男主/影山の息子
FF編
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飛鳥ちゃんは度々、練習を抜けてどこかへ消える。
それが少々、気がかりだった。
…鬼道が来ているんじゃないかって。
何より、春奈が土門を追いかけてしまった。
これはいよいよヤバいかもしれないって思ったから、僕も追いかけた。
『春奈、どこ行くの?』
「あ、時雨さん。今、土門さんを追いかけてるんです」
『…付いてくよ、僕も気になるから』
「ありがとうございます」
にこにこ笑う春奈。
きっと、この後…顔を歪めてしまうんじゃないかって。
僕ら2人が行くと、そこには鬼道がいた。
春奈は驚いて、駆け寄った。
「お兄ちゃん」
「…っ!?」
問いただす春菜に鬼道は冷たく言い放って去っていった。
『春奈…』
「だ、大丈夫ですよ。でも、どうしてお兄ちゃんが…」
『……』
その後、肩を落とした春菜と一緒に練習に戻った。
次の日、僕は階段で携帯とにらめっこしている飛鳥ちゃんを見つけた。
「すみません、鬼道さん」
そう言いながら何かボタン押した。
『あ、すか…ちゃん?』
「時雨さん!!」
『だから、さん付けやめてってば』
「あ、あぁ…悪ぃ悪ぃ」
苦笑する飛鳥ちゃんに僕は首を傾げた。
『何、やってたの?』
「…たった今、鬼道さんの番号消した」
『え!?じゃ、じゃあ…』
「俺も雷門の一員として、サッカーやろうと思って」
『あ、すかっ』
僕は飛鳥ちゃんに抱きついた。
一瞬、戸惑いながらも優しく抱きとめてくれた。
『今度はちゃんと、友達になろうね…』
「お互いに上下関係じゃなくってこと?」
『うん』
「そうね、改めて宜しく。時雨」
『僕の方こそ、よろしくね。飛鳥』
飛鳥はスパイを辞めて、鬼道を裏切って…雷門に来てくれた。
「これで、いいんだ」
そう呟いて、飛鳥はすがるように僕を抱きしめた。
どこか、孤独だったのかもしれないと僕は思った。
放課後、飛鳥は生き生きと練習に打ち込んでいた。
代わりに春奈は少し元気がなかったけど。
そんな中、練習に現れた冬海に夏未ちゃんがお願いをする。
“遠征用のバスを動かして欲しいとのこと”だった。
慌てふためく冬海と顔の強張る飛鳥。
2人の様子からわかるのは、恐らくバスに何か仕掛けがあるってこと。
みんながガレージに集まり、バスの試運転を行う。
なかなかバスを出さない冬海に夏未ちゃんは畳み掛けた。
一枚の、犯罪を告発する手紙を用いて…
反抗を認め、開き直った冬海がバスから降りる。
「あなた方が決勝戦に出ると困る方がいるんですよ。
その人の為に私はやったんだ」
そこで修也の怒号が走り、僕の腕が震えだす。
「帝国の学園長か!!」
図星だったらしく、冬海は肩を震わせた。
「帝国のためなら生徒がどうなったっていいと思ってるのか」
「君たちは知らないんだ、どんなに恐ろしいかを。
君なら、学園長の息子の影山時雨君ならご存知でしょう?」
『っ!?』
まさか、自分に火の粉が飛んでくるなんて思っていなかった。
冬海はにたにた笑いながら続けた。
「一年の一学期まで、帝国学園サッカー部で“女帝”と呼ばれていた君なら、ね」
『……』
「…時雨?」
修也の声を聞いても身体の震えが止まらない。
手だけじゃなく、全身が震え始める。
僕の中で何かが弾けた。
今まで閉じていた、心の闇が身体を支配する。
『黙れっ!!「俺」の何がわかるって言うんだ!!?』
「時雨っ」
修也が今にも食ってかかりそうな僕を制止する。
ぐいっと腕を引っ張って、修也の腕の中に収められてしまった。
あったかい…だんだん心が落ち着いてくる。
「貴方のような教師は学園を去りなさい。
これは理事長の言葉と思ってもらって結構です」
夏未ちゃんがびしっと言い放つ。
冬海はせいせいしたとでも言うようにあっさりとそれを受け入れた。
波乱を生む、一言を残して。
「しかし、この雷門中に潜り込んだスパイが私だけとは思わないことだ…ねぇ、土門君」
「「「!?」」」
