
千羽山戦の日。
僕らは全員揃っているのにも関わらず、待たされていた。
監督は誰かを待っている。
足音が聞こえて、姿を現したのは色違いのマントを身に纏う有人だった。
会場からは非難集中だったけど、円堂は素直に喜んでいた。
でも、チームには不安要素を呼んでいた。
宍戸君のベンチ入りが何か溝を生んだ気がする。
「時雨、本当に使うのか?」
『うん、使うよ』
「そうか、だが…無理だけはするな」
『わかってる。あ、そうだ…有人』
思い出したように言った僕に有人は眉間に皺を寄せて問いかける。
「…なんだ?」
『みんな、なんだか微妙にずれてるから補正してくれる?』
そう言うと有人は「任せろ」と一言言って配置についた。
始まった二回戦。
しかし、みんなのタイミングはバラバラだ。
先取点を取られてしまった。
ずっと口をつぐんでいた有人が笑った。
どうやら、攻略が終わったらしい。
「時雨、補正は終わった」
『ようやく雷門らしくなるかな』
有人の言った通り、みんなへの指示は的確だった。
きっと、有人じゃなきゃダメなんだよ。
問題は「無限の壁」だった。
ドラゴントルネードすらも弾いてしまう。
無限の壁を敗れないまま、前半が終わった。
ハーフタイム、有人から告げられたのは全国大会の厳しさ。
それは修也も知っている。
ただ、みんなは怖いんだ…変わることが。
それが自分達のサッカーを失くしてしまうかもしれないから。
「染岡のワントップと言ったが、豪炎寺と時雨も攻撃には参加してもらう」
その言葉に修也がぴくりと反応した。
「時雨もか?」
「あぁ、時雨にも向き合う覚悟があるからな」
修也は僕を見た。視線が合う。
『修也…近くにいてね』
「わかった」
優しく微笑んでくれた修也。
君がいるから、有人がいるから、覚悟は揺るがない。
後半開始、不意を突いても「無限の壁」はなかなか破れない。
何度、攻撃しても敗れない鉄壁のディフェンス。
凹んでいるみんなに円堂は一喝した。
大切なのは“諦めない気持ち”だった。
だからこそ、今まで勝ち続けられたんだよ。
『…僕が破る』
円堂が僕を振り向いた。
「時雨?」
『諦めないのが、必殺技なんだよね?
だったら、僕が絶対あれを破ってみせるよ』
「…頼んだぞ、時雨」
円堂に頷いてみせた。
すると、修也も有人もこくりと頷いた。
残り10分の全員攻撃。
有人が千羽山のブロックに引っかかる。
『有人っ』
「行け、時雨!!」
そこから、横切るようにパスを受け取り一気に駆け上がった。
襲い来る千羽山DF陣を前に笑みを浮かべる。
突然、沼に沈むかのように動きを止めた彼ら。
これが、“女帝”時代の力…
『影の通り道』
「時雨っ」
『修也、上に上げて!!』
「いくぞっ」
後ろにいた修也にバックパス。
修也はダイレクトでボールを上に蹴った。
突如、空が暗くなり僕は自分の影を纏って飛び上がる。
きっと、今日はこれを打ったら倒れるけどそんなことは関係ない。
『ネロ・エンプレスッ』
シュートを打った、ほんの一瞬…女の影が笑ったような気がした。
久しぶりに…笑ってくれたね、エンプレス。
僕は頭がくらくらするままゴールを見る。
倒れる寸前、あの鉄壁を破ったような気がした。
「「時雨!!」」
みんなの声が遠くに聞こえる。
視界は真っ暗になった。
再び、僕が目を覚ましたのは試合終了のホイッスルが鳴った後だった。
「時雨君、気が付いたかしら」
『夏未ちゃん…試合は?』
「大丈夫よ、勝ったわ」
『よかった…』
夏未ちゃんの言葉に安堵した。
勝ったんだ、みんな。
「時雨、勝ったぞ!!」
『円堂…』
グラウンドから笑顔で手を振る円堂や一年生達。
修也も有人も笑っていた。
『僕も、役に立てたかな…』
「そうだな、いいシュートだったぞ」
『監督…』
「何より、いい覚悟だった。その倒れる癖は治さないかんがな」
『…そうですね』
いい覚悟、か。
そう言ってもらえると、力を使った甲斐があったな。
「時雨っ」
『…修也』
「もう大丈夫なのか?」
『うん、大丈夫』
笑って見せると修也も笑って頭を撫でてくれた。
修也の手は安心する。
倒れたのに、どこか安心している。
「それから」
『…?』
「さっきのシュート、凄かった」
『…っ、』
誰に言われるよりも修也に言われたのが嬉しかった。
後ろで有人がくすくす笑っている。
『有人、笑うなーっ!!』
「全く…随分変わったものだな」
『…有人は全然変わってなーい!!』
「どうかな」
この幼馴染は昔からこうやっておちょくる。
そういうとこ、全然変わってない。
もう一つ近くで笑い声がする。
『修也ー!!』
「すまない、なんだかあまりにも…」
そう言い掛けて、口をつぐんだ修也。
あれ…どうしてかな?
『…修也?』
「なんでもない」
でも、耳が赤い。こういう時は大体…
『なんか余計なこと思ったでしょ』
「そんなことはない」
(あまりにも可愛かったなんて…恥ずかしすぎる)
修也ははぐらかしたけど、有人や風丸君が笑っているからきっとそうなんだと思う。
段々、修也のこと…本当にわかってきたかも。
僕も足が治って練習に参加できるようになった。
ただ、気になったのはみんなのタイミングが合わなくなっている。
『…個人能力があがりすぎてる』
「よく、わかったな」
『監督…』
「お前に相談がある」
『相談…ですか』
響木監督は僕をフィールドの端に呼び出した。
「お前、帝国時代の力を遣う気はないか?」
『…昔の、父さんの求めた力をですか?』
「だが、お前は影山とは違う。受け止めている仲間がいる。
そう心配することはないんじゃないのか?」
監督の言う通り、みんななら僕の力を受け入れてくれるかもしれない。
でも、もしそれで失敗したら…みんなを傷つけることになる。
誰も知らないものを簡単に受け入れろというには…あまりにも。
『覚悟が、できたら使います』
「そうか。じゃあ、俺もそれまで待つ。
もっと仲間に甘えることも覚えた方がいいぞ」
『…はい』
そう言った監督はあまりにも優しかった。
父さんとは全然違う。
これが、雷門のカラーなのかもしれない。
その日の帰り、僕は有人の家に寄った。
修也に「鬼道を雷門に誘った」と聞いたから。
「…時雨」
『有人、修也に誘われたんだって?』
そう言うと彼はふっと笑って「あぁ」と短く答えた。
僕は有人の部屋のソファに身体を沈めた。
「お前は何しに来た?」
有人はゴーグルを外して、そのままの赤い瞳で僕を見た。
『…僕は有人に言いたいことがあったから』
「言いたいこと?」
こくりと頷いて、僕は答える。
『僕、“女帝”の力を雷門の為に使いたい』
「本気か?」
『うん、大会のどこかに潜んでいる父さんと決着もつけたいから。
これ以上、自分の力を恐れるのも怯えるのもやめようと思って…』
「そうか…」
『だから、有人にいてほしい』
僕は有人の赤い目をじっと見つめた。
帝国時代を共に戦った仲間だから、有人と一緒にまた戦いたい。
この想いは有人に届いただろうか。
千羽山戦の日。
僕らは全員揃っているのにも関わらず、待たされていた。
監督は誰かを待っている。
足音が聞こえて、姿を現したのは色違いのマントを身に纏う有人だった。
会場からは非難集中だったけど、円堂は素直に喜んでいた。
でも、チームには不安要素を呼んでいた。
宍戸君のベンチ入りが何か溝を生んだ気がする。
「時雨、本当に使うのか?」
『うん、使うよ』
「そうか、だが…無理だけはするな」
『わかってる。あ、そうだ…有人』
思い出したように言った僕に有人は眉間に皺を寄せて問いかける。
「…なんだ?」
『みんな、なんだか微妙にずれてるから補正してくれる?』
そう言うと有人は「任せろ」と一言言って配置についた。
始まった二回戦。
しかし、みんなのタイミングはバラバラだ。
先取点を取られてしまった。
ずっと口をつぐんでいた有人が笑った。
どうやら、攻略が終わったらしい。
「時雨、補正は終わった」
『ようやく雷門らしくなるかな』
有人の言った通り、みんなへの指示は的確だった。
きっと、有人じゃなきゃダメなんだよ。
問題は「無限の壁」だった。
ドラゴントルネードすらも弾いてしまう。
無限の壁を敗れないまま、前半が終わった。
ハーフタイム、有人から告げられたのは全国大会の厳しさ。
それは修也も知っている。
ただ、みんなは怖いんだ…変わることが。
それが自分達のサッカーを失くしてしまうかもしれないから。
「染岡のワントップと言ったが、豪炎寺と時雨も攻撃には参加してもらう」
その言葉に修也がぴくりと反応した。
「時雨もか?」
「あぁ、時雨にも向き合う覚悟があるからな」
修也は僕を見た。視線が合う。
『修也…近くにいてね』
「わかった」
優しく微笑んでくれた修也。
君がいるから、有人がいるから、覚悟は揺るがない。
後半開始、不意を突いても「無限の壁」はなかなか破れない。
何度、攻撃しても敗れない鉄壁のディフェンス。
凹んでいるみんなに円堂は一喝した。
大切なのは“諦めない気持ち”だった。
だからこそ、今まで勝ち続けられたんだよ。
『…僕が破る』
円堂が僕を振り向いた。
「時雨?」
『諦めないのが、必殺技なんだよね?
だったら、僕が絶対あれを破ってみせるよ』
「…頼んだぞ、時雨」
円堂に頷いてみせた。
すると、修也も有人もこくりと頷いた。
残り10分の全員攻撃。
有人が千羽山のブロックに引っかかる。
『有人っ』
「行け、時雨!!」
そこから、横切るようにパスを受け取り一気に駆け上がった。
襲い来る千羽山DF陣を前に笑みを浮かべる。
突然、沼に沈むかのように動きを止めた彼ら。
これが、“女帝”時代の力…
『影の通り道』
「時雨っ」
『修也、上に上げて!!』
「いくぞっ」
後ろにいた修也にバックパス。
修也はダイレクトでボールを上に蹴った。
突如、空が暗くなり僕は自分の影を纏って飛び上がる。
きっと、今日はこれを打ったら倒れるけどそんなことは関係ない。
『ネロ・エンプレスッ』
シュートを打った、ほんの一瞬…女の影が笑ったような気がした。
久しぶりに…笑ってくれたね、エンプレス。
僕は頭がくらくらするままゴールを見る。
倒れる寸前、あの鉄壁を破ったような気がした。
「「時雨!!」」
みんなの声が遠くに聞こえる。
視界は真っ暗になった。
再び、僕が目を覚ましたのは試合終了のホイッスルが鳴った後だった。
「時雨君、気が付いたかしら」
『夏未ちゃん…試合は?』
「大丈夫よ、勝ったわ」
『よかった…』
夏未ちゃんの言葉に安堵した。
勝ったんだ、みんな。
「時雨、勝ったぞ!!」
『円堂…』
グラウンドから笑顔で手を振る円堂や一年生達。
修也も有人も笑っていた。
『僕も、役に立てたかな…』
「そうだな、いいシュートだったぞ」
『監督…』
「何より、いい覚悟だった。その倒れる癖は治さないかんがな」
『…そうですね』
いい覚悟、か。
そう言ってもらえると、力を使った甲斐があったな。
「時雨っ」
『…修也』
「もう大丈夫なのか?」
『うん、大丈夫』
笑って見せると修也も笑って頭を撫でてくれた。
修也の手は安心する。
倒れたのに、どこか安心している。
「それから」
『…?』
「さっきのシュート、凄かった」
『…っ、』
誰に言われるよりも修也に言われたのが嬉しかった。
後ろで有人がくすくす笑っている。
『有人、笑うなーっ!!』
「全く…随分変わったものだな」
『…有人は全然変わってなーい!!』
「どうかな」
この幼馴染は昔からこうやっておちょくる。
そういうとこ、全然変わってない。
もう一つ近くで笑い声がする。
『修也ー!!』
「すまない、なんだかあまりにも…」
そう言い掛けて、口をつぐんだ修也。
あれ…どうしてかな?
『…修也?』
「なんでもない」
でも、耳が赤い。こういう時は大体…
『なんか余計なこと思ったでしょ』
「そんなことはない」
(あまりにも可愛かったなんて…恥ずかしすぎる)
修也ははぐらかしたけど、有人や風丸君が笑っているからきっとそうなんだと思う。
段々、修也のこと…本当にわかってきたかも。