これが例え夢だとしても






護廷十三隊十一番隊隊長、更木剣八。


以前、一護と死闘を行った戦闘狂の死神。



あまりに凄まじく、―――――一歩間違えれば死んでしまう闘いを剣八とした一護は、以来、剣八の声、顔、闘いがフラッシュバックするのだ。


「…!」


一護はこちらを見てにぃと笑うあごけつ男にぞっと背筋を冷やす。


けつあご男のあまりに剣八と似すぎるその声に、ガタガタと身体を震わす。



「どうした?震えちまって。お前、強ぇんじゃねぇのかよ?」




ギギギとハサミを背負いながら笑うけつあご男と剣を携え笑う剣八の姿が折り重なった――――――――。




「「うぉらぁ!!!!抜け駆け禁止ぃぃ!!!!」」


ドシャァァ!



「ぐっぽぉぉ!!!!」












変な髪型の男とタイツの男のドロップキックがけつあご男の顔に決まった。



「何すんだ!!てめぇら!!!!」



「っるせ!ふざけんな!一護は俺と中華街回るんだよ!そんで一緒に写真撮りまくって一生の思い出をたくさん作るんだ!」


「っざけるな!一護は俺が呼び出したんじゃん!だから俺と芸術作品をいっぱい作るじゃん!」



「黙れ!俺はコイツと戦う!今決めた!邪魔はさせんぞ!!」



ゴォォォ!



三人のオーラが激しくぶつかり、バチバチと火花を散らす。


「……………っ」



見知らぬ男三人が自分の事を取り合う光景にダラダラと汗が出まくる一護。



―――…何だよ、コレッッ…!?夢…?そうだ!夢に決まっている……!!!



うんうんと勝手に頷き自分を納得させる一護。そうだ夢だ、と納得させ目を閉じようと瞼を震わせた時―――――――カシャンと微かな金属音が擦れる音がした。



「お前ら……………」



さっきまで倒れていた金属の鎧が眩しい緑色髪の男だ。頬から血が垂れて目が据わっている。



「……………」



しかし、気のせいなのだろうか。この男の声どこかで―――――――と、眉根を寄せた一護が何かを思い出そうとしていた時、緑色髪の男の碧眼がカァッッ!と見開かれた。




「死にさらせぇぇえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ブシュァァァ!





緑色髪の男が出した大量の紙幣が、津波のように一護に襲った。



「ぎゃあああああああああああああああああああああああ………………って、あ?」




ハァハァとしながら、身体を起こしてあたりを見渡す一護。しかし、どこから見てもここは一護の部屋で一護のベッドの上だ。


「…………………………………ゆ、夢か」



はぁぁぁと一護が安堵の息を漏らしながら、頭を掻いた。


そうだ。夢に決まってるじゃいか。


ふーと寝汗だらけのパジャマ姿でぼんっとベッドにダイブする。


「ん?」



カサッ、と背中で紙の音がして、一護は再び起き上がり、くるりと背中の方が振り向く。



すると、そこには紙幣が一枚。手に取って顔を近づける


「…!」


固まる一護。何故なら、その紙幣は一護が普段使う紙幣ではなく―――――夢の中で緑色髪の男が出した――――――





「いや…………夢だ。夢なんだ」


くしゃくしゃと紙幣を丸めて、ゴミ箱に入れると、水を飲む為、下の階へと降りて行った。



―――――例え夢だとしてもあんな世界二度とごめんだ



水道の水を飲みながらそう思う一護であった。





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