みんなの視線が一気に飛鳥に集中する。
冬海は嫌な高笑いをしながら、その場を去っていく。
みんなが飛鳥を疑い、非難する。
飛鳥が悪いわけじゃないのに…仲間なのに。
『待って、飛鳥を責めちゃダメだ!!』
「時雨の言う通りだ、みんな。
今まで一緒にサッカーやってたじゃないか。
その仲間を信じないのか?俺は信じる。な、土門」
「……」
飛鳥はばつの悪い顔をして、円堂を見た。
「円堂、冬海の言う通りだよ」
「悪ぃ」と一言言って、飛鳥は身を翻し駆け出した。
円堂は呼び戻すが、もう聞こえる距離にはいないだろう。
夏未ちゃんの持っていた手紙は飛鳥が書いたものだ。
『飛鳥…』
飛鳥が消えた方を見ていると修也に怒られた。
「人の心配してる場合か、お前は!!」
そうだ、修也がいなかったら僕は…
僕は総帥の造った“女帝”に戻ってしまうところだった。
『…修也、ごめん。ありがと』
そう言って、僕は修也の肩に顔を埋めた。
一拍置いて、落ち着いた僕は飛鳥を追う前にみんなに自分のことを話した。
話の節々で倒れそうになることもあったけど、修也が支えてくれた。
みんなは非難一つしないで聞いてくれた。
『…聞いてくれて、ありがとう』
風丸君が伏せ目がちに言った。
「帝国で冷たい人形みたいなお前に普通に接してくれたのは土門だったんだな」
『うん、今でも飛鳥は友達だよ。だから…許してあげてね、飛鳥を』
そう言うと、みんなは優しく笑いながら頷いてくれた。
「じゃあ、行くか!!土門のとこに」
「今頃一人で後悔してるかもしれないし」
「ほら、行くぞ」
円堂、秋ちゃん、修也が身を翻す。
夏未ちゃんには背中をどんっと押された。
「早くしなさい、行くわよ」
『うん!!』
先に行く秋ちゃんを追いかけて、僕と円堂は河川敷まで走った。
河川敷には秋ちゃんと飛鳥が座っていた。
「土門!!」『飛鳥!!』
円堂が飛鳥向かってボールを蹴った。
飛鳥は慌てて、ボールを取る。
振り返った、飛鳥に僕と円堂は言った。
「『サッカーやろう(ぜ)!!』」
きょとんとしている飛鳥。
僕はさっさと、グラウンドに入る。
「ほら、早く」
『遅いよー、飛鳥ー』
そう言うと顔を綻ばせて、返事をした。
僕らは小学生に混じって一緒にサッカーをした。
飛鳥がシュートするなんて、なんだか久しぶりだな。
『飛鳥、何やってんだよー』
「しっかりしろ、土門」
楽しそうにサッカーをやってる飛鳥。
やっぱり、この方がいいよ。
***
俺は雷門夏未と、円堂たちのサッカーをみていた。
土門のことを気付いていたんだろうと問われた。
「円堂も気付いてたさ。土門のサッカーへの熱い気持ちをね」
そう言ってあいつらを見ていたら、今度はとんでもない質問が投げかけられた。
「時雨君のこと、好きなの?」
「…は?」
「相当、大切にしているみたいね…彼を。
さっきもまるでお姫様と騎士のようだったわ」
雷門夏未はくすくすと笑った。
…そう言えば、さっき思いっきり抱きしめた。
思い出して、顔が赤くなった。
「泣かせる真似だけはしないでしょうだいね」
まったく、俺は何をやってるんだ。
ただ、笑っていて欲しいだけなのに。
***
部室に戻れば、話はほとんど冬海の話題。
みんな清々しい顔をしていた。
そういえば、何か引っかかることがあるな。
『あー!!!!』
突然大声を出した僕に染岡は眉間に皺を寄せて言った。
「どうしたんだよ、時雨」
『た、確か、大会規約に…目金っ』
「あぁ、これですね」
大会規役書を持った目金に問う。
目金が規役書を読んだ。
「フットボールフロンティア規約書によると…
監督不在のチームは出場を認めないとあります」
『やっぱり…』
恐らく夏未ちゃんは知らないで、冬海をクビにしてしまったんだろう。
夏未ちゃんからは監督を探せとの指示が出た。
『夏未ちゃん…知らなかったんだ』
ぼそっと呟くと横にいた修也がこっちを向いた。
「そうだろうな」
『監督かー』
修也と目が合った。でも、すぐに逸らされてしまった。
あれ…なんで?
明日から、もう一波乱ありそうだな。
(目が合っただけでドキドキする…俺は無事に試合をやれるんだろうか、俺は)
それが少々、気がかりだった。
…鬼道が来ているんじゃないかって。
何より、春奈が土門を追いかけてしまった。
これはいよいよヤバいかもしれないって思ったから、僕も追いかけた。
『春奈、どこ行くの?』
「あ、時雨さん。今、土門さんを追いかけてるんです」
『…付いてくよ、僕も気になるから』
「ありがとうございます」
にこにこ笑う春奈。
きっと、この後…顔を歪めてしまうんじゃないかって。
僕ら2人が行くと、そこには鬼道がいた。
春奈は驚いて、駆け寄った。
「お兄ちゃん」
「…っ!?」
問いただす春菜に鬼道は冷たく言い放って去っていった。
『春奈…』
「だ、大丈夫ですよ。でも、どうしてお兄ちゃんが…」
『……』
その後、肩を落とした春菜と一緒に練習に戻った。
次の日、僕は階段で携帯とにらめっこしている飛鳥ちゃんを見つけた。
「すみません、鬼道さん」
そう言いながら何かボタン押した。
『あ、すか…ちゃん?』
「時雨さん!!」
『だから、さん付けやめてってば』
「あ、あぁ…悪ぃ悪ぃ」
苦笑する飛鳥ちゃんに僕は首を傾げた。
『何、やってたの?』
「…たった今、鬼道さんの番号消した」
『え!?じゃ、じゃあ…』
「俺も雷門の一員として、サッカーやろうと思って」
『あ、すかっ』
僕は飛鳥ちゃんに抱きついた。
一瞬、戸惑いながらも優しく抱きとめてくれた。
『今度はちゃんと、友達になろうね…』
「お互いに上下関係じゃなくってこと?」
『うん』
「そうね、改めて宜しく。時雨」
『僕の方こそ、よろしくね。飛鳥』
飛鳥はスパイを辞めて、鬼道を裏切って…雷門に来てくれた。
「これで、いいんだ」
そう呟いて、飛鳥はすがるように僕を抱きしめた。
どこか、孤独だったのかもしれないと僕は思った。
放課後、飛鳥は生き生きと練習に打ち込んでいた。
代わりに春奈は少し元気がなかったけど。
そんな中、練習に現れた冬海に夏未ちゃんがお願いをする。
“遠征用のバスを動かして欲しいとのこと”だった。
慌てふためく冬海と顔の強張る飛鳥。
2人の様子からわかるのは、恐らくバスに何か仕掛けがあるってこと。
みんながガレージに集まり、バスの試運転を行う。
なかなかバスを出さない冬海に夏未ちゃんは畳み掛けた。
一枚の、犯罪を告発する手紙を用いて…
反抗を認め、開き直った冬海がバスから降りる。
「あなた方が決勝戦に出ると困る方がいるんですよ。
その人の為に私はやったんだ」
そこで修也の怒号が走り、僕の腕が震えだす。
「帝国の学園長か!!」
図星だったらしく、冬海は肩を震わせた。
「帝国のためなら生徒がどうなったっていいと思ってるのか」
「君たちは知らないんだ、どんなに恐ろしいかを。
君なら、学園長の息子の影山時雨君ならご存知でしょう?」
『っ!?』
まさか、自分に火の粉が飛んでくるなんて思っていなかった。
冬海はにたにた笑いながら続けた。
「一年の一学期まで、帝国学園サッカー部で“女帝”と呼ばれていた君なら、ね」
『……』
「…時雨?」
修也の声を聞いても身体の震えが止まらない。
手だけじゃなく、全身が震え始める。
僕の中で何かが弾けた。
今まで閉じていた、心の闇が身体を支配する。
『黙れっ!!「俺」の何がわかるって言うんだ!!?』
「時雨っ」
修也が今にも食ってかかりそうな僕を制止する。
ぐいっと腕を引っ張って、修也の腕の中に収められてしまった。
あったかい…だんだん心が落ち着いてくる。
「貴方のような教師は学園を去りなさい。
これは理事長の言葉と思ってもらって結構です」
夏未ちゃんがびしっと言い放つ。
冬海はせいせいしたとでも言うようにあっさりとそれを受け入れた。
波乱を生む、一言を残して。
「しかし、この雷門中に潜り込んだスパイが私だけとは思わないことだ…ねぇ、土門君」
「「「!?」」」
みんなの視線が一気に飛鳥に集中する。
冬海は嫌な高笑いをしながら、その場を去っていく。
