先生の友人は天下の大泥棒
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裏山の、周りが木々に生い茂る中で、鋭く睨む利吉と余裕の態度を見せる石川が距離を置いて対峙する。
離れた場所では心配な顔をする半助と二人の様子を見守る伝蔵が立っている。
「で?どうやって勝敗をつける?」
「先に膝を着いた方が負けでどうでしょう」
「いいぜ」
「私が勝ちましたら、学園の皆さんに騒動を起こした事への謝罪をしてくださいっ」
「フッ、いいぜ。じゃあ俺が勝ったら・・・」
石川は少し考える素振りを見せると小さくニヤッと笑い、親指を半助に指して言い放つ。
「土井を貰うぞ」
「「「Σなっ/ハアア/っ!?」」」
石川の申し出に利吉と半助は思わず声が出てしまった。
伝蔵も驚き、目を見開く。
予想外の石川の申し出に利吉が一瞬たじろいでしまう。
それを見抜いた石川が利吉を煽る。
「どうした?土井が取られると思ったら怖気づいたか?別にやめてもいいぞ。若気の至りって事で流してやるさ」
「〜〜〜っ!誰が!!」
カチン、とキタ利吉は懐から苦無を取り出すと一気に駆け出し振るう。
石川は懐から煙管を取り出し苦無を受け止めた。
石川の対応をわかっていた利吉はもう驚きはせず、苦無を何度も振るう。
石川は利吉から距離を取ると木と木の間を飛び移る。
利吉はすぐに石川の後を追い、鈎縄で捕まえようとするもヒラリと躱される。
「おいどうした?勝負をふっかけてきたわりにはかすり傷一つもつけられてないぞ」
「うるさい!!」
なおも煽ってくる石川に利吉はイライラしっぱなし。
すると石川が利吉の方に振り向くと利吉目掛けて何か投げてきた。
「Σ! (手裏剣か!)」
利吉は苦無で弾こうと振るう。が、石川が投げたのは手裏剣でもなければ忍器でもない。
利吉が苦無で振るうとソレは苦無に当たり、白い粉が舞い利吉の視界を奪い咽させた。
「ゲホッ!ゲホッ! (コレは・・・チョークケース!?)」
利吉が咽てる間に石川は一瞬で利吉に近付き、ガラ空きの利吉のお腹を殴った。
「―――!!?ガハッ・・・」
「言っただろ。基本ばっかとらわれていると痛い目を見ると。まぁ俺は手癖が悪いから
膝から崩れ落ちる利吉を石川は掴み、地面に降り立つと利吉を離した。
利吉は膝を着き、倒れた。
「利吉君/利吉!!」
「じゃあ土井は貰うぜ」
「おい石川!」
石川は利吉から離れ土井の腕を掴み強引にその場から連れ去ろうとする。
「待てっ」
「! ヒュッ、ヒュッ、シュッ」
「!」
土井は伝蔵に矢羽音を使い、石川に引っ張られるままその場を去っていった。
「・・・乱太郎、きり丸、しんべヱ、出てきなさい」
伝蔵は半助の後ろ姿を見つめた後草むらに向かって声をかけた。
草むらから不安な顔を浮かべてる乱太郎ときり丸としんべヱが顔を出す。
「山田先生・・・」
「利吉さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、意識はある」
「山田先生、土井先生連れてかれちゃったけど、」
「戻ってきますよね・・?」
不安の表情が消えず、伝蔵と利吉を交互に見ながら尋ねる三人。
「あぁ。土井先生が矢羽音で「必ず戻りますから心配しないでください」っと伝えてきた。だから心配するな。土井先生を信じろ」
「「「はぃ・・・」」」
「っ、父、上・・・」
「利吉!」
「「「利吉さん!」」」
利吉は上体を起こし、申し訳なさそうに謝罪する。
「申し訳ありません・・・」
「まったく、まんまと石川の罠にはまりおって」
「罠・・?」
「まず石川は‘怒車の術’を使ってわざとお前を怒らせたんだ。お前が頭に血が上ったところを見計らって予め盗ったチョークケースを投げ、一瞬の隙をつかせてお前を一発で仕留めた。
考えてもみてみろ。たとえどんなマヌケな泥棒でもチョークケースなんか盗むか?」
「では、石川は・・!」
「お前が自分から勝負をふっかけるような言動をして、勝負に勝ち、堂々と土井先生を我々から盗んでいったんだっ」
「―――!!」
すべて仕組まれていた事に利吉は愕然し、項垂れてしまう。
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