ぬいぐるみと一緒なら
一方その頃、ヤマトを片腕で抱きかかえて屋敷内を歩くカイドウ。
さっきよりいくらかはマシだがそれでも泣いてるヤマトにカイドウは何故泣いてるのかわからない。
とりあえずクイーンにお仕置きは確定のようだ。
「ヤマト、何をそんなに泣いてるんだ?」
「だって、だって、ぅぅ・・・」
「泣いてばかりじゃわからねえだろ。父上に話してみろ」
「・・・おとーさん、いっつもやまとをおいて、でかけて、さ、さびしかったから、おとーさんのぬいぐるみをつくったの」
「・・・・・」
「けど、くいーんに、ううぅ・・・!」
「そうかそうか。寂しい思いさせちまって悪かったな」
ヤマトお手製の自分似のぬいぐるみをクイーンによって踏み潰された事に泣いてるんだと、ヤマトが自分と一緒にいられなくてどれだけ寂しかったのか気付いたカイドウ。
一般人よりも大きい指でヤマトの涙を拭う。
「なら、暫くは父上と一緒にいような」
「Σ! ほんとう!?ごはんもおふろもいっしょ!?」
「あぁ」
「いっしょにねてくれる!?」
「もちろんだ」
「やったーー!!」
ようやく笑顔を見せてくれた愛娘にカイドウも自然と笑みが溢れた。
「おとーさんだーいすき!」
「ウォロロロロ!可愛い事言ってくれるじゃねーか!」
数時間後。カイドウの自室にはカイドウ本人と、膝にはヤマトがちょこんと座り、カイドウの隣に腕を組んでるキングと、目の前で冷や汗ダラダラの心臓バクバクで顔面蒼白のクイーンがいた。
その手には箱を持ってる。
「クイーン、お前・・」
「お嬢ーーー!!すいませんっしたーーーー!!!」
カイドウが言いかけたところ、先手必勝とばかりにクイーンは土下座をした。
そして箱を前に出し中身を取り出した。
ソレは獣人型のちょっぴり可愛いカイドウと可愛らしいヤマトのぬいぐるみ。
「急いで作りました!!真心と謝罪を込めて作りましたっ!!どうか、どうかお納めください!!!」
キングに言われた通り、カイドウのぬいぐるみとヤマトのぬいぐるみを急いで作りそれを2人に献上した。
カイドウのぬいぐるみはヤマトに。ヤマトのぬいぐるみはカイドウに。
「(コイツ、図体に似合わず器用だな)」
「(クイーンだからブサイクなぬいぐるみを作ると思っていたのに、チッ)」
あまりにも完成度の高いぬいぐるみを作ったクイーンにカイドウはちょっぴり引き、キングは期待外れに不満げだ。
ヤマトは父親の膝からぴょんっと飛び降り、クイーンに近付く。
クイーンの手からカイドウのぬいぐるみを受け取り、目をすっごくきらきら輝かせて掲げた。
「ぅわーーー!おとーさんだーーー!かっこよくてかわいいーー!」
ぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめるヤマト。その顔はニコニコと笑顔でとてもご満悦。
「くいーんありがとー!」
「よ、よかった・・・!!気に入ってくれてよかった・・・!! (感涙)」
「・・・・・で、そのヤマトのぬいぐるみは俺にってか?」
「は、はいっ!どうぞ!!」
ヤマトのぬいぐるみをカイドウに差し出す。
カイドウは暫くジッと見つめてから手に取った。
「ふむ・・・悪くねぇな。ヤマトを泣かせた件、今回は不問にしてやる」
「あ、ありがとうございます!!!
(助かった・・!!本当に助かった!!ありがとうございますカイドウさん!!キング、今回ばかりはテメェに感謝するぜ!!)」
「そういやヤマトが作った俺のぬいぐるみはどうした?」
「え?アレっすか?ボロボロになったんで捨てましたけど」
「何?」
クイーンが答えた途端部屋の温度がいくらか下がった。
そしてカイドウの機嫌が悪くなったのをクイーンもキングも察した。
察したから、クイーンは再び自分の命の危険を感じ取った。
「すぐに持って来ぉおい!!!!」
「はいぃぃぃぃ!!!!」
カイドウの怒声と覇気にクイーンは自分でも驚くぐらいの猛ダッシュで部屋を出た。
暫くの間、カイドウは自室や遠征に行く時はヤマトのぬいぐるみと直された自分似のぬいぐるみを持ち、置くようになった。
終わり