逃ゲテ。見ツケテ。
「・・実は体調を崩してしまったそうで、道で踞ってたのを運良く通り掛かった僕が見つけたんです」
「そうなのか」
「すみませんが、コナン君を毛利先生の所に送っていってもいいですか?」
「ああ、構わんよ。コナン君、お大事にね」
表に回り、探偵事務所へ通じる階段を昇る。
「・・ありがとう、安室さん」
「けどいいのかい?あの男の事、黙ってて?」
「うん・・・心配掛けたくないから・・・。だからおじさんにも蘭姉ちゃんにも黙ってて。お願い」
本当は小五郎にも蘭にも報せておくべきだが、コナンの懇願する瞳に折れてしまった。
それに、もし自分がコナンの立場なら自分もそうしただろうと思い至った。
「・・・わかった。けど、もし何かあったら僕にはちゃんと言う事。わかったかい?」
「・・うん」
コナンを小五郎に託し、気になりつつも安室はポアロに戻った。
見慣れない廊下を、誰かに手を引っ張られながら進んで行く。
ある部屋の前に着くとドアが開き、中に入れられる。
「ここが、僕と ちゃんの部屋だよ。
これからはずっとだよ。
ねぇ、 ちゃん」
見上げるとニヤァと笑った男の顔が――――
「Σ―――ッ!!」
勢いよく起き上がり、コナンは目を見開いたまま深呼吸を繰り返す。
「・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・。
(何だ?今の夢?何であの男が・・・!?)」
ふと自分の手を見る。
震えている事に気付く。
手だけでなく、全身が震えている事に、自分は今の夢に恐怖を感じているのだという事に気付く。
「(何でだ?おかしいだろ。あんな夢で怖がるだなんて・・・)」
頭を振り、無理矢理忘れようとする。
もう一度寝ようとするが眠れず、結局朝を迎えてしまった。
朝食を取って身支度を整え、コナンは階段を降りていく。
ポアロの前を通ると扉が開いた。
大袈裟なほど驚くが、その人物が誰なのかわかった途端肩の力を抜いた。
「コナン君」
「安室さん・・・おはよう」
「おはよう。コナン君、顔色悪いけどどうしたんだい?」
「な、なんでもないよ・・・」
「・・・コナン君、昨日僕と約束した事、覚えてるよね?」
「ぅ、うん・・」
「何があったんだい?」
「・・・・嫌な夢を、見ちゃって・・・それで眠れなくて・・・」
「どんな夢なんだい?」
「・・・・・昨日の男の部屋に連れて来られた夢・・・」
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