とぼける父親の右腕と不器用な父親

頼むから焦がすのはやめてくれ!!



   ⚪とぼける父親の右腕と不器用な父親⚪



今日もキングは外でご飯を食べようと空を飛ぶが、その日も##RUBY#運悪く#・・・##ご飯を落としてしまう。

翌日、ご飯を落とした場所へ向かうと石の上に自分が落としたご飯の包みが置いてあった。

風呂敷を外すと、中身は残っていた。


「(またか・・・)」


落とし初めの頃は空っぽになっていたのに、この数日、ご飯の中身がまったく減っていない。それはつまり手をまったくつけてない事を示している。


「(最後に食べたのはいつだ・・?)」


キングはカイドウがいない隙を狙ってヤマトにこっそりご飯を届けていた。

初めの頃はカイドウに問いただされたが、自分はご飯を落としたととぼけた。

カイドウは、キングの言葉を信じたのかそういう事にするつもりなのかわからないがキングに何も言わず何もせずにそのままにしている。

そんなカイドウにキングは感謝したり申し訳ないと思いながらもご飯を届けていた。

しかし・・・


「(ヤマトお嬢がお腹を空かせているのは確かだ。なのに何故・・?意地を張ってる?どちらにせよこのままでは本当に餓死になってしまう・・・さて、どうしたもんか・・・)」


その場で考えるキングだが、すぐに思いつき、ひとまず屋敷へ戻る事に。




次の日―――

ご飯を包んだ風呂敷を2つ持ったキングはプテラノドンになり、空を飛ぶ。

空からヤマトを探し、島の端辺りに気配を感じてそちらへ向かう。


ヤマトは木に背中を向けて、ぐったり横たわっていた。

キングは思わず急降下しかけたがグッと留まり、いつものようにご飯を1つヤマトの近くに##RUBY#運悪く#・・・##落とした。

そして少し離れた場所に降り立ち、もう1つのご飯を持ってヤマトに近付いていく。

その足音にヤマトは顔を上げ、キングがこちらに近付いてるのに気付く。

すると這いずってキングから離れようとする。

キングが落としてしまったご飯を置いて。


「ヤマトお嬢、ご飯を置いてどちらに?」

「キ・・キング・・・・・いらない・・・」

ぐぅ~〜

「お腹空いてるだろ。何故そのメシを食べない?」

「だって・・・そしたらキング、お父さんに殺されちゃう・・・」

「? 俺が、カイドウさんに?」

「ぼくにご飯をとどけてくれた人は、みんな、お父さんに殺されちゃうんだ・・・。だから、キングも・・・」


ヤマトが何故この数日自分が落としたご飯を食べなかったのか、キングはようやく理解した。


「(俺の身を案じて、手を付けなかったのか・・・。まったく。)
俺がいつ、ヤマトお嬢にご飯を届けた?」

「・・ぇ?だって、今も・・・」

「そのご飯を俺が渡したところを、その目で見たのか?俺のご飯は今、俺の手にちゃんとある」

「・・・!」

「##RUBY#運悪く#・・・##ご飯を落としてしまって諦めた事はあったが、ヤマトお嬢に渡した覚えはない」

「・・・・・・」


キングは近くの岩に腰を掛け、持っていた包みを開けてご飯を(口だけをプテラノドンに変化して)食べ始めた。


「お嬢、食べないなら俺が食うぞ」

「っ・・!だめーーー!!」


キングが手を伸ばすと、ヤマトはその前に引ったくり、風呂敷を広げて包みを開け、ご飯を手に取りがむしゃらに食べだした。

涙を流しながらがむしゃらに食べたせいで喉に突っかかってしまう事があったが、キングが持ってきてたお茶を飲んだ事で事なきを得た。


「・・・キン゛グ」

「ん?」

「ぉどうざん゛に、ごろざれ゛でも、知ら゛ないよ・・・っ」

「・・・だから、俺はお嬢にご飯を渡してないから、カイドウさんに殺されたりしません」



全てを平らげたヤマトは手を合わせた。


「ごちそうさまでしたっ」

「・・・ヤマトお嬢、いい加減「おでん」を名乗るのをやめたらどうだ?」

「・・・やだっ」

「そうやって意地を張るからカイドウさんはご飯を与えないんだ」

「それでもっ!ぼくはおでんだ!お父さんが認めてくれなくてもかまわない!!」


ヤマトの決意にキングは心の中でため息を吐いた。




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