桜並木とウソ



「? どうしたボウヤ?」

「え!?いや、だからその、・・・ありがとう」


赤井さんの顔から逸らしてお礼を言った。

そしたらなんか笑われたような気がした。

そしてオレをギュッと抱き締めて腰を下ろした。


「花見をしよう。弁当はないが、お菓子とジュースは持ってきた。食べるか?」

「あ、うん。・・・あの、降ろしてくれる?」

「それはダメだ」

「・・・なんで?」

「俺がこうしたいから」

「・・・・・・」


これ以上言っても無理だろうと悟ったオレは諦めた。

でも、こんな綺麗な桜の下で花見をするのも・・悪くない、か。

ん?何か忘れているような・・・あっ!そうだ!


「ねぇ赤井さん!!本は?推理小説の」

「ん?あぁあの本は明日届くんだ。だからここにはない (笑)」

「Σええ!?ひどいよ、ウソつくなんて!」

「そんなに怒る事は無いだろ?今日はアレなんだから」

「アレ・・?」


今日が何の日か思い出す。

すると「あっ」と声を漏らした。


「4月1日。エイプリルフール、だろ」


・・・・・ああぁああぁぁあ~~~~・・・

やられた。

がっくりと項垂れるオレを赤井さんが小さく笑って頭を撫でてきた。


「ガッカリしなくても明日事務所に持ってきてやるから。だから今は楽しもう」


ほら、と差し出されたお菓子にみっともないくらいバクバクと食べてやった。

騙されたオレが悪いけど、ちょっとムカッてきたけど、桜並木を見たらそんな感情は消えた。



取り敢えず抱き締めてる手をベシって叩いた。


「明日、本持ってきてよ」

「もちろん」

「それと、」

「ん?」

「・・・来年も、ここに連れてきてね」


・・・表情は分からないけど、多分赤井さん眼を見開いてると思う。

するとまたギュッと抱き締められ、顔を俺の頭に押し付けてきた。


「あぁ。もちろんだ」


穏やかに笑う赤井さんにつられてオレも笑った。




終わり
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