みんなが飛鳥を疑い、非難する。
飛鳥が悪いわけじゃないのに…仲間なのに。
『待って、飛鳥を責めちゃダメだ!!』
「時雨の言う通りだ、みんな。
今まで一緒にサッカーやってたじゃないか。
その仲間を信じないのか?俺は信じる。な、土門」
「……」
飛鳥はばつの悪い顔をして、円堂を見た。
「円堂、冬海の言う通りだよ」
「悪ぃ」と一言言って、飛鳥は身を翻し駆け出した。
円堂は呼び戻すが、もう聞こえる距離にはいないだろう。
夏未ちゃんの持っていた手紙は飛鳥が書いたものだ。
『飛鳥…』
飛鳥が消えた方を見ていると修也に怒られた。
「人の心配してる場合か、お前は!!」
そうだ、修也がいなかったら僕は…
僕は総帥の造った“女帝”に戻ってしまうところだった。
『…修也、ごめん。ありがと』
そう言って、僕は修也の肩に顔を埋めた。
一拍置いて、落ち着いた僕は飛鳥を追う前にみんなに自分のことを話した。
話の節々で倒れそうになることもあったけど、修也が支えてくれた。
みんなは非難一つしないで聞いてくれた。
『…聞いてくれて、ありがとう』
風丸君が伏せ目がちに言った。
「帝国で冷たい人形みたいなお前に普通に接してくれたのは土門だったんだな」
『うん、今でも飛鳥は友達だよ。だから…許してあげてね、飛鳥を』
そう言うと、みんなは優しく笑いながら頷いてくれた。
「じゃあ、行くか!!土門のとこに」
「今頃一人で後悔してるかもしれないし」
「ほら、行くぞ」
円堂、秋ちゃん、修也が身を翻す。
夏未ちゃんには背中をどんっと押された。
「早くしなさい、行くわよ」
『うん!!』
先に行く秋ちゃんを追いかけて、僕と円堂は河川敷まで走った。
河川敷には秋ちゃんと飛鳥が座っていた。
「土門!!」『飛鳥!!』
円堂が飛鳥向かってボールを蹴った。
飛鳥は慌てて、ボールを取る。
振り返った、飛鳥に僕と円堂は言った。
「『サッカーやろう(ぜ)!!』」
きょとんとしている飛鳥。
僕はさっさと、グラウンドに入る。
「ほら、早く」
『遅いよー、飛鳥ー』
そう言うと顔を綻ばせて、返事をした。
僕らは小学生に混じって一緒にサッカーをした。
飛鳥がシュートするなんて、なんだか久しぶりだな。
『飛鳥、何やってんだよー』
「しっかりしろ、土門」
楽しそうにサッカーをやってる飛鳥。
やっぱり、この方がいいよ。
***
俺は雷門夏未と、円堂たちのサッカーをみていた。
土門のことを気付いていたんだろうと問われた。
「円堂も気付いてたさ。土門のサッカーへの熱い気持ちをね」
そう言ってあいつらを見ていたら、今度はとんでもない質問が投げかけられた。
「時雨君のこと、好きなの?」
「…は?」
「相当、大切にしているみたいね…彼を。
さっきもまるでお姫様と騎士のようだったわ」
雷門夏未はくすくすと笑った。
…そう言えば、さっき思いっきり抱きしめた。
思い出して、顔が赤くなった。
「泣かせる真似だけはしないでしょうだいね」
まったく、俺は何をやってるんだ。
ただ、笑っていて欲しいだけなのに。
***
部室に戻れば、話はほとんど冬海の話題。
みんな清々しい顔をしていた。
そういえば、何か引っかかることがあるな。
『あー!!!!』
突然大声を出した僕に染岡は眉間に皺を寄せて言った。
「どうしたんだよ、時雨」
『た、確か、大会規約に…目金っ』
「あぁ、これですね」
大会規役書を持った目金に問う。
目金が規役書を読んだ。
「フットボールフロンティア規約書によると…
監督不在のチームは出場を認めないとあります」
『やっぱり…』
恐らく夏未ちゃんは知らないで、冬海をクビにしてしまったんだろう。
夏未ちゃんからは監督を探せとの指示が出た。
『夏未ちゃん…知らなかったんだ』
ぼそっと呟くと横にいた修也がこっちを向いた。
「そうだろうな」
『監督かー』
修也と目が合った。でも、すぐに逸らされてしまった。
あれ…なんで?
明日から、もう一波乱ありそうだな。
(目が合っただけでドキドキする…俺は無事に試合をやれるんだろうか、俺